中国やインドといった超人口大国の経済成長によって世界経済の構図は大きく変化した。これまでは欧米や日本といった先進国にこそ「需要」があり、そのその一定の市場の中でいかに消費を高めるか、新たなる需要を掘り起こすかが中心だった。中国(13.5億人)やインド(12億人)らは人口が多いといっても、その大半は低所得者~貧困層であったり、経済制度の関係で「市場」としては小さいものだった。それが両国の経済成長にともない、消費の担い手である「中所得者層」が急激に増加、巨大な市場が出現しようとしている。
そして次の「巨大市場」の1つと目されているのが「アフリカ大陸」だ。9億人の市場、豊富な資源、続く高成長…アフリカ大陸の現状を確認しようと手にしたのだが、意外な実体が!
アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)
![](http://www.shinchosha.co.jp/images/book_xl/610409.jpg)
【要約】
第一章 携帯電話を駆使するマサイ族──ケニア、ウガンダ
ケニア最大の港町モンバサ。
「サバンナの勇者」と呼ばれるマサイ族の間に急速に携帯電話が普及しているという。出稼ぎのために家族とはなれる男たちが携帯電話をもち、また野生動物に襲われそうになったら仲間との連絡に使用するという。
ケニアでは携帯の普及率は50%に迫る。ただしその多くは低所得者でも利用できるように、プリペイド式だ。またこの携帯は「電話」のためだけのものではない。最大手サファリコムでは「M-PESA」というシステムを使った送金サービスを提供している。これは携帯の代理店を銀行の支店代わりに、携帯電話を通帳代わりに使うというサービス。出稼ぎの夫からの仕送りも携帯電話で瞬時に受け取ることができる。
ケニアを中心に東アフリカ諸国は着実に経済成長しており、2010年の経済成長率は5%にも達する。しかも東アフリカ5ヶ国は東アフリカ共同体(EAC)を立ち上げようとしている。EACでは単一貨幣制に共同市場の導入、将来的には連邦制を目指すというものだ。
第二章 「悲劇の国」が「奇跡の国」に──ルワンダ
1994年の「ルワンダ大虐殺」から16年。今、ルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を遂げている。この奇跡を演出したのは「CEO大統領」と呼ばれるカガメ大統領と、長年の民族対立を避けて海外で暮らし、虐殺後にもどってきた「ディアスポラ」と呼ばれる帰国組だ。
カガメ大統領はディアスポラの帰国を促進するために、税制の優遇策や二重国籍などの特別措置を図る。その結果、ディアスポラの能力と巨額の投資が復興の原動力となり、彼らの旺盛な消費が内需を拡大している。
ルワンダは、かってベルギーの植民地だった。ベルギーは少数派のツチ族を優遇し支配者層に据えた。これに対し多数派のフツ族は冷遇され、抑圧された。その不満はマグマのように溜まっていった。1962年ルワンダはベルギーからの独立を果たす。これは同時に民主化を意味していた。
初の国政選挙が行われ、多数はのフツ族が権力を握る。そして全国各地でツチ族への報復が始まり、多くのツチ族が海外へ逃げ出すこととなる。このときに外国に渡ったのがディアスポラたちだ。そして1994年のルワンダ大虐殺。その後、ツチ族らを中心とするルワンダ愛国戦線がルワンダを制圧、連立政権を樹立する。そこで大統領になったのはフツ族穏健派のビジムンクだ。そして内政の安定した2000年、カガメが大統領となりディアスポラを中心とした経済復興路線が成立する。
その結果、ツチ族のディアスポラによって反映する都市・キガリと難民の帰国が進むフツ族中心の農村と経済格差は開くばかりだ。
第三章 中国企業アフリカ進出最前線──エチオピア、ザンビア
エチオピアでは全国規模で携帯電話通信ネットワークの整備が進んでいる。この通信ネットワークの整備を担っているのがZTEという中国企業だ。
中国企業が選ばれた理由の1つは優秀な人材をエチオピアまで提供できることだ。中国では大卒者が急増し、圧倒的な労働市場の供給過剰状態となっている。こうした状態は企業にとっては優秀な人材を確保し、エチオピアのような厳しい労働環境へも人材を登用できることを意味している。
もう1つは中国政府直轄の開発銀行による基金の存在だ。21世紀に入ってから中国のアフリカへの進出は43ヶ国206プロジェクト、インフラ投資から資源開発まで400億ドルにも及ぶという。
しかしこの姿は何もアフリカに限ったことではない。世界の資源をめぐる状況は中国を軸に大きく変わろうとしている。金属の世界の消費量の1/4を占める中国は、経済成長を維持するためには鉱物資源の確保は至上命題である。国内市場だけではまかなえ切れなくなった中国が、ひとたび備蓄を始めれば、その鉱物は値上がりする。中国が市場の価格決定する時代なのだ。
その一方で中国企業の劣悪な労働環境は、批判的な勢力を生み出してもいる。国家レベルでの豊かさも民衆レベルでの貧困からの脱出を保障したものではない。
第四章 地下資源はアフリカを幸福にするのか──タンザニア、ボツワナ
タンザニアは今、ゴールドラッシュに沸いている。イギリスからの独立後、社会主義体制をとってきたが、90年代より資本主義的な政策に転換、外国資本を積極的に導入し金採掘を推し進めている。こうした外国企業がタンザニア政府に納めていたロイヤリティは採掘量の3%。多くの雇用を生み出してはいるものの、資源の恩恵を国民は受けていない。
こうした現状を「新植民地主義」として批判も多い。中には、タンザニア人自ら採掘を進めるものもいる。自ら採掘し、携帯電話のインターネットでNY市場の価格をチェックし、ブローカーと交渉する。こうした姿はまだまだ少数だ。
世界有数のダイヤモンド産出国のボツワナでは、ダイヤモンドの世界的企業デビアスと共同出資の鉱山会社を設立した。当初、15%の出資だったが粘り強い交渉の結果、50%にまで増やしている。ボツワナはそれだけではない、DTC(ダイヤモンドトレードセンター)を誘致し、販売拠点を作ることで利益を増やしつつ、ダイヤ原石を研磨・加工する「川下」産業の育成をめざしている。そう遠くない日にボツワナからダイヤモンド企業を興す人が出てくるかもしれない。
第五章 経済が破綻した国の日常──ジンバブエ
世界で最も財政悪化している国・ジンバブエ。かってアフリカでもっとも豊かな国のひとつだったが、2000年にムガベ大統領が打ち出した「農地改革」によって破綻が進んだ。それ以前、人口の1%に満たない白人が肥沃な土地の大半を所有していた。
ムガベは大農地を所有する白人から土地を強制的に取り上げ、黒人に再分配した。しかしイギリスをはじめとした欧米諸国はこれに反発、厳しい経済制裁を課した。農業の生産量は低下し、財政赤字が進んだ。それを補填するためにジンバブエ・ドルを増刷、それがすさまじいインフレを呼び起こした。
このインフレを止めるべく、ジンバブエ政府は自国の通貨の発行を停止し、外国通貨の取引を解禁した。ジンバブエは自国の通貨を持たない国となった。
ジンバブエでは90%を超える高い失業率をほこっているが、その一方で首都ハラレには大統領をはじめ一部の富裕層の豪邸が立ち並ぶ。政府高官とのパイプを持つものが裕福になれる。農村では家族を助けるために若者たちが南アフリカへと出稼ぎに行くことになる。
第六章 「格差」を経済成長のドライブにする国──南アフリカ
今、南アフリカは「国境なき国境」となっている。移民たちを排斥するのではなく、新しい労働力として経済成長の源泉としている。
南アフリカでは黒人の地位向上を目指すBEE(黒人経済増強)政策を導入し、その中から黒人の富裕層や中間所得者層が生まれはじめている。それら「ブラック・ダイヤモンド」たちが南アフリカの経済成長を牽引している。
とはいえ、このような「ブラック・ダイヤモンド」は300万人を超えたとはいえまだ1割程度だ。しかし大半の黒人は貧しいままであり、20%は失業者だ。にも関わらず、ブラック・ダイヤモンドたちは、より安価な労働力を求めて移民たちを必要とする。
移民たちは自国に家族たちを残してきており、安い賃金でも必死に働く。ジンバブエから来た移民などは自国で高い教育を受けている場合もあり、優秀な人材の場合も多い。しかしこうして仕事を奪われた黒人たちの中には、移民に対する反発も広がっている。
アパルトヘイトを廃し、人種差別のない国を目指した南アフリカが移民を大量に受け入れたことで、その理想を崩れ始めている。
【感想】
マサイ族が携帯電話を使って送金する!自分が思っていたアフリカ像とはかけ離れた現実に、正直、驚かされる。ルワンダについても知っているイメージは「ホテル・ルワンダ」の世界だし、アフリカというと「ナイロビの鉢」や「ブラッド・ダイヤモンド」の世界。
各国の状況それぞれもそうなのだけど、何よりも、アフリカ大陸といえど「グローバル経済」と「IT/インターネット」という潮流に既に飲み込まれているのだということに驚かされる。携帯電話をもって出稼ぎに行き、掘り当てた「金」の売買にあたってインターネットでNYの相場をチェックする。
海外からの投資によって自国の開発を進めたいと考える政府と、それを利用したいとするグローバル企業。中国は戦略的にアフリカへの影響力を高めようとし、企業たちは豊富な資源や安価な労働力を利用して世界市場での覇者を目指す。
さらには経済成長を維持するために、同じアフリカ内のより安価な労働力(移民)を利用しようとする。これらの構図は「新しい植民地主義」といわれても仕方ないだろう。かってヨーロッパに搾取されていた国々が互いのうちでも搾取しあう。
その一方で、アフリカにそもそも明確な国境線がなかったように、移民の受け入れや経済協力、通貨統合などにも前向きでもある。国境という概念は中国やインドに比べれは小さいのかもしれない。仮に「経済」という価値観の下に1つのアフリカとみなすのであれば、そこにあるのは「国家」間による衝突以上に、「民族」と「経済格差」が不安定要因・対立軸になっていくのかもしれない。
こうした世界の構図の変化を見ていると、マルクスの資本論は今こそ読むべきなのかなと思う。共産主義云々は別として、「経済」あるいは「経済的な豊かさ」が世界の共通の価値観だとするならば、文化や宗教、民族といった違いはあったとしても、やはり経済的下部構造によって世界のあり方は規定されてしまうのではないかと思えるからだ。
いずれにしろ「アフリカ」を読みながら、逆に「世界」が1つにつながっていることを感じさせられた。
アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)
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NHKスペシャル大地の力を我らにアフリカンドリーム第2回
インドの衝撃/NHKスペシャル取材班・編 - ビールを飲みながら考えてみた…
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そして次の「巨大市場」の1つと目されているのが「アフリカ大陸」だ。9億人の市場、豊富な資源、続く高成長…アフリカ大陸の現状を確認しようと手にしたのだが、意外な実体が!
アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)
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【要約】
第一章 携帯電話を駆使するマサイ族──ケニア、ウガンダ
ケニア最大の港町モンバサ。
「サバンナの勇者」と呼ばれるマサイ族の間に急速に携帯電話が普及しているという。出稼ぎのために家族とはなれる男たちが携帯電話をもち、また野生動物に襲われそうになったら仲間との連絡に使用するという。
ケニアでは携帯の普及率は50%に迫る。ただしその多くは低所得者でも利用できるように、プリペイド式だ。またこの携帯は「電話」のためだけのものではない。最大手サファリコムでは「M-PESA」というシステムを使った送金サービスを提供している。これは携帯の代理店を銀行の支店代わりに、携帯電話を通帳代わりに使うというサービス。出稼ぎの夫からの仕送りも携帯電話で瞬時に受け取ることができる。
ケニアを中心に東アフリカ諸国は着実に経済成長しており、2010年の経済成長率は5%にも達する。しかも東アフリカ5ヶ国は東アフリカ共同体(EAC)を立ち上げようとしている。EACでは単一貨幣制に共同市場の導入、将来的には連邦制を目指すというものだ。
第二章 「悲劇の国」が「奇跡の国」に──ルワンダ
1994年の「ルワンダ大虐殺」から16年。今、ルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を遂げている。この奇跡を演出したのは「CEO大統領」と呼ばれるカガメ大統領と、長年の民族対立を避けて海外で暮らし、虐殺後にもどってきた「ディアスポラ」と呼ばれる帰国組だ。
カガメ大統領はディアスポラの帰国を促進するために、税制の優遇策や二重国籍などの特別措置を図る。その結果、ディアスポラの能力と巨額の投資が復興の原動力となり、彼らの旺盛な消費が内需を拡大している。
ルワンダは、かってベルギーの植民地だった。ベルギーは少数派のツチ族を優遇し支配者層に据えた。これに対し多数派のフツ族は冷遇され、抑圧された。その不満はマグマのように溜まっていった。1962年ルワンダはベルギーからの独立を果たす。これは同時に民主化を意味していた。
初の国政選挙が行われ、多数はのフツ族が権力を握る。そして全国各地でツチ族への報復が始まり、多くのツチ族が海外へ逃げ出すこととなる。このときに外国に渡ったのがディアスポラたちだ。そして1994年のルワンダ大虐殺。その後、ツチ族らを中心とするルワンダ愛国戦線がルワンダを制圧、連立政権を樹立する。そこで大統領になったのはフツ族穏健派のビジムンクだ。そして内政の安定した2000年、カガメが大統領となりディアスポラを中心とした経済復興路線が成立する。
その結果、ツチ族のディアスポラによって反映する都市・キガリと難民の帰国が進むフツ族中心の農村と経済格差は開くばかりだ。
第三章 中国企業アフリカ進出最前線──エチオピア、ザンビア
エチオピアでは全国規模で携帯電話通信ネットワークの整備が進んでいる。この通信ネットワークの整備を担っているのがZTEという中国企業だ。
中国企業が選ばれた理由の1つは優秀な人材をエチオピアまで提供できることだ。中国では大卒者が急増し、圧倒的な労働市場の供給過剰状態となっている。こうした状態は企業にとっては優秀な人材を確保し、エチオピアのような厳しい労働環境へも人材を登用できることを意味している。
もう1つは中国政府直轄の開発銀行による基金の存在だ。21世紀に入ってから中国のアフリカへの進出は43ヶ国206プロジェクト、インフラ投資から資源開発まで400億ドルにも及ぶという。
しかしこの姿は何もアフリカに限ったことではない。世界の資源をめぐる状況は中国を軸に大きく変わろうとしている。金属の世界の消費量の1/4を占める中国は、経済成長を維持するためには鉱物資源の確保は至上命題である。国内市場だけではまかなえ切れなくなった中国が、ひとたび備蓄を始めれば、その鉱物は値上がりする。中国が市場の価格決定する時代なのだ。
その一方で中国企業の劣悪な労働環境は、批判的な勢力を生み出してもいる。国家レベルでの豊かさも民衆レベルでの貧困からの脱出を保障したものではない。
第四章 地下資源はアフリカを幸福にするのか──タンザニア、ボツワナ
タンザニアは今、ゴールドラッシュに沸いている。イギリスからの独立後、社会主義体制をとってきたが、90年代より資本主義的な政策に転換、外国資本を積極的に導入し金採掘を推し進めている。こうした外国企業がタンザニア政府に納めていたロイヤリティは採掘量の3%。多くの雇用を生み出してはいるものの、資源の恩恵を国民は受けていない。
こうした現状を「新植民地主義」として批判も多い。中には、タンザニア人自ら採掘を進めるものもいる。自ら採掘し、携帯電話のインターネットでNY市場の価格をチェックし、ブローカーと交渉する。こうした姿はまだまだ少数だ。
世界有数のダイヤモンド産出国のボツワナでは、ダイヤモンドの世界的企業デビアスと共同出資の鉱山会社を設立した。当初、15%の出資だったが粘り強い交渉の結果、50%にまで増やしている。ボツワナはそれだけではない、DTC(ダイヤモンドトレードセンター)を誘致し、販売拠点を作ることで利益を増やしつつ、ダイヤ原石を研磨・加工する「川下」産業の育成をめざしている。そう遠くない日にボツワナからダイヤモンド企業を興す人が出てくるかもしれない。
第五章 経済が破綻した国の日常──ジンバブエ
世界で最も財政悪化している国・ジンバブエ。かってアフリカでもっとも豊かな国のひとつだったが、2000年にムガベ大統領が打ち出した「農地改革」によって破綻が進んだ。それ以前、人口の1%に満たない白人が肥沃な土地の大半を所有していた。
ムガベは大農地を所有する白人から土地を強制的に取り上げ、黒人に再分配した。しかしイギリスをはじめとした欧米諸国はこれに反発、厳しい経済制裁を課した。農業の生産量は低下し、財政赤字が進んだ。それを補填するためにジンバブエ・ドルを増刷、それがすさまじいインフレを呼び起こした。
このインフレを止めるべく、ジンバブエ政府は自国の通貨の発行を停止し、外国通貨の取引を解禁した。ジンバブエは自国の通貨を持たない国となった。
ジンバブエでは90%を超える高い失業率をほこっているが、その一方で首都ハラレには大統領をはじめ一部の富裕層の豪邸が立ち並ぶ。政府高官とのパイプを持つものが裕福になれる。農村では家族を助けるために若者たちが南アフリカへと出稼ぎに行くことになる。
第六章 「格差」を経済成長のドライブにする国──南アフリカ
今、南アフリカは「国境なき国境」となっている。移民たちを排斥するのではなく、新しい労働力として経済成長の源泉としている。
南アフリカでは黒人の地位向上を目指すBEE(黒人経済増強)政策を導入し、その中から黒人の富裕層や中間所得者層が生まれはじめている。それら「ブラック・ダイヤモンド」たちが南アフリカの経済成長を牽引している。
とはいえ、このような「ブラック・ダイヤモンド」は300万人を超えたとはいえまだ1割程度だ。しかし大半の黒人は貧しいままであり、20%は失業者だ。にも関わらず、ブラック・ダイヤモンドたちは、より安価な労働力を求めて移民たちを必要とする。
移民たちは自国に家族たちを残してきており、安い賃金でも必死に働く。ジンバブエから来た移民などは自国で高い教育を受けている場合もあり、優秀な人材の場合も多い。しかしこうして仕事を奪われた黒人たちの中には、移民に対する反発も広がっている。
アパルトヘイトを廃し、人種差別のない国を目指した南アフリカが移民を大量に受け入れたことで、その理想を崩れ始めている。
【感想】
マサイ族が携帯電話を使って送金する!自分が思っていたアフリカ像とはかけ離れた現実に、正直、驚かされる。ルワンダについても知っているイメージは「ホテル・ルワンダ」の世界だし、アフリカというと「ナイロビの鉢」や「ブラッド・ダイヤモンド」の世界。
各国の状況それぞれもそうなのだけど、何よりも、アフリカ大陸といえど「グローバル経済」と「IT/インターネット」という潮流に既に飲み込まれているのだということに驚かされる。携帯電話をもって出稼ぎに行き、掘り当てた「金」の売買にあたってインターネットでNYの相場をチェックする。
海外からの投資によって自国の開発を進めたいと考える政府と、それを利用したいとするグローバル企業。中国は戦略的にアフリカへの影響力を高めようとし、企業たちは豊富な資源や安価な労働力を利用して世界市場での覇者を目指す。
さらには経済成長を維持するために、同じアフリカ内のより安価な労働力(移民)を利用しようとする。これらの構図は「新しい植民地主義」といわれても仕方ないだろう。かってヨーロッパに搾取されていた国々が互いのうちでも搾取しあう。
その一方で、アフリカにそもそも明確な国境線がなかったように、移民の受け入れや経済協力、通貨統合などにも前向きでもある。国境という概念は中国やインドに比べれは小さいのかもしれない。仮に「経済」という価値観の下に1つのアフリカとみなすのであれば、そこにあるのは「国家」間による衝突以上に、「民族」と「経済格差」が不安定要因・対立軸になっていくのかもしれない。
こうした世界の構図の変化を見ていると、マルクスの資本論は今こそ読むべきなのかなと思う。共産主義云々は別として、「経済」あるいは「経済的な豊かさ」が世界の共通の価値観だとするならば、文化や宗教、民族といった違いはあったとしても、やはり経済的下部構造によって世界のあり方は規定されてしまうのではないかと思えるからだ。
いずれにしろ「アフリカ」を読みながら、逆に「世界」が1つにつながっていることを感じさせられた。
アフリカ―資本主義最後のフロンティア (新潮新書)
![](http://www.shinchosha.co.jp/images/book_xl/610409.jpg)
NHKスペシャル大地の力を我らにアフリカンドリーム第2回
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