6月も後半となると気温は上昇し日照時間は長い。時計は夕方の7時半を回りレストランでの夕食を済ませて一人でハンドルを握って宿泊しているホテルに戻る途中に道を間違える。辺りはまだ明るく空は澄んで町は眩しく輝いている様に感じた。先週から仕事でマサチューセッツ州の学問の街ボストンに滞在しています。宿泊は街の渋滞を避けた街の北部にある町です。道に多少迷ったからと言って時間に追われている訳ではないので前方を走る車の群れに誘導されて走っていると SALEM という街の標識を目にした。暫く住宅街の景色が続いたが、やがて繁華街が展開してきた。繁華街は観光客の風貌をした人々が歩いている。多くの商店街のショーウインドウにはホウキにまたがった魔女 (Witch)の絵を目にする。Salem,ここはアメリカで最も有名な魔女の町である。好奇心が先立ち夕食後の散策と言う事で車を停めて一人で町の散歩を始めた。仕事をしている人々なのであろうか?奇妙な黒魔術師の様な格好をした男女に時々すれ違う。ここは一年中ハローウィン的な空気に包まれている様だ。他にも水晶占い、霊媒師、降霊会、魔術師、博物館、ナイトツアー等の紹介やイベント案内が存在している。実にオカルト集結、大集合である。矢印に従い街の中央のメインストリーを外れて古代樹メタセコイヤが青々と茂る公園を抜けると雰囲気は変貌した。そこにある光景は静かな墓であった。その墓の入り口にある解説によると1692年にこの町で魔女狩り裁判が行われ19人の女性が吊首執行された事実があり、その19人の墓(メモリアル)が墓に隣接している。それは当時の大衆の偏見的な圧力が時勢を縛りあげた事実。現在の視点ではアメリカにおける歴史の汚点として教訓的に理解され、19人の死は人権と言う価値観の尊さを後代に伝える為の象徴となっている。Salemの魔女の正体(招待)は魔女と言う存在を捉える時にオカルト的やハロウィーンの乗りで魔女を捕らえるのではなくて、その奥にある本質は他人から魔女と呼ばれて殺されてきた女性達の生きた声であり、大衆は理性を失い間違った判断をするものだという歴史の教訓を町を揚げて町を訪れる人々に伝えているのであった。