ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ある映画館の終わり

2006年01月15日 | 地方政治・経済
富山の高岡というのは県内第2の都市とはいうものの、人口僅か17万~18万人の中小地方都市だが、その人口に比べて映画館の数が以上に多い。高岡の人がみんな映画好きということもないのだろうが、その数は人口で倍の富山市や3倍近い金沢市と比べても遜色ない。そしてその高岡で異色の映画館が「高岡ピカデリー」だ。

もともと地方都市の映画館というと、商店街や駅前にあるというのが通例なのに、昭和55年のオープンの段階で郊外型としてオープンしており、しかもメジャーな映画だけでなく、今でいう単館系・ミニシアター系の映画をやったり、名画座的な映画を上映したりしていた。

とはいえ、僕がまだ小中学生の頃は、建物も古かったし、ポルノも一緒にやっていたりしてどちらかというと怪しいイメージしかないのだけれど。

やがて映画冬の時代となり、そして郊外型ショッピングセンターと一緒にシネコンが登場してくると、それまでの商店街や駅前の映画館は一気に消え去ってしまったのだけれど、このこの映画館は頑張りつづける。その結果、高岡ではシネコンが2つとこの高岡ピカデリ―が残ることとなった。高岡での映画公開数は、サティとセットになった「ワーナー・マイカル・シネマズ高岡」で6スクリーン10本、イオンとともに設置された「高岡TOHOプレックス」では8スクリーン10本、高岡ピカデリーが4スクリーン6本。もちろんヒット作などはダブりもあるのだけれど、所謂、シネコン系2劇場がメジャーな作品ばかりなのに対し、「私の頭の中の消しゴム(韓国)」と「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ(仏)」なども提供している。

 高岡ピカデリー
 富山・高岡 映画館 - goo 映画

しかしこの高岡ピカデリーも今日で終了とのこと。

僕自身はこの映画館に足繁く通ったということはないのだけれど、こういった単館系、名画系の映画を紹介できる場がなくなることは寂しいことだ。確かに、レンタルビデオもあれば、ネットでの配信もあり、地方の映画ファンでもメジャー以外のさまざまな映画を観る手段は増えている。が、例えそれが32インチだとしてもTVでみる映画と映画館で見る映画は確実に異なる。劇場で映画を見るということは1つの「儀式」であり、映画への「リスペクト」でもあるのだ。

おそらく今までもったというのも関係者の映画への愛情があったことなのだろう。

これだけシネコンが中心になってしまうと、地方での映画上映とはメジャー系だけになってしまうのだろうか?おそらく普通に考えればそうなってしまうのだろう。で、地方の映画ファンは自宅でレンタルビデオやで単館系の作品を見ろと。

ただ同時に淡い期待も抱いてしまう。現在、ワーナーと東宝、NTTはブロードバンド回線を通じてシネマデータを映画館に配信するという「4K Pure Cinema」のトライアルを行っている。これが実用化されればテープにダビングして配送するという作業が不要となり、劇場が映画を興行するためのコストが削減される。そうなると例えば単館系の映画作品についても、地方シネコンなどでできるのではないか。もちろんそこには配給元と映画館との契約条件なども現状のビジネスモデルとは大きく変えてもらう必要があるし、映画館側では上映回数を限定するなどして、限られたスクリーンの中で、メジャー系と単館系などを上手く回していく方法を考えなければならないだろう。

地方でもいい映画を映画館で観たい、そんな声をITなら実現できるのではないか――そんな期待を抱いてしまう。

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