何故かここに来て急速に高まった「消費税論議」。ま、そもそもこれだけ長い間「いずれ増税あるかも…」という空気が続いていると、「ダメなものはダメ!」的な議論ではなく「ちゃんと使われるなら仕方ないかも」的な議論になりやすい。さらには税収がいっきに減ったこともあって、選挙前にも関わらず「消費税率UPは避けられない」感が…
しかしよく考えてみると「何故、消費税なのか」ということがあまり問われていないような気がする。全体としてどのような税体系でいくのか、もう少し言うならば菅総理のいうところの「最小不幸社会」というのが「高福祉高負担」なのか「中福祉中負担」なのか、あるいは「自助努力」なのかとというところとのリンクが見えてこない。
で、「日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠」というブログが書かれていたので、ちょっとコメント。
日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠 - kojitakenの日記
このブログの中で、「日本の税収で一番不足しているのは所得税である」という指摘があり、この表を見ていると確かにその通り。
![](http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/020.gif)
消費税というのは、使った人が使った分に応じて税負担をするという意味ではある種の「公平感」がある。これはスーパーのレジ袋などでもそうだろう。エコパックをもって買いに来る人と、毎回、レジ袋をもらう人では負担額が違っても当然だ。使った分に応じて負担するというのは「正しい」ことだ。
ただしこれは「消費」という観点からのもの。
所得との関係で見ると、例えば年収400万円の世帯にとっては「消費」の割合は約80%(320万)、これが年収1000万円の世帯は60%台(600万円)となりかなり余裕ができてくる。ここで消費税を5%を上げた場合、年収400万円の世帯では16万円・年収に占める比率としては4%の負担増となるが、年収1000万円の世帯では30万円・3%の負担増となる。
また「消費」と一言でまとめたものの、その中には「食費」のような必要不可欠のものもあれば、「家電」「旅行」など必ずしもそうでないものもある。所得に対する食費の割合でもある「エンゲル係数」と「所得」の関係を見ると、年収400万円台のエンゲル係数は24.3%、これに対し年収1000万円の世帯では19.6%。消費税が上がったからといって「倹約」できる余地は低所得者層の方が少ないということになる。
つまり消費税とは「貧乏人には厳しく、金持ちには優しい」制度なのだ。
消費税導入に際しては、安定した税負担の確保という観点とともに、そもそも年収1000万円クラスの所得税を減税することでこの層の消費を促進させようという狙いがあった。言い方が悪いが、低所得者層を減税しても消費拡大には繋がらないが、逆に消費税を導入したとしても消費減退の影響は一時的だ(食事を1日1回にするわけにもいかないし)。これに対して、消費税を導入したとしても1000万円以上の世帯の所得税を減税して使えるお金を増やしてあげれば、景気への影響は大きい(贅沢してくれる)。
しかしこうした効果も今では期待できないだろう。
既に1994年から2007年にかけて平均所得は664.2万円→556.2円と100万以上減っており、平均所得に届いていない世帯が60.9%に達している。すでに十分に高所得者層への減税→消費喚起はなされているのであり、むしろ所得格差の方が問題になっている。
そう考えるなら、所得税など「累進課税」についても手を入れるという議論があってもいいはずだ。しかしマスコミの報道を見る限り「消費税増税」議論ばかりが目立つ。
もちろん「所得格差」の問題だけをとって「経済格差」を指摘するのは適切ではない。集めた税金をどう使うか、「福祉」や「社会保障」といった「再分配」機能が適切に働いているのであれば、例え消費税中心の考え方でも「格差」は是正されるのだから。
こうした所得再分配後の富の偏在・不平等さを示す数値として「ジニ係数」というものがある。不平等を0から1の数値で示しており、0であれば完全に平等で1に近いほど不平等が大きくなる。この「ジニ係数」の推移を見ると、93年から2005年にかけて所得でのジニ係数は0.4394→0.5263へと大きく上昇している(格差が増えている)。これを社会保障などで是正した結果、0.3645→0.3873となっており上昇率はなだらかとなっている。
しかしこれは全世帯に対しての数値であって、その間に年金受給者などが増えていることを考えれば、いちがいに再分配がなされているとも言い切れない。むしろ30代~40代が世帯主の世帯をみると、所得に対する再分配のの負担率は増えている。(H5年度とH17年度の「所得再分配調査報告書」)
鳩山政権のマニフェストでは「子ども手当て」だとか農家への直接補償だとか、個別の政策の話はあったものの、全体像が伝わったとは言い難い。もしまじめに消費税増税を論じるのであれば、しかも現行の5%からその倍の10%を前提とするのならば、そうした全体の税体系や目指すべき方向やそのための所得再分配方法など、体系的に説明してもらいたいところ。何となくの勢い任せで増税するというのだけはなしにしてもらいたいものだ。
消費税公約 引き上げを国民に堂々訴えよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
asahi.com(朝日新聞社):消費増税めぐり与野党の議論活発に 首相の10%発言で - 政治
菅直人の「第3の道」は地方でこそ花開く?! - ビールを飲みながら考えてみた…
しかしよく考えてみると「何故、消費税なのか」ということがあまり問われていないような気がする。全体としてどのような税体系でいくのか、もう少し言うならば菅総理のいうところの「最小不幸社会」というのが「高福祉高負担」なのか「中福祉中負担」なのか、あるいは「自助努力」なのかとというところとのリンクが見えてこない。
で、「日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠」というブログが書かれていたので、ちょっとコメント。
日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠 - kojitakenの日記
このブログの中で、「日本の税収で一番不足しているのは所得税である」という指摘があり、この表を見ていると確かにその通り。
![](http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/020.gif)
消費税というのは、使った人が使った分に応じて税負担をするという意味ではある種の「公平感」がある。これはスーパーのレジ袋などでもそうだろう。エコパックをもって買いに来る人と、毎回、レジ袋をもらう人では負担額が違っても当然だ。使った分に応じて負担するというのは「正しい」ことだ。
ただしこれは「消費」という観点からのもの。
所得との関係で見ると、例えば年収400万円の世帯にとっては「消費」の割合は約80%(320万)、これが年収1000万円の世帯は60%台(600万円)となりかなり余裕ができてくる。ここで消費税を5%を上げた場合、年収400万円の世帯では16万円・年収に占める比率としては4%の負担増となるが、年収1000万円の世帯では30万円・3%の負担増となる。
また「消費」と一言でまとめたものの、その中には「食費」のような必要不可欠のものもあれば、「家電」「旅行」など必ずしもそうでないものもある。所得に対する食費の割合でもある「エンゲル係数」と「所得」の関係を見ると、年収400万円台のエンゲル係数は24.3%、これに対し年収1000万円の世帯では19.6%。消費税が上がったからといって「倹約」できる余地は低所得者層の方が少ないということになる。
つまり消費税とは「貧乏人には厳しく、金持ちには優しい」制度なのだ。
消費税導入に際しては、安定した税負担の確保という観点とともに、そもそも年収1000万円クラスの所得税を減税することでこの層の消費を促進させようという狙いがあった。言い方が悪いが、低所得者層を減税しても消費拡大には繋がらないが、逆に消費税を導入したとしても消費減退の影響は一時的だ(食事を1日1回にするわけにもいかないし)。これに対して、消費税を導入したとしても1000万円以上の世帯の所得税を減税して使えるお金を増やしてあげれば、景気への影響は大きい(贅沢してくれる)。
しかしこうした効果も今では期待できないだろう。
既に1994年から2007年にかけて平均所得は664.2万円→556.2円と100万以上減っており、平均所得に届いていない世帯が60.9%に達している。すでに十分に高所得者層への減税→消費喚起はなされているのであり、むしろ所得格差の方が問題になっている。
そう考えるなら、所得税など「累進課税」についても手を入れるという議論があってもいいはずだ。しかしマスコミの報道を見る限り「消費税増税」議論ばかりが目立つ。
もちろん「所得格差」の問題だけをとって「経済格差」を指摘するのは適切ではない。集めた税金をどう使うか、「福祉」や「社会保障」といった「再分配」機能が適切に働いているのであれば、例え消費税中心の考え方でも「格差」は是正されるのだから。
こうした所得再分配後の富の偏在・不平等さを示す数値として「ジニ係数」というものがある。不平等を0から1の数値で示しており、0であれば完全に平等で1に近いほど不平等が大きくなる。この「ジニ係数」の推移を見ると、93年から2005年にかけて所得でのジニ係数は0.4394→0.5263へと大きく上昇している(格差が増えている)。これを社会保障などで是正した結果、0.3645→0.3873となっており上昇率はなだらかとなっている。
しかしこれは全世帯に対しての数値であって、その間に年金受給者などが増えていることを考えれば、いちがいに再分配がなされているとも言い切れない。むしろ30代~40代が世帯主の世帯をみると、所得に対する再分配のの負担率は増えている。(H5年度とH17年度の「所得再分配調査報告書」)
鳩山政権のマニフェストでは「子ども手当て」だとか農家への直接補償だとか、個別の政策の話はあったものの、全体像が伝わったとは言い難い。もしまじめに消費税増税を論じるのであれば、しかも現行の5%からその倍の10%を前提とするのならば、そうした全体の税体系や目指すべき方向やそのための所得再分配方法など、体系的に説明してもらいたいところ。何となくの勢い任せで増税するというのだけはなしにしてもらいたいものだ。
消費税公約 引き上げを国民に堂々訴えよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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