ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

沈まぬ太陽・JAL問題と携帯電話・ガラパゴス化

2010年06月09日 | 映画♪
山崎豊子の名作「沈まぬ太陽」が映画化。新潮文庫でも5巻に及ぶ大作で映画化は困難といわれていた作品。日本アカデミー賞受賞作ということなのだが、やはり原作を読んだ人間からすると正直・・・大作だということで、どうしてもストーリーを追いかけるだけになってしまい、人物描写や会社や労組の(権力)闘争の様など、十分に描けているとはいえない。小説を読んでない人には見ごたえがあるかもしれないが、小説を読んでいる人間はもの足りないだろう。


【予告編】

『沈まぬ太陽』


【あらすじ】

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。(「goo 映画」より)


【レビューというか、とりとめのない雑感】

ちょうど「白い巨塔」が高視聴率をたたき、「不毛地帯」がテレビドラマ化というタイミングでもあったのだけど、何よりも「JAL問題」が噴出し報道によって「沈まぬ太陽」の背景などがよりよく分かるという意味でも、映画公開のタイミングは絶妙といえるだろう。小説はちょっと前に読んでいてやはり感動したのだけれど、「JAL問題」の報道や日航労組問題なんかを調べると、その感想は微妙になる。

果して小倉寛太郎やJALの実際とはどう評価すべきなのだろうか。

JALには会社側組合×1と職種別の反会社側組合×7の計8組合が存在する。恩地元のモデルとなった小倉寛太郎氏は反会社側組合の活動家だ。もちろん彼の活動は、日航組合員にとっては給与や待遇改善に寄与したであろうし、結果的に「空の安全」に繋がったという面もあるだろう。しかしその「過度の」組合活動・職員優遇制度が、現在、批判の対象になっている。詳しくはwikiや日航労組問題を解説しているHP、小倉氏や山崎豊子氏を批判しているサイトを見てもらえばいいのだけれど、そうした様子は小倉氏を「残酷な企業と対決した不屈の人」ではなく、時代の波にのった「労働貴族」ではという印象さえも与える。

またJALの実体はどうなのだろう。御巣鷹山の日航機墜落のイメージもあり、日航の安全神話についてはかなり懐疑的な印象をもっていたのだけれど、以前、(JALではない)某航空会社の整備課の人と話をしていたところ、JALの安全に対する金のかけ方はすごいそうだ。あれだけ金をかけたら赤字になるだろう、と笑って話されていた。

ただその時の話で、何となく納得してしまったのが、JALの飛行機はJAL仕様に設計されているそうだ。そのため整備部品の調達や保守費用が高くなってしまうのだとか。

そう考えると、JALの体質というのは携帯電話や通信業界と似ているのかもしれない。

ISDNや日本の携帯電話がそうであるように、通信業界は「ナショナル」のフラッグを担った会社が、その品質や技術水準に対して独自に高い基準を設けその開発を推進してきた。その当時はまだ民間企業の技術がそうでもなく通信事業者と共同で研究開発することが企業の技術力を高めたということもあっただろうし、通信インフラの品質を高めることが日本経済に寄与したということもあったのだろう。

しかし時代は変わった。それぞれの企業が(ベンチャーなども含めて)独自の高い技術を開発し、それを普及させようと躍起になっている。20年前、30年前に比べれば世界全体でインフラに対する需要は遥かに大きくなっており、いったん普及し始めれば価格も一気にやすくなる。また必ずしも全体的に品質が高くなくても、どこか一点が特に優れていればそれを突破口に採用されていく。かってのように提供者側が独自の仕様で品質を高める以上に、汎用技術を組み合わせることで・普及している技術を採用することで、コストパフォーマンスのいいもの、結果的にいい品質のものが出来上がるようになったのだ。

「ガラパゴス化」という言葉があまりいい意味合いで使われないことがそれを象徴している。

しかし果して「ガラパゴス化」はダメなことなのか?

iPhoneやiPadをみて、あれを「ガラパゴス化」だからダメだと声を大にして言える人は少ないだろう。iTune Storeで楽曲を購入する時、そこで使われているDRMはApple独自のものだ。WindowsMediaのDRMであれば様々な事業者にライセンス提供を行っているが、Appleはあくまで自社でしか提供していない。だからこそiPodやiPhoneは人気があるのであり、プラットフォーム戦略を進める上では「独自」であることが大きな武器にもなる。

仮に「後追い」の国家やメーカーであれば「ガラパゴス」であることよりも汎用的な技術をもとに展開していけばいいのかもしれないが、少なくとも日本や日本企業の立場からすれば果敢に挑戦していくことが求められるだろう。「ガラパゴス」を怖れることはないし、結局は「勝てば官軍」なのだ。


【評価】

総合:★★★☆☆
全体的に浅すぎです:★★☆☆☆
やっぱ小説でしょう!:★★★★☆


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DVD「沈まぬ太陽 スタンダード・エディション」



沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)


沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)


沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)


沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)


沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)


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