寅さんのふるさと柴又へ行く。
仕事、忙しくて…、ちょっと疲れちゃったの。
で、寅さんの顔を見たいなー、なんて思って、柴又まで来ちゃった。
ここが帝釈天の参道ね。寅さんのウチへ寄る前に、帝釈天でお参りしてくるわ。
ここ帝釈天は柴又七福神のうちの毘沙門天があるところ。山門を入ってすぐ左にあるのが源公のついていた鐘。午前様が掃き清められた境内を歩いてみる。
寅さんが産湯に使ったという神水、今ももって帰るひとがいるらしいわね。
山本亭のお庭を通り抜けるて「寅さん記念館」へ。
あら、記念館の看板文字をとりつけたているのは寅さん?
今ここで働いているの?
「寅さん記念館」は映画で使っていたくるまやのセットをそのまま置いてあって楽しいところ。
縁側に腰掛けて、タコ社長のように茶の間をのぞくと懐かしい映画を見ることができる。
寅さんと記念撮影もできるし、寅さんの家系図や、懐かしの名場面などを自由に楽しめる。
あ、寅さんの商売品(バイのネタ)が並べてあるわ。
あの、名口上が聞こえてきそう。
「ケッコー毛だらけ、猫灰だらけ、お尻のまわりは……」
「四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水、粋な姐さん……」
「物の始まりが一ならば、国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川五右衛門なら助平の始まりが小平の義雄……」
正月の飾り物から健康サンダル、食器、古本、ぬいぐるみ。
洋行帰りはウィーン製バッグまで。
「さあっ、つまらねえご託を並べていても切りがねえ。買うの、買わないの、えー。
もういいっ!もってけドロボー!」
ここから江戸川べりはすぐ近く。
矢切の渡しへ行ってみましょう。
寅さん、矢切の渡しに乗って帰ってきたこともあったわね。
でも船は苦手のはず。
この矢切の渡し船でも波の高い時には2回も吐いた経験が・・・。(第36作)
河川敷のゴルフ場を突っ切って帰ってきたとき、親切にもゴルフボールが転がってきたのを拾ってあげたのよね、ホールに入る寸前の。
お腹がすいてきたので川甚でお昼を。
ここは文人たちも愛したという百年も続く川魚料理のお店。
夏目漱石 彼岸過迄より……敬太郎は久しぶりに晴れ晴れとしたよい気分になって水だの岡だの帆かけ舟などを見回した。・・・二人は柴又の帝釈天の傍まできて、「川甚」という家に這入って飯を食った。
谷崎潤一郎 羮より……巾広い江戸川の水が帯のように悠々と流れて薄や芦や生茂った汀に「川甚」と期した白地の旗がぱたぱた鳴って翻っている。
さあ、そろそろまた参道のおみやげ屋さんへ戻りましょうか。
つくだ煮や、せんべい、飴などのお店が軒を並べています
もちろん草だんご屋さんも。
そういえば寅さんの帰るパターンっていろいろあるけれど、どれもまっすぐにお店に入ってこないのよね。
でもみんな帰ってきたのを知っている。
「あぁ、寅が帰ってきたよ。」とおいちゃんの声。
店の前を女学生の一団がキャーキャー言いながら通り過ぎる。
その後を寅さんと源公が着いていく。
「寅ちゃん、寅ちゃんったら。」
「おにいちゃん、おかえり。」 …とおばちゃんとさくらさんに言われて、
「あ、ここか。」
なんて言いながら、照れくさそうに入ってくる寅さん。(女学生パターン)
門限に遅れた時とか、けんかをしたあととか、ちょっと帰りにくい時ってあるじゃない。きっと寅さんも、帰る時なんとなく恥ずかしいんだろうな。
あ、もう柴又の駅に着いちゃった。
寅さんには会えなかったけれど、柴又はなんだかホッとするようなとてもあたたかいところ。
さっき飴を買ったときに、おまけっていって、できたての飴を手のひらにのせてもらった。
そのほわーっとした暖かさと似てる。
また、時々来ます。寅さんのふるさとに会いに。
わたし、寅さんの最後のマドンナだといつも思っています。
寅さんクイズ
寅さんはカバンをいつもどちらの手に持っているでしょうか?
A:右手 B:左手
(2003年1月 掲載)