今再び 茨木のりこ

2010-10-12 18:00:47 | その他
自分の感受性くらい


ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ



自分の感受性くらい 茨木のり子 【いばらぎ のりこ】

大正15年6月12日~平成18年2月19日。新鮮ではつらつとした感受性を基底に、高度な批評精神と人間信頼に裏打ちされたヒューマニズムあふれる詩を作った。


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代表詩集

「対話」 昭和30年
「見えない配達夫」 昭和33年
「自分の感受性くらい」 昭和52年
「倚りかからず」 平成11年



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