2011年1月14日にチュニジアで起こった反政府デモ隊と治安部隊との衝突は、23年間独裁体制を敷いてきたジン・アビディン・ベンアリ大統領がの国外亡命という形で終結。この政変では、Facebook、ツイッター、wikileaksといったソーシャルメディアが活躍したことから「ソーシャルメディア革命」「ツイッター革命」といった呼び方もされている。
果たしてこの「ジャスミン革命」にソーシャルメディアはどのように影響し、何をもたらしたのだろうか。
この政変の発端は、失業中で路上で物売りをしていたモハメド・ボアジジ氏が警察から弾圧を受け、それに抗議するために焼身自殺を図ったこと。チュニジアでは若者の失業率が25~30%と高く、大学を卒業しても就職につけないという状況が背景にあった。ボアジン氏の焼身自殺がそうした若者の共感を呼び、大規模なデモへとつながった。
ソーシャルメディア革命と呼ばれる所以は、そうした情報や怒りの声がSNS・Facebookやツイッターを使って広がっていった点にある。それに対してチュニジア政府は情報検閲・情報統制を図ろうとした。Forbesの記事によると、
「唯一のインターネット接続業者(ISP)であるチュニジア・インターネット・エージェンシーを通じた検閲を一段と強化した。国家権力による言論弾圧を監視する国際組織IFEXによるとチュニジア政府は、SNS最大手のフェースブック、検索大手のグーグルやヤフーなどからユーザーネームやパスワードを盗もうと秘密裏にサイトを操作し、アカウント情報を消去したり、流出させたり、入手した情報を元にブロガーの居場所や接触相手を調べたりした」
という。
チュニジアで起きた史上初のサイバー発革命 ツイッターが広げた蜂起の波 :日本経済新聞
そこに登場したのがWikileaksとそれを支援するハッカー集団「アノニマス(匿名)」だ。彼らはチュニジア政府にサイバーテロを仕掛け、「これはチュニジア政府への警告である。我々は検閲に関与したすべての機関を標的とし、チュニジア政府が自由を求める国民の声に耳を傾けるまで攻撃の手を緩めない」と宣言した。
FacebookやGoogleが情報統制で利用できなくなる中、携帯端末から利用できるツイッターだけは情報統制から逃れ、このデモへの呼びかけや様子がツイッターを利用して広がっていったという。
Facebookやツイッターの果した「情報伝達」という側面だけ見れば、今回の「ジャスミン革命」はあくまでも抑圧された民衆の怒りによってもたらされたものであり、「ソーシャルメディア革命」と呼ぶには大げさすぎると感じる人もいるかもしれない。現在は、まだ政変の興奮の最中であり、まだまだその役割は今後、検証されなければならないだろう。しかし今回の事件が1つのエポックメイキングになることは間違いがない。
これまでこうした反政府デモといったものには中心となる組織や団体が存在していた。
仮に社会全体に不満や憤りといったものが潜在的に蔓延していたとしても、それら爆発させるためには「きっかけ」が必要だし、そのための組織化が必要だったからだ。
しかし今回のデモの広がりはネットへの「書き込み」がきっかけだといわれている。Facebookを通じた個人の「怒り」が共感を呼び、それが地域や世代を超えて広がり、自然発生的なデモへとつながったのだ、と。つまりどこかに中心となる団体や組織がありそれによって実行されたのではなく、ソーシャルメディアを通じて「集合的無意識」が組織化され現実化されたのだ。
だからこそこうした動きは「交渉相手」も持たぬまま、政府の行動に感情的に反応し、ベンアリ大統領を追い込んでいった。中心のない世論はコントロールされることなく、熱気が冷めるまで祝祭を求め続けたのだ。
こうしたメカニズムは、決してこの革命だけのものではない。
例えば日本でも、2002年、2ちゃんねるを通じて行われた「湘南海岸清掃オフ」。フジテレビのFIFAワールドカップ報道に納得いかなかった2ちゃんねらーたちは、誰かの呼びかけに応じて、フジテレビの湘南海岸清掃イベントにさきがけて清掃を行い、イベントを台無しにした。
これなどもフジテレビに抗議の意を示したいという「集合的無意識」が匿名の誰かの発言によって具現化したものといえるだろう。
あるいは2010年3月。バンクーバーオリンピックでのキム・ヨナの金メダル獲得に対して2ちゃんねるでは批判的なスレで盛り上がった。これを見た韓国のネットユーザーたちが2ちゃんねるに大規模なDoS攻撃を展開した。これなども特定の集団が攻撃を行ったり、先導したわけではなく、ネット上の呼びかけに反応した結果だった。
しかしこうしたこうしたムーブメントはこれまでなら局所的な盛り上がりで終わっていた。それは傍から見れば一部の「オタク」たちの祭りであり、社会のメインストリームとはいえなかった。
今回のジャスミン革命は、こうしたネットを通じて形成された「ムーブメント」が「国家体制」にさえ影響力を与えたという点で「ソーシャルメディア革命」と呼ばれるに値するだろう。ネットを通じて、無名者の声が世論の形成や社会制度の変革に影響を与える時代になったのだ。
そしてもう1つ。今回、ジャスミン革命を間接的に支援したWikileaksにしろ政府のサイトに攻撃を仕掛けた「アノニマス」たちにしろ、いずれもその担い手たちはネット上の無名者たちだ。世界中のどこかにいる不特定多数のものたちによって、一国の政府が転覆したという点でも「ジャスミン革命」は特筆されるべきだろう。
こうしたムーブメントのあり方は、果たしていいことなのだろうか。
もちろん市民が権力に対抗しうる「パワー」を手にいれたという点では、今まで以上に民主主義の理念に近づいたといえる。しかし一方で、中心のないムーブメントでは、いつどこが発火点となるかが見えず、また「交渉」や「調整」するための相手が存在しない。潜在的には社会を不安定化させる要因なのかもしれない。
ジャスミン革命はチュニジアだけでとどまらずエジプトのムバラク政権やイエメンにも飛び火した。エジプトでは70人以上の死者が出たとの報道もある。僕らは巨大な「パワー」とともに新しい「不安」も手にしてしまったのだろう。
エジプトで大規模デモ、3人死亡 チュニジア「ジャスミン革命」が波及 写真9枚 国際ニュース : AFPBB News
エジプト、大統領退陣要求やまず 死者70人以上と報道 - 47NEWS(よんななニュース)
果たしてこの「ジャスミン革命」にソーシャルメディアはどのように影響し、何をもたらしたのだろうか。
この政変の発端は、失業中で路上で物売りをしていたモハメド・ボアジジ氏が警察から弾圧を受け、それに抗議するために焼身自殺を図ったこと。チュニジアでは若者の失業率が25~30%と高く、大学を卒業しても就職につけないという状況が背景にあった。ボアジン氏の焼身自殺がそうした若者の共感を呼び、大規模なデモへとつながった。
ソーシャルメディア革命と呼ばれる所以は、そうした情報や怒りの声がSNS・Facebookやツイッターを使って広がっていった点にある。それに対してチュニジア政府は情報検閲・情報統制を図ろうとした。Forbesの記事によると、
「唯一のインターネット接続業者(ISP)であるチュニジア・インターネット・エージェンシーを通じた検閲を一段と強化した。国家権力による言論弾圧を監視する国際組織IFEXによるとチュニジア政府は、SNS最大手のフェースブック、検索大手のグーグルやヤフーなどからユーザーネームやパスワードを盗もうと秘密裏にサイトを操作し、アカウント情報を消去したり、流出させたり、入手した情報を元にブロガーの居場所や接触相手を調べたりした」
という。
チュニジアで起きた史上初のサイバー発革命 ツイッターが広げた蜂起の波 :日本経済新聞
そこに登場したのがWikileaksとそれを支援するハッカー集団「アノニマス(匿名)」だ。彼らはチュニジア政府にサイバーテロを仕掛け、「これはチュニジア政府への警告である。我々は検閲に関与したすべての機関を標的とし、チュニジア政府が自由を求める国民の声に耳を傾けるまで攻撃の手を緩めない」と宣言した。
FacebookやGoogleが情報統制で利用できなくなる中、携帯端末から利用できるツイッターだけは情報統制から逃れ、このデモへの呼びかけや様子がツイッターを利用して広がっていったという。
Facebookやツイッターの果した「情報伝達」という側面だけ見れば、今回の「ジャスミン革命」はあくまでも抑圧された民衆の怒りによってもたらされたものであり、「ソーシャルメディア革命」と呼ぶには大げさすぎると感じる人もいるかもしれない。現在は、まだ政変の興奮の最中であり、まだまだその役割は今後、検証されなければならないだろう。しかし今回の事件が1つのエポックメイキングになることは間違いがない。
これまでこうした反政府デモといったものには中心となる組織や団体が存在していた。
仮に社会全体に不満や憤りといったものが潜在的に蔓延していたとしても、それら爆発させるためには「きっかけ」が必要だし、そのための組織化が必要だったからだ。
しかし今回のデモの広がりはネットへの「書き込み」がきっかけだといわれている。Facebookを通じた個人の「怒り」が共感を呼び、それが地域や世代を超えて広がり、自然発生的なデモへとつながったのだ、と。つまりどこかに中心となる団体や組織がありそれによって実行されたのではなく、ソーシャルメディアを通じて「集合的無意識」が組織化され現実化されたのだ。
だからこそこうした動きは「交渉相手」も持たぬまま、政府の行動に感情的に反応し、ベンアリ大統領を追い込んでいった。中心のない世論はコントロールされることなく、熱気が冷めるまで祝祭を求め続けたのだ。
こうしたメカニズムは、決してこの革命だけのものではない。
例えば日本でも、2002年、2ちゃんねるを通じて行われた「湘南海岸清掃オフ」。フジテレビのFIFAワールドカップ報道に納得いかなかった2ちゃんねらーたちは、誰かの呼びかけに応じて、フジテレビの湘南海岸清掃イベントにさきがけて清掃を行い、イベントを台無しにした。
これなどもフジテレビに抗議の意を示したいという「集合的無意識」が匿名の誰かの発言によって具現化したものといえるだろう。
あるいは2010年3月。バンクーバーオリンピックでのキム・ヨナの金メダル獲得に対して2ちゃんねるでは批判的なスレで盛り上がった。これを見た韓国のネットユーザーたちが2ちゃんねるに大規模なDoS攻撃を展開した。これなども特定の集団が攻撃を行ったり、先導したわけではなく、ネット上の呼びかけに反応した結果だった。
しかしこうしたこうしたムーブメントはこれまでなら局所的な盛り上がりで終わっていた。それは傍から見れば一部の「オタク」たちの祭りであり、社会のメインストリームとはいえなかった。
今回のジャスミン革命は、こうしたネットを通じて形成された「ムーブメント」が「国家体制」にさえ影響力を与えたという点で「ソーシャルメディア革命」と呼ばれるに値するだろう。ネットを通じて、無名者の声が世論の形成や社会制度の変革に影響を与える時代になったのだ。
そしてもう1つ。今回、ジャスミン革命を間接的に支援したWikileaksにしろ政府のサイトに攻撃を仕掛けた「アノニマス」たちにしろ、いずれもその担い手たちはネット上の無名者たちだ。世界中のどこかにいる不特定多数のものたちによって、一国の政府が転覆したという点でも「ジャスミン革命」は特筆されるべきだろう。
こうしたムーブメントのあり方は、果たしていいことなのだろうか。
もちろん市民が権力に対抗しうる「パワー」を手にいれたという点では、今まで以上に民主主義の理念に近づいたといえる。しかし一方で、中心のないムーブメントでは、いつどこが発火点となるかが見えず、また「交渉」や「調整」するための相手が存在しない。潜在的には社会を不安定化させる要因なのかもしれない。
ジャスミン革命はチュニジアだけでとどまらずエジプトのムバラク政権やイエメンにも飛び火した。エジプトでは70人以上の死者が出たとの報道もある。僕らは巨大な「パワー」とともに新しい「不安」も手にしてしまったのだろう。
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