ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「脳」整理法 / 茂木 健一郎

2006年01月04日 | 読書
何だろう。結論から言うと、非常にありきたりなことを脳科学の分野と結び付けようとするとこんなに面倒くさい書き方になるのか、というのが感想。人柄の真摯さは伝わるものの、茂木さんというのは、結局、真摯であるがゆえに読者のことを信用していないというか、そこまで何度も何度も同じことを別な切り口から言わなくても伝わるよというのに、繰り返しかかれてしまって、書けば書くほどその内容が伝わらなくなっていったんじゃないだろうか。タイトルに引かれて、実用書やハウツー本的なものを期待した人はもちろん、文系の茂木ファンにとっても内容は・・・。




言いたいことはよくわかる。人間は「偶有性」に満ちた存在であり、そうした「偶有性」を整理することで「脳」は発達していく。それは神の視点に基づく「科学」が苦手とする分野であるけれど、そうした「偶有性」を整理していく脳のプロセスを理解することで、科学が代表する「世界知」と人が瑞々しく生きていくために必要な「生活知」とを結び付けていく結節点となるものだ。1つ1つの事象や出会いのもつ「偶有性」を大事にしていくことが必要だ。うん。確かにそのとおりなのだろう。で、結果的にいいたいことというのが、「たった一度の人生だから大切に生きよう!」的なノリだとあんまりだ。おそらく一般的な人であれば、「偶有性」なんて難しい言葉を使わなくても、一度きりの人生だし大切にしないととか、チャンスをチャンスとして活かせるかは心構えが大切だとか、1つ1つの出会いを大切にしようなどというのはみんな分かっている。確かにそこに科学的な根拠はないのかもしれないけど、それは科学的な根拠が必要なわけでもないのだ。

むしろそういったものに科学的な根拠を必要としているのは、ある意味、茂木さんのような科学の立場に立脚した人が科学という領域で(あるいは延長上で)「生活知」を結び付けたいとする時なのだろう。そういう意味では、科学に携わる人なのだろう。


レビュー:「意識とはなにか―「私」を生成する脳」/茂木健一郎







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