前回このテーマでお届けしてから1か月以上経ってしまいました。埴輪見たり、基地に(二つも)行ったり、本業も多忙だったりで相変わらずなのですが、本日もお付き合いください。
ジオラマのディティールについてはこれでひとまず最終回です。
イタリア国旗とEU旗の建物ですが、その横にトラクが見えます。「EURO TRANS」というありそうな名前の運送業者です。これもカーコレクションのキャンターを塗り替えたものです。手前側にカトーのパルサーを塗り替えたパトカーと、緑色のワーゲンゴルフ(こちらはWiking 1/160)がいます。
政府機関とおぼしき建物から人出てきました。分かりづらいですがパトカーの奥に二人立っています。こちらは武装したお巡りさんで、もともとは100均で売っていた兵隊さんの1/150人形を塗装したものです。最近では特にそうですが、欧州でもテロ対策から警察官も重武装で防弾チョッキもつけて警備に当たっている姿をみかけます。パルサーのパトカーは国家警察の明るいブルー色です。実はこのパトカー、一部のモデラーさんから「カトーのパルサーを塗り替えたとは思えなかった。だまされた(笑)」とお褒めの言葉をいただきました。
さらに線路の方向に向かいますと
市バスが走っています。こちらは「ワールドバスコレ」のメルセデスシターロバス・シルバー塗装で、メーカーのデモ塗装でしょうか。前面の行先表示も「CITARO」となっていました。車体裾を赤く塗り、行先も自作デカールで作ってローマのバスに化けさせました。
右手前側ですが、青いメタリックの方はカトーのクラウンを塗り替えたもの、その奥は1台100円の「中華ミニカー」を塗り替え、行燈をつけたタクシーにしたものです。
中に運転手、乗客を入れています。実際にローマ市のバスの中にはこういった塗装のものがありました。行先は「C.MASSIMO」とありまして、「チルコ・マッシモ」行となっています(実際に終点となっているかは不明)。こちらは古代ローマの戦車競技場の遺跡で、今も公園のような形で残っています。
ジオラマ右側、教会のあるあたりに目を向けてみましょう。
教会の手前の原っぱです。
トミーテックの人形を塗り替えています。いろいろなチームのジャージを着ていることから、みんな思い思いに集まってプレーしている感じでしょうか。ローマとラツィオもいます(本当ならチームの成績はともかくお洒落な柄のヴェネツィアも再現したかった)。背後のネットはタケダモケイの「パンチフィルム」で、透明板に模様が印刷されたものです。1mmのプラ棒で支柱を作りました。芝生はタミヤのテクスチャーペイントを使っています。タケダモケイの製品はジオラマ内の人形でも随分と使っています。
教会の向こう側から三人の男たちが何やら話しています(ピンボケですみません)。
子分「親分、俺たちが言っていた教会、あんな立派でしたっけ。それに教会の横にあった杉の巨木のなくなって、グラウンドになっている」
親分「このあたりで教会ってあれしかないぞ。杉の根元に俺たちが隠した・・・あっ刑事さん!」
刑事「お前ら娑婆に出てきて早速悪だくみか?あの教会はやめておけ。セキュリティが厳重になっているからな」
親分「とんでもない。またくさい飯なんて食いたくないですよ、それにしても随分人が集まっているな」
刑事「お前らあの教会のこと知らないんだな。しょうがねえ、塀の中にいたときのことだものな」
教会です。黒塗りの車やら、高位聖職者やら、さらにはテレビ局の中継車とにぎやかです。こんな会話が聞こえてきます。
「本日は枢機卿猊下にお越しいただき、ありがとうございました。おかげさまでこの教会もきれいになり、ラファエロの絵画の修復も済みました。空き地もグラウンドとして整備できましたので、憩いの場となっております」
「教皇様にもお知らせしましょう。何より、杉の巨木の上に落雷があって、その根元から大金が出てきたとは、まさに天からの恵みとしか・・・」
「このすぐ近くの私共の銀行の金庫から盗まれた現金が、このような形で見つかったというのは、これ以上にない喜びでした。このお金を寄付させていただくことで我々も社会貢献が・・・」
教会の入り口中央には枢機卿がいます。横には修道士と修道女も立っています。枢機卿はプライザーのフランチェスコ派と思われる修道士を塗り替えて高位聖職者になっていただきました。フランチェスコ派の修道士はアッシジの聖フランチェスコにルーツを持ち、簡素な衣装が特徴です。教会入り口のラファエロの絵はネットから落としたものです。イタリアの教会、美術館などでは、建物の入り口にこういったバナーやターポリンの幕が掲示されたりしています。
枢機卿の向かって左隣はラツィオ貯蓄銀行の関係者や市役所か政府の文化担当でしょうか。銀行から盗まれたお金が近くの教会の木の下に埋めてあって。ある夜の雷で木に直撃、倒れた巨木をどかしていたら・・・というのは、昔観たフランス映画のオチから採りました。
車列も立派ですね。
先頭のカラビニエリ(憲兵警察)のパトカーですが、1台100円のいわゆる「中華ミニカー」を塗り替えたものです。
そのあとにあまり似ていませんが90年代に発売されていたトミックスのベンツ、さらにその後ろはカトーのセドリックです。枢機卿は随分と立派な車に乗っているようです。パトカーの前方の芝生のグラウンドのネットには黄色いフィアット500の看板があります。これは実際の彼の地の広告をネットから落としています。
トンネルの上にはテレビ中継車が停まっています。イタリアの公共放送「RAI」のロゴが入っています。この中継車、その昔出ていたバンダイの「ワーキングビークル」を塗り替え、RAIのロゴを自作デカールで貼り付けました。
ここまで12回に分けてジオラマの話を書いてまいりました。人形についてはもっと一人一人にストーリーを持たせ、この人はどういう理由でここに立っている、または歩いているのか、どこから来て、どこに行くのかなどを考えながら配置したかったのですが、何分時間がなく、やっつけ仕事になってしまった感があります。
また、緑が少なくなってしまったのも致し方ないところです。本来はローマも街路樹がたくさん植えてあるのですが、このジオラマで街路樹まで再現すると建物や自動車、人形などが見えなくなってしまうというジレンマに陥ってしまい、結局植えなかったという経緯があります。これが田園風景なら自分の好きなように木を植えることも可能ですが、都会の風景ですとこういう難しさもあります。
さらに言えばローマはもっと黒ずんだ(失礼)と言いますか、決してきれいな街ではありません。でも、あまりそういう部分を無理に再現するのも悪趣味だなと思いまして、きれい目な方に振らせていただきました。ジオラマをご覧になった他の作者さんからは、ローマというよりバルト三国とか、もっと北の国の風景がモデルではというコメントもありまして、なるほどなあ、というところです。
JAMに来場した私の模型仲間の一人は、さまざまな市販パーツを転用したり、時には食玩の軍用ワーゲンを塗り替えたりということで「アイデアの勝利だね」といったニュアンスの感想を述べていました。私自身もお金に糸目をつけないようなことはできませんので、いきおい市販品をなんとか自分の力量で他に転用したりといったことをしています。某バンドのCDの惹句ではありませんが「ジャンルを無視、アイデアを駆使」というところでしょうか。
またT-TRAKジオラマショーに出展した際には「神は細部に宿る」ことが好きな高校生たちが目いっぱい近づいて見てくれており、こちらもそのたびに説明させていただきました。この時にもアドバイスしたのですが、例えば1台100円のミニカーもただ置くだけではなく、色を塗り替えたり、最低でも灯火に色を差すくらいの一工夫でだいぶ変わりますよ、市販品でも手を加えるとオリジナルになります、といったことをお話ししました。また、お金をかけずに他の製品、キットから転用できるものや、模型屋さんの店先で何らかの理由で「アウトレット価格」となっているものもありますので、経費を抑えたいという(特に)学生モデラー諸氏におかれましては、アイデア次第でジオラマ、レイアウトにも活用できるものもあるのではと思います。強豪校に叶わない、と思っている学生モデラーさんには、まずはこういったアイデアの部分を磨いてみてはいかがでしょうか。自分が考えたアイデアだけならタダですよ。
さて、ミリタリーものはともかく、鉄道模型に関して自分が作るジオラマは、空想も含めて割ときれいな世界を切り取っているように思います。今回のジオラマのサイズのものとなりますと、学生時代につくったものがありますが、仕事を持ちながらここまで作っていくというのは、やはり苦労が伴いました、また、8月の数日のために間に合わせたような作りの箇所があり、早速ガタが出ています。少しレストアさせていただく予定です。
ひとまずローマ・マエストラーレ通りの記事は結びとしますが、次回は番外編として電車ネタを書いていきたいと思います。