まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

遂行的矛盾

2010-07-21 12:11:09 | 哲学・倫理学ファック
倫理学の世界には 「遂行的矛盾」 という概念があります。

理論レベルで主張していることと、実際の実践が食い違っていることを意味しています。

簡単に言うと、「言ってることとやってることが違う」 っていうやつです。

その昔、人権について研究・教育しているある団体の研究会に招かれた際、

みなさんそれぞれに素晴らしい研究発表をされているのですが、

ふと気づくと分科会や全体会の席にいるのは男性会員ばかりで、

女性会員はみな受付係やお茶汲み係に奔走していて、

誰ひとり研究会に参加できていないということがありました。

男性は1年目の新人でもちゃんと研究会に参加しているのに、

女性はよっぽどのベテランの方でないかぎり、みんな裏方さんなのです。

当時私はまだ駆け出しの頃だったので言おうかどうしようか迷いましたがけっきょく、

「男女平等を研究し啓蒙している人たちの集まりでこれはまずいのではないでしょうか」

と発言し、翌年からその慣行は改められるようになりました。

もっとさかのぼって大学1年生のとき、

私は高校時代の友人たちと山形まで合宿免許を取りに行ったのですが、

赤湯温泉の宿から自動車教習所までけっこう離れていて、

教習所のバスでたしかバイパスを使って30分ほど送迎をしてもらっていました。

この送迎バスがバイパスであれどこであれけっこうスピードを出すのです。

運転席のそばに座ったときなど、スピードメーターと速度制限の標識を見比べていましたが、

常時20キロオーバーは当たり前という感じでした。

実際に運転するようになってみるとそれもわからないではありませんが、

しかしまだ免許を取る途上にあって、

毎日、講習では速度制限を守りましょうと言われ、

路上教習では速度違反をするとハンコを押してもらえないという日々を送っていた私たちは、

なにか納得のいかないものを感じたものでした。

当時は知りませんでしたが、「遂行的矛盾」 という言葉を知っていたなら、

”That’s It!” と腑に落ちたことでしょう。

さて、倫理学者は倫理的なことを口にする機会が多いですので、

勢い 「遂行的矛盾」 を犯す確率も高くなってしまいます。

もちろん倫理学者にかぎらず学校教員はおしなべてその傾向が強いですね。

私も含めて、心してかからねばならないと言えるでしょう。