まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

「学ぶ」 ってどういうこと?

2010-07-22 15:07:38 | 教育のエチカ
昨日は加藤国彦先生の命日でした。
といっても、私は記念日とかに弱いので、毎年ちゃんと覚えていてその日が来ると供養する、
なんてことをするわけではまったくありません。
一昨日にブログの弟子からメールをもらい、
命日だから加藤さんに関する記事を書くので去年の私の記事にリンクを張ってもいいですか、
という打診があって、ああそうか、7月21日は命日だったっけと、
やっと思い出したというのが実情です。

というわけで特に何をするというつもりもなかったのですが、
奇遇なことに昨日は、加藤さんが始めた研究会で知り合った高校の先生に呼ばれて、
高校1年生相手に講演をすることになっていました。
タイトルは 「学ぶってどういうこと?」 です。
勉強が大好きだった加藤さんを偲ぶにはうってつけのテーマです。
私はもちろんのこと、たぶんその高校の先生も、
(彼は 『加藤国彦集成』 の編集をつとめてくれた方です)
昨日が加藤さんの命日だということをまったく意識しないまま日程をセッティングしたのですが、
どういうお導きかこういうことになってしまうものなんですね。

場所は郡山市青少年会館、田村高校の特進クラス学習合宿だそうです。
高校はもう夏休みに入っているそうですが、
地方の高校では学校がこんなことをしてくれるんですね。
親や生徒にとってはとてもありがたい話ですが、高校の先生たちはたいへんです。
昨日は10時前には会場に到着して、朝から国語、数学、英語と、
ふだんよりも長時間の授業を受けていたみたいです。
とはいえまだ1年生ですから、もう受験勉強がスタートしているというわけではなく、
これからに向けて学習習慣を身に付けていくというのがこの合宿のねらいのようです。
私に課された使命は、彼らに 「学ぶ」 意義を理解してもらうため、
「学ぶ」 という営為を根源的に考えさせるような内容の話をしてほしいとのことでした。
そんなこと言われても、こちらはなんせ先週失敗したばかりですから、
そんなたいそうな話はできないよなあと、最初から若干敗戦ムードが漂っています。
とにかく、彼らは朝からずーっと勉強してきて疲れ切っているはずだから、
(寝るのには絶好のコンディションです)
元気いっぱいに話し続けて、なんとなく 「よーし、これからがんばるぞぉ」 と思えるような、
明るいムードで終われればそれでいいやと覚悟を決めて話し始めました。

前半はいつもの 「人はなぜ学び、なぜ働くのか」 という話。
「ありがたい話」 もちょこっと脱線ついでに話してあげたうえで、
後半は 「どうやって学んだらいいか」 という実践論を話してあげようというつもりで、
講演の準備をしました (例によって真剣に準備を始めたのは前の日の夜)。
後半部分の話をまとまった形でしたことはないので、本邦初公開です。
(福大の1年生相手や看護学校などで断片的に話してはいましたが)
先週はこれまでで最短の50分という持ち時間でしたが、今回は1時間20分。
これくらいあるとこちらは余裕をもって話すことができますが、
聞いているほうとしてはけっこう長いので、飽きられて眠られてしまうことが心配です。
ワークシートを用意して書き込んでもらったり、
蜘蛛をジェスチャーで演じてみたり (なぜ蜘蛛が出てくるのかの説明は省略します)、
途中で突然甲高いヘンな声を出してみたり、
あの手この手を使って話していきました。
しかし、ワークシートに時間をかけすぎてしまったり、
いい調子で話しすぎてしまった結果、肝心の後半部分に入ろうというときには、もう残り10分。
当然のことながら話し終わらず、けっきょく5分弱くらい延長してしまいました。
マインドマップを使って講演をするようになってから、
もうみごとに時間通りに話し終われるようになっていたのですが、
時間延長してしまうなんて、プレゼンテーションとしては最低です。
学生たちにも 「プレゼンは時間厳守!」 なんて指導しているのに、
「遂行的矛盾」 もいいところです。
けっきょく今回も反省点のある講演となってしまいました。

しかしながら、感想用紙を見てみると全体的には好意的に受け止められたようで、
平均満足度は4.40でした (有効回答数77)。
講演自体が長引いてしまったため、ゆっくり感想を書いてもらう時間がなかったのですが、
それでも一生懸命たくさん書いてくれた子もかなりいました。
それを見てもらうと、私がだいたいどんな話をしたのかわかってもらえるかもしれません。

「私たちが今やっていることすべてが本能ではない。あたりまえではない。でも、”自分のために”、”家族のために”、”だれかのために” 頑張っている人間はすごいと思いました。勉強はなんのためにやるのか。勉強することがあたりまえだと今までは思っていました。でもそれは本能ではないことを知りました。あたりまえではなくても、”自分の夢のため”って思ったら頑張れます。”勉強” の字は勉 (つとむ) と強 (しいる) からできていて、”無理してがんばる” という意味を表します。無理して勉強することは好きではないけれど、”自分のため” って思って頑張ろうと思います。”努力は自分にかえってくる”、”他人に教えると自分にかえってくる”、”考えたことは書きとめる”、”1つのことにだけ向けた学びをするのではなく、もっと先のことに向かってボールを投げる”」

「今日の講演を聞いて、人間にとってあたりまえのことはないこと、他人が何かをしてくれることは有ることが難しく、そしてありがたいこと、今の社会には答えがない問題を考える、分けて、順序だてて考える力が必要だということ、その他にも、これからためになることがたくさんあり、すごく勉強になりました。また、楽しんで、興味のアンテナを立てて勉強すれば、勉強がはかどるという良いことを教えていただいたので、これから役に立てて、効率よく勉強していこうと思いました。」

「今までは、授業の内容について、関係ないからいいやと思うことがあったが、大切なのは内容ではなくて、考えるという力が大切なのだと分かった。今までと違う視点から考えることができた。また、笑うところもあり、眠くならなかったので良かった。」

「考える力を養うことが大切だということが分かった。目標は大学に入ることではなく、大学に入ってからどうしたいかを目標にすることが大切だということが分かりました。」

「学習するとき、他人に教えることで自分のためになるということが分かりました。本を読む習慣をつけていくようにしようと思いました。目標に向かって頑張ろうと思います。」


みんなちゃんと私が言いたかったことを受け止めてくれたようです。
中でも一番うれしかったのは次のような感想を書いてくれた子でした。

「私は勉強することがあまり好きじゃありません。楽しく学んだことも無いし、いつもめんどくさいと思っていました。だけど今日、話を聞いて、もう少しがんばってみようかなと思いました。話が聞けて良かったです。」

こういう子がこんなふうに思ってくれたというのは、
私のねらい (なんとなく前向きなムードで終わる) が成功したという証ではないでしょうか。
よかった、よかった。
加藤さんみたいに胸を張って 「勉強っておもしれぇんだぜ」 と伝えるまではいきませんが、
学ぶことの必要性と楽しい学び方のほんの一端くらいは伝えられたんじゃないかなあ。
さて、そろそろ田村高校の学習合宿が終了する時間ですね。
田村高校のみんな、福島大学人間発達文化学類で会おうっ