「何故、彼は人類のいない地球に残されたのか―」。
結論を紐解けば、意外とSFの王道的な展開。スタイリッシュな映像、近未来的なメカニックの数々。世紀末的風貌のスラヴ、2001年宇宙の旅のモノリスを彷彿させるようなテットの存在…しかも単にSFものというだけでなく、クローンにまつわる問題――クローンはオリジナルの記憶や感情をどこまで引き継ぐのか、あるいはオリジナルに忠実なクローンを我々はオリジナルと同様に愛することができるのか、など興味深いテーマもある。
果たしてクローンはどこまでオリジナルであり続けられるのだろうか。
【予告編】
映画『オブリビオン』予告編
【ストーリー】
異星人との何十年にも渡る大戦争によってすっかり荒廃してしまった地球。残されたわずかなエネルギー資源を探し当てる重要ミッションを与えられたジャック・ハーパーは任務中に墜落中の宇宙船に遭遇。宇宙船に乗っていた謎めいた美女ヴィクトリアを救出する。(「ぴあ映画生活」より)
【レビュー】
この「オブリビアン」を見終わったとき、僕の中には1つの疑問が残った。それは主人公・ジャックのことでもその妻・ジュリアのことでもない。ヴィクトリアには果たして記憶があったのか、彼女の愛情は果たして作り物だったのか、ということだ。
人類と異星人スカヴの戦いから60年。地球は廃墟となり、放射能に汚染されていた。かろうじて人類は勝利を収めたものの、既に住み続けられる大地ではなく、他の惑星への移住が不可避となっていた。未だ残るスカヴの残党たちの攻撃を抑えつつ、人類のタイタンへの移住を進めるべく、ジャックは妻であるヴィクトリアと共に地球の監視を続ける。
しかしジャックには60年前の断片的な記憶と女性の面影が残っている。
大地に花が咲き始める。そのことをヴィクトリアに伝えたところ、ヴィクトリアは毒素を持っているかもしれないし規則に違反するとの理由からそのことを拒絶する。完璧なパートナー。しかしそこには何らかの溝がある。それは単にミッションを果たすことで、早く2人でタイタンに戻りたいとの想いだったのかも知れないし、地球にいることに何らかの不安を抱いていたからかもしれない。
やがてジャックの前に宇宙船が墜落する。そこに搭乗していたのは夢の中で見た女性・ジュリア・ルサコヴァだった。そしてこのジュリアこそ、異星人との戦争の前の世界でジャックの妻だったのだ。
ジュリアに対するヴィクトリアの態度は通常のものではないものがある。スカヴの信号によって導かれた謎の人物という警戒心はあっただろう。しかしそれ以上に、ジュリアの前でジャックとの絆を確認しようとしたり、必要以上にジュリアに対する警戒心や(自分たちにとって)危険をもたらすものと見なすような態度が見られるのだ。
それはジュリアの側にも見られる。ジュリアにとってもヴィクトリアへの態度は硬く何らかの警戒心が感じられる。女同士の間にある緊張関係。
このことは60年前に遡る。タイタン探索に向かう予定だった船内には3人とも搭乗員として乗船していた。ジャックの妻であるジュリアが睡眠状態の最中、コクピットにいるジャックとヴィクトリアの関係は親密そうにみえる。ヴィクトリアにはジャックへの想いがあったのだろう。急遽、謎の物体・テットへと向かうことになったジャックはジュリアがたちが眠る船体を切り離し、地球へと送りだす――。
仮に、完全COPY可能なクローン技術を異星人たちが持っていたとして、そのクローンの奥底に消されたはずの記憶や想いの残滓があるのだとするならば、それは何もジャックの側にのみということにはならないだろう。
ジャックのクローンがオリジナルと同様の想いを妻・ジュリアに対して持ち続けたのだとしたら、同様にヴィクトリアのクローンが持ち続けた想いというのは一体何だったのか。あるいはヴィクトリアは自らの塗りつぶされた記憶が正しいものではないと知っていたのではないか。その上で、今の幸せな時間を維持し続けたかったのではないか――。ヴィクトリアの仕草を見ているとそんな風にも思えるのだ。
この映画のテーマが、オリジナルのジャックの想いがクローンへと引き継がれ、唯一の愛へと繋がっていくことだとするならば、このヴィクトリアのジャックに対する想いもまた1つの物語として生きているのだ。
【映画】2001年宇宙の旅:キューブリックが描いた人類の進化の果て - ビールを飲みながら考えてみた…
結論を紐解けば、意外とSFの王道的な展開。スタイリッシュな映像、近未来的なメカニックの数々。世紀末的風貌のスラヴ、2001年宇宙の旅のモノリスを彷彿させるようなテットの存在…しかも単にSFものというだけでなく、クローンにまつわる問題――クローンはオリジナルの記憶や感情をどこまで引き継ぐのか、あるいはオリジナルに忠実なクローンを我々はオリジナルと同様に愛することができるのか、など興味深いテーマもある。
果たしてクローンはどこまでオリジナルであり続けられるのだろうか。
【予告編】
映画『オブリビオン』予告編
【ストーリー】
異星人との何十年にも渡る大戦争によってすっかり荒廃してしまった地球。残されたわずかなエネルギー資源を探し当てる重要ミッションを与えられたジャック・ハーパーは任務中に墜落中の宇宙船に遭遇。宇宙船に乗っていた謎めいた美女ヴィクトリアを救出する。(「ぴあ映画生活」より)
【レビュー】
この「オブリビアン」を見終わったとき、僕の中には1つの疑問が残った。それは主人公・ジャックのことでもその妻・ジュリアのことでもない。ヴィクトリアには果たして記憶があったのか、彼女の愛情は果たして作り物だったのか、ということだ。
人類と異星人スカヴの戦いから60年。地球は廃墟となり、放射能に汚染されていた。かろうじて人類は勝利を収めたものの、既に住み続けられる大地ではなく、他の惑星への移住が不可避となっていた。未だ残るスカヴの残党たちの攻撃を抑えつつ、人類のタイタンへの移住を進めるべく、ジャックは妻であるヴィクトリアと共に地球の監視を続ける。
しかしジャックには60年前の断片的な記憶と女性の面影が残っている。
大地に花が咲き始める。そのことをヴィクトリアに伝えたところ、ヴィクトリアは毒素を持っているかもしれないし規則に違反するとの理由からそのことを拒絶する。完璧なパートナー。しかしそこには何らかの溝がある。それは単にミッションを果たすことで、早く2人でタイタンに戻りたいとの想いだったのかも知れないし、地球にいることに何らかの不安を抱いていたからかもしれない。
やがてジャックの前に宇宙船が墜落する。そこに搭乗していたのは夢の中で見た女性・ジュリア・ルサコヴァだった。そしてこのジュリアこそ、異星人との戦争の前の世界でジャックの妻だったのだ。
ジュリアに対するヴィクトリアの態度は通常のものではないものがある。スカヴの信号によって導かれた謎の人物という警戒心はあっただろう。しかしそれ以上に、ジュリアの前でジャックとの絆を確認しようとしたり、必要以上にジュリアに対する警戒心や(自分たちにとって)危険をもたらすものと見なすような態度が見られるのだ。
それはジュリアの側にも見られる。ジュリアにとってもヴィクトリアへの態度は硬く何らかの警戒心が感じられる。女同士の間にある緊張関係。
このことは60年前に遡る。タイタン探索に向かう予定だった船内には3人とも搭乗員として乗船していた。ジャックの妻であるジュリアが睡眠状態の最中、コクピットにいるジャックとヴィクトリアの関係は親密そうにみえる。ヴィクトリアにはジャックへの想いがあったのだろう。急遽、謎の物体・テットへと向かうことになったジャックはジュリアがたちが眠る船体を切り離し、地球へと送りだす――。
仮に、完全COPY可能なクローン技術を異星人たちが持っていたとして、そのクローンの奥底に消されたはずの記憶や想いの残滓があるのだとするならば、それは何もジャックの側にのみということにはならないだろう。
ジャックのクローンがオリジナルと同様の想いを妻・ジュリアに対して持ち続けたのだとしたら、同様にヴィクトリアのクローンが持ち続けた想いというのは一体何だったのか。あるいはヴィクトリアは自らの塗りつぶされた記憶が正しいものではないと知っていたのではないか。その上で、今の幸せな時間を維持し続けたかったのではないか――。ヴィクトリアの仕草を見ているとそんな風にも思えるのだ。
この映画のテーマが、オリジナルのジャックの想いがクローンへと引き継がれ、唯一の愛へと繋がっていくことだとするならば、このヴィクトリアのジャックに対する想いもまた1つの物語として生きているのだ。
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