世界の巨匠・北野武にして公開から終了までが1週間だったか2週間だったかというのは、名作「ソナチネ」以来のことだったのではないかあまりの公開期間の短さに、思わず見逃してしまったが、その間に聞いた感想で肯定的なものは何一つない。いずれにしろ、「その男、凶暴につき」以来の北野武ファンにとっては、他者の評価など関係ない。「3-4x10月」がなければ「ソナチネ」が生まれなかったように、北野武の映画はその作品で完結した評価ではなく「北野武」という文脈で読まれるべきだろう。
![TAKESHIS’ ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/505/bcbj-2450.jpg?_ex=128x128)
芸能界の大スターとして、日々忙しく過ごしているビートたけし(ビートたけし)。芸能人として、そして世界に名だたる映画監督として、いわゆるセレブな彼はリッチな生活を送っている。一方、そんなたけしと外見がそっくりの北野(ビートたけし)は、しがないコンビニ店員。中年の峠を越えても売れない役者として苦闘中で、色々な舞台や映画のオーディションを受けまくっているものの、受かったためしがない。ある日のこと、北野とビートたけしが偶然にも出会う。北野は憧れのスター、ビートたけしからサインをもらうが、この出会いをきっかけに北野はたけしの映画の世界へと入り込んでいく。それは、虚構とも現実とも区別がつかない危険なファンタジーの世界だった。(goo映画より)
まぁ、何のことはない。難解だ、難解だという話の割には、「cut」などで北野武のインタビューを呼んでいた人間、北野武と映画との関係を知っている人間にするとそう難しくはない。アプローチ自体もいくつかの取り組みに支えられているとはいえ、映像哲学に凝り固まった難解さとはほど遠く、いくつかの取り組みに支えられた、という程度だろう。この映画のベースとしては、やはり北野武という人間は「死」と向きあわざろうえないのだろうということと、登場人物が象徴している人物たちとの関係性だ。
北野武という男は「死」と「暴力」に向き合う作品が多い。「ソナチネ」はまさにその死生観が反映された代表作だが、監督デビュー作である「その男、凶暴につき」のもつ暴力性や「3-4x10月」、美しい物語であるが本人曰く「殺さずにはいられなかった「あの夏、いちばん静かな海。」に「Dolls」など、そこには「死」に取り付かれた男との一面が見て取れる。この映画での「タケシ」も常に破壊願望と自身の「死」をもつ存在として描かれている。
そしてもう1つのベースが、実際の「北野武」とこの映画の登場人物たちとの関係だ。
この映画で象徴的な人物が何人か登場する。
1人がどこにでも現れタケシに纏わりつく岸本加世子であり、1人が京野ことみであり、そしてもう1人がファンの女の子だ。岸本加世子は当然のことながら「北野武」の妻を象徴しているのだろうし、京野ことみは「北野武」の愛人の象徴だろう。
では残りのファンの女とはいったい何を象徴しているのか。文字通り、「北野武」自身がファンなどにも破壊願望を持っておりそのために登場したのか?個人的にはそれは違うのではないか、と思う。
岸本加世子は両タケシに対して関係性が切れないまま冷たく当たるわけだが、京野ことみはビートたけしが「拳銃」という力を手にいれて初めて接近してくることになる。それに対して、このファンと売れっこである北野武からはとるにたらない存在としてしか扱われていないが、売れない漫才師・ビートたけしにとっては唯一優しい存在だ。
この映画の中で彼女の存在は特別なのだ。
そう考えると、実際の「北野武」との関係で思い出される人物は2人。1人は当然葬儀の際に人目も憚らず号泣したほどに大事な存在だった北野武の母親であり、もう1人が「フライデー」事件の際に愛人とされていた女性だ。
北野武が彼女と出会った時、彼女はまだ高校生だったという。北野武にとって彼女の存在がどれほど大きかったかというのは、彼女がフライデーの取材人に怪我させられた報復としてあぁいう事件を起こしたという行為そのものにも現れているし、雑誌「cut」などで語られたインタビューでもそう語っている。彼女の存在は特別なのだ。
しかしそういった存在であろうと、「殺さねばならない」ところに「北野武」の「北野武」たる「性」があるのだろう。彼には常に「自己破壊」が求められるのだ。
実際の「北野武」にとっては映画撮影は一種の「自殺」という側面をもつ。
最近こそ、「座頭市」や「BROTHER」でエンターテイメント色が強くなったものの、その抜群の才能にもかかわらず、「3-4x10月」や「ソナチネ」で描いたのは自ら「死」を求める姿であったし、「みんな~やってるか!」では、高まりつつある映画監督としての評価を放棄するかのような作品をとり、「Dolls」では再び独特の死生観・運命観を描き、興行的な成功や評価といったものを無視し、自らの「死」と「再生」、あるいは「癒し」を繰り返している。
この映画もそうした側面から考えるべきなのだろう。
確かに一般受けはしないだろうし、完成度という点においても「ソナチネ」「HANA-BI」に比べれば遠く及ばないかもしれない。しかし「3-4x10月」が「ソナチネ」を生み出したように、あるいは映画を撮ること自体が北野武の「再生」過程であるように、この映画もそうした文脈でとらえるのであれば、決して否定されるべき作品ではないだろう。
この「混乱」「混沌」とした姿こそが次の「北野武」に繋がるのだ。
【評価】
総合:★★★☆☆
それでも「武」らしさ満点:★★★★★
音楽も意外とGood!:★★★★☆
---
TAKESHIS’
![TAKESHIS’ ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/505/bcbj-2450.jpg?_ex=128x128)
ソナチネ:神は北野武に何物与えるのか
![ビートたけし/ソナチネ](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/asahi-record/cabinet/235/00000013235.jpg?_ex=128x128)
まだ始まってもいないよ―北野武の「キッズ・リターン」
![キッズ・リターン ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/407/bcbj-140.jpg?_ex=128x128)
3-4X10月
![3-4X10月 ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/360/bcbj-136.jpg?_ex=128x128)
HANA-BI
![HANA-BI ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/295/bcbj-29.jpg?_ex=128x128)
Dolls
![Dolls](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/ebest-dvd/cabinet/0000000489/0000000489461.jpg?_ex=128x128)
![TAKESHIS’ ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/505/bcbj-2450.jpg?_ex=128x128)
芸能界の大スターとして、日々忙しく過ごしているビートたけし(ビートたけし)。芸能人として、そして世界に名だたる映画監督として、いわゆるセレブな彼はリッチな生活を送っている。一方、そんなたけしと外見がそっくりの北野(ビートたけし)は、しがないコンビニ店員。中年の峠を越えても売れない役者として苦闘中で、色々な舞台や映画のオーディションを受けまくっているものの、受かったためしがない。ある日のこと、北野とビートたけしが偶然にも出会う。北野は憧れのスター、ビートたけしからサインをもらうが、この出会いをきっかけに北野はたけしの映画の世界へと入り込んでいく。それは、虚構とも現実とも区別がつかない危険なファンタジーの世界だった。(goo映画より)
まぁ、何のことはない。難解だ、難解だという話の割には、「cut」などで北野武のインタビューを呼んでいた人間、北野武と映画との関係を知っている人間にするとそう難しくはない。アプローチ自体もいくつかの取り組みに支えられているとはいえ、映像哲学に凝り固まった難解さとはほど遠く、いくつかの取り組みに支えられた、という程度だろう。この映画のベースとしては、やはり北野武という人間は「死」と向きあわざろうえないのだろうということと、登場人物が象徴している人物たちとの関係性だ。
北野武という男は「死」と「暴力」に向き合う作品が多い。「ソナチネ」はまさにその死生観が反映された代表作だが、監督デビュー作である「その男、凶暴につき」のもつ暴力性や「3-4x10月」、美しい物語であるが本人曰く「殺さずにはいられなかった「あの夏、いちばん静かな海。」に「Dolls」など、そこには「死」に取り付かれた男との一面が見て取れる。この映画での「タケシ」も常に破壊願望と自身の「死」をもつ存在として描かれている。
そしてもう1つのベースが、実際の「北野武」とこの映画の登場人物たちとの関係だ。
この映画で象徴的な人物が何人か登場する。
1人がどこにでも現れタケシに纏わりつく岸本加世子であり、1人が京野ことみであり、そしてもう1人がファンの女の子だ。岸本加世子は当然のことながら「北野武」の妻を象徴しているのだろうし、京野ことみは「北野武」の愛人の象徴だろう。
では残りのファンの女とはいったい何を象徴しているのか。文字通り、「北野武」自身がファンなどにも破壊願望を持っておりそのために登場したのか?個人的にはそれは違うのではないか、と思う。
岸本加世子は両タケシに対して関係性が切れないまま冷たく当たるわけだが、京野ことみはビートたけしが「拳銃」という力を手にいれて初めて接近してくることになる。それに対して、このファンと売れっこである北野武からはとるにたらない存在としてしか扱われていないが、売れない漫才師・ビートたけしにとっては唯一優しい存在だ。
この映画の中で彼女の存在は特別なのだ。
そう考えると、実際の「北野武」との関係で思い出される人物は2人。1人は当然葬儀の際に人目も憚らず号泣したほどに大事な存在だった北野武の母親であり、もう1人が「フライデー」事件の際に愛人とされていた女性だ。
北野武が彼女と出会った時、彼女はまだ高校生だったという。北野武にとって彼女の存在がどれほど大きかったかというのは、彼女がフライデーの取材人に怪我させられた報復としてあぁいう事件を起こしたという行為そのものにも現れているし、雑誌「cut」などで語られたインタビューでもそう語っている。彼女の存在は特別なのだ。
しかしそういった存在であろうと、「殺さねばならない」ところに「北野武」の「北野武」たる「性」があるのだろう。彼には常に「自己破壊」が求められるのだ。
実際の「北野武」にとっては映画撮影は一種の「自殺」という側面をもつ。
最近こそ、「座頭市」や「BROTHER」でエンターテイメント色が強くなったものの、その抜群の才能にもかかわらず、「3-4x10月」や「ソナチネ」で描いたのは自ら「死」を求める姿であったし、「みんな~やってるか!」では、高まりつつある映画監督としての評価を放棄するかのような作品をとり、「Dolls」では再び独特の死生観・運命観を描き、興行的な成功や評価といったものを無視し、自らの「死」と「再生」、あるいは「癒し」を繰り返している。
この映画もそうした側面から考えるべきなのだろう。
確かに一般受けはしないだろうし、完成度という点においても「ソナチネ」「HANA-BI」に比べれば遠く及ばないかもしれない。しかし「3-4x10月」が「ソナチネ」を生み出したように、あるいは映画を撮ること自体が北野武の「再生」過程であるように、この映画もそうした文脈でとらえるのであれば、決して否定されるべき作品ではないだろう。
この「混乱」「混沌」とした姿こそが次の「北野武」に繋がるのだ。
【評価】
総合:★★★☆☆
それでも「武」らしさ満点:★★★★★
音楽も意外とGood!:★★★★☆
---
TAKESHIS’
![TAKESHIS’ ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/505/bcbj-2450.jpg?_ex=128x128)
ソナチネ:神は北野武に何物与えるのか
![ビートたけし/ソナチネ](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/asahi-record/cabinet/235/00000013235.jpg?_ex=128x128)
まだ始まってもいないよ―北野武の「キッズ・リターン」
![キッズ・リターン ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/407/bcbj-140.jpg?_ex=128x128)
3-4X10月
![3-4X10月 ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/360/bcbj-136.jpg?_ex=128x128)
HANA-BI
![HANA-BI ◆20%OFF!](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/guruguru2/cabinet/295/bcbj-29.jpg?_ex=128x128)
Dolls
![Dolls](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/ebest-dvd/cabinet/0000000489/0000000489461.jpg?_ex=128x128)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます