工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

下田信夫さんの作品集・つづき

2023年09月08日 | 飛行機・飛行機の模型
 味わいのある、それでいて対象物を細密に描き分けるイラストが人気の下田信夫さんは、亡くなった後も作品集が各種出版されております。大日本絵画からは「航空縮尺イラストグラフィティ」と題した作品集が刊行されていますが、この夏に4冊目の「エトセトラ編 2」が発売されました。

 本書の前半では成田にあります航空科学博物館が収蔵するライト兄弟からエアバスA320に至る約100年の航空史を飾った機体のイラストをすべて紹介しています。航空黎明期の機体はともすれば興味の対象から外れてしまうのですが、改めてイラストで見て、それぞれの機体の特徴を見つけたりしています。これらのイラスト、常設展示らしいので、成田は少々遠いですが行ってみたいですね。
 本書の私のお目当ては雑誌「レプリカ」の表紙イラストです。もともとこの雑誌、1985年にTACエディションという版元から発行されており、モデルアートのライターだった野中寿雄さんが編集されていたかと記憶しています。1986年から1992年の休刊までの39冊を下田信夫さんが手がけられたそうです。正直、当時は同誌の熱心な読者では無かったものですから、今回作品を拝見して、こういうのもあったのか、という新たな発見もありました。同誌は飛行機の記事だけでなく、車、艦艇、ホワイトメタルのヒストリック系フィギュア、さらには粘土か何かを型に押し当てて作る紅鮭に至るまで、幅広い模型を対象にしていました。
 表紙についても飛行機だけでなく自動車もあればAFVもあり、またヒストリックということでギリシャ・ローマの兵士から戦国時代の日本、ナポレオン時代の騎兵に至る古今東西の騎兵や兵士のイラスト、そしてブームを反映してかF1マシンのものもありました。イラストで再現された1990年フランスGP、レイトンハウスのマシンがフェラーリのプロストを従えて走るシーンなどは新鮮な印象を受けます。飛行機の印象の強い「Nobさん」ですが、F1マシン、スポーツカーと自動車についても特徴を捉えていて、改めてその才能には敬意をいだいております。
 なお、本書では一部のモノクロ画について、遺族の承諾のもと、イラストレーターの和田隆良氏がコンピューター上で「着彩」したイラストも掲載され、こちらももともと色がついたイラストと変わらない出来栄えで、本書に文字通り大きな彩りを添えています。
 航空史にまつわる記事も面白く、見て、読んで面白いという文章を書ける人がうらやましい限りです。私などはどちらも中途半端ですが・・・。 
 また、下田信夫さんは国産の航空機がお気に入りだったのか、本書でも戦後も含めて国産の機体が多く登場します。前述の成田の展示にはYS11、MU-2、FA200、C-1といった戦後の国産機が富士山をバックに飛ぶ絵も遺されています。また、T-1から始まった戦後国産ジェット機の解説などもあります。私が下田信夫さんのイラストが好きなのは、私自身が国産機が好きというのもあるかと思います。
 本書掲載作品も、他ではもう見られない、絶版になったものもありますので、あの頃に戻りたい、新鮮な感動として受け止めたい、と願う飛行機好きの方にお勧めします。私も寝る前に眺めながら、大空に思いをはせております。



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