これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

官僚について (その7)

2022-03-05 09:16:06 | 改革
【はじめに】
 今回は、『官僚について』の最終稿です。 ❶政治家と官僚の関係が、世界に例が殆ど無い特殊な物になった原因、❷官僚側から見た官僚の問題、➌国立大学や国立研究所の研究員(研究官僚)の問題について書きます。

【戦後日本の政権の歴史】
 学者の目から見た日本の政治家と官僚の「特殊な関係」と「特殊な問題点」については、常木淳先生の『日本の官僚制とその評価― 回顧と展望』を推奨します。10年以上前の論文ですが、インターネット上に無料で公開されています。(17ページ程です。)

 戦後、左派系(≒革新系)の政党が政権を握った期間は非常に短く、逆に保守系の政党が長く続きました。 戦後を77年と数え、細川内閣を革新系に加えても、下に示す様に革新系が政権を握ったのは通算で7年強(約10%)にしかなりません。2009年~12年の民主党政権以外は、何れも短命に終わったので、殆ど何も出来なかったのです。

 戦後直ぐの頃は、官僚達は「天皇に仕える人間で有る」と言う風習が残っていて、高級官僚達は「自分達が国を支え、指導するのだ!」と言う信念を持って活躍した様に思います。議会制民主主義の考え方が少しずつですが、定着する様になってきて、→→国民と政治家の考え方が「政治家が主導すべきだ!」に変わって来ました。→→官僚の主人が『天皇』から『政権与党の政治家』に代わったのです。

 然し、戦後の日本では保守系政権(近年は自由民主党)が長く続いているので、官僚達の主人である『政権与党の政治家』が『自由民主党の政治家』と同義語になってしまいました。 戦前の官僚は天皇には逆らえませんでしたが、現在の官僚は自民党に逆らえなくなっているのだと思います。 その結果、先進国の中で他に例の無い、『日本独特の政治家と官僚の関係』が出来てしまいました。

 この『日本独特の政治家と官僚の関係』は政権与党の政治家と官僚には都合の良いものになっていますが、国家の発展/国民の権利の面では、年々・有害物質を発生させています。

・・・ 日本独特の政治家と官僚の関係の弊害 ・・・
❶ 官僚が政治家の『私事(わたくしごと)』まで忖度して、便宜を図る。
❷ 政治家の考えを忖度して、官僚が公文書を改竄したり、勝手に破棄する。
❸ ボンクラ政治家を大臣に任命しても官僚がカバーしてくれる、→→ボンクラ政治家を延命させる、→→日本の経済を停滞させる。
❹ 優秀な官僚が早期退職してしまう。

 政権を取る可能性が無い共産党や社会民主党などが『官僚は敵だ!』と見做すのは致し方無いと思いますが、野党第一党の立憲民主党が同じ態度では政権を任せられません。政権を取ったら官僚の協力は不可欠です!

 日本も将来、革新系と保守系の二大政党が出来て、政権交代が頻繁に行われる様になれば、官僚に『政治的中立/独立』が要求されます。 逆に言えば、官僚が政治的に中立でなければ『民主主義国家』とは呼べないのです!

・・・ 戦後の政権交代の歴史 ・・・
★ 45年~46年 :日本進歩党(幣原喜重郎)
★ 46年~47年 :日本自由党(吉田茂)
★ 47年~48年(10ヶ月弱) :日本社会党(片山哲)∔民主党∔国民協同党の連立政権
★ 48年(7ヶ月強) :民主党(芦田均)∔日本社会党∔国民協同党の連立政権
★ 48年~49年 :民主自由党(吉田茂)
★ 49年~54年 :民主自由党(吉田茂)∔民主党の連立政権
★ 54年~93年 :日本民主党(鳩山一郎)→→自由民主党
★ 93年~94年(9ヶ月弱) :日本新党(細川護熙)∔新生党∔新党さきがけ∔日本社会党∔公明党∔民社党∔社会民主連合・民主改革連合の連合政権
★ 94年(64日間) :新政党(羽田孜)∔日本新党∔公明党∔自由党∔改革の会∔民主改革連合との連合政権
★ 94年~96年(18.5ヶ月) :日本社会党(村山富市)∔自由民主党∔新党さきがけの連合政権
★ 96年 :自由民主党(橋本竜太郎)∔新党さきがけ∔日本社会党
★ 96年~2005年 :自由民主党
★ 2005年~09年 :自由民主党+公明党連立の連立政権
★ 2009年~10年(9ヶ月弱) :民主党(鳩山由紀夫)∔国民新党∔社会民主党の連立政権
★ 2010年~12年(33ヶ月) :民主党∔国民新党の連立政権
★ 12年~現在 :自由民主党+公明党の連立政権

【官僚側から見た問題 :魅力的職業か?】
 もう死語になってしまいましたが、私の子供の頃は『末は博士か大臣か』と言って、息子に勉強に励め!と諭す親がいました。 博士になるのは今でも大学で博士号を取ればなれますが、戦前に大臣になる為には『文官僚』か『武官僚』になる必要が有りました。

 戦後は官僚から直接大臣になる事は出来ません。官僚から政治家に転身する人は沢山います。そして、キャリア官僚は都道府県に出向して繋がりを設け、後に知事や市長になる方が多くいます。現在、知事の60%程がキャリア官僚出身者の様です。 他の先進国の様に、政権交代が頻繁に行われる様になったら、知事や市長に転身するのが難しくなると思います。 自民党天下が続いても、世襲議員が増えているので、官僚から国会議員になるのは将来は難しくなるでしょう!

 現在は「将来、大臣になりたい」と言う子供は殆どいない様で、多分、「将来、官僚になりたい」と言う子も少なくなっていると思います。 国家公務員のノンキャリア採用試験(一般職試験)や地方公務員の採用試験の受験者は今でも多いい様ですが、高校生や大学生になって「『夢』では食べていけない」と悟って、安定した職業を選択する様になる為だと思われます。

 近年、キャリア採用試験(総合職試験)の受験者が減少しており、特に東大生が少なくなっている様です。そして、若くして辞めてしまうキャリアが多くなっている様です。 この現象を問題視するコメンテーターがいますが、私は自然の流れで有り、寧ろ好ましい事だと考えています。

 総合職試験を目指す様な優秀な若者は、キャリア官僚なんかにならないで、優良企業に入って、バリバリ働くべきです。日本を活性化して、国際競争力を高めて頂きたい!

【官僚側から見た問題 :官僚主義】
 前々回に、国民の目から見た官僚主義の問題について書きましたが、今回は官僚側から見た官僚主義の問題点について書きます。

 官僚は、法律に従って/上司の指示の通りに業務を処理するのが本来の使命です。民間企業では社員の提案が大切ですが、「こんなにしたら、業務を効率化出来る」、「この職場は人が多過ぎる」、「こんなにしたら、外郭団体が必要ない」とか言ったら、多分・同僚から煙たがられると想像します。 役人は、創意工夫に秀でた人には向かない職種なんです。

 2022年1月22日に投稿した『森友問題の赤木氏の事件』に書いた様に、上司から違法な書類の改竄や破棄を指示されたら、従わざるを得ないのが官僚です。

【官僚側から見た問題 :残業が多いい】
 残業が多いいと言うのは本庁勤務のキャリア官僚に、ほぼ限定した問題です。 国会の委員会の答弁案を作成する為に、残業が必要になる様です。 従って、ノンキャリアでは残業問題は殆ど無いと思われます。

対策案❶:委員会の答弁 ; 答弁案は担当の大臣~大臣政務官が協議して決めるべきです。答弁案について官僚のアドバイスを得るのは良いと思いますが、国会の委員会室に官僚が入るのは禁止すべきです。答弁は大臣~大臣政務官の何れかが行うべきです。

対策案❷:残業規制 ; キャリア官僚にも、労働基準法第32条『労働時間』の規定を適用すべきです。 第32条は労働者を保護する為の規定で、『使用者』の残業については制約が有りません。大臣~大臣政務官は使用者だと思います。事務次官などの官僚のトップも使用者に含めても良いかも知れませんが、若手のキャリア官僚は『労働者』に該当すると私は考えています。 そして、当然のことですが、キャリア官僚にも残業代を支給すべきです。

対策案❸:議員立法 ; 法律案の作成は政党か議員達で作成すべきです。そうなったら、キャリア官僚の仕事量は大幅に減って、本来の仕事が出来ます。 先進国では『議員立法』が多数有ります。特に、アメリカでは大統領に法案提出権は無く、議員達が法案を提出し、国会で議論/決議する事になっています。 法律の呼び名を、提案を主導した議員の名前にしています。

(注記 :アメリカの国会議員の秘書) 日本の国会議員には公費(税金)で3人(政策担当秘書、第一・第二秘書)付きます。 アメリカの下院議員は常勤秘書が18人、非常勤秘書が4人、合計で22人まで公費で雇う事が出来ます。上院議員には公設秘書の制限が無く、平均44人ほど雇っている様です。 だから、アメリカでは議員立法が当然の様に出来るのです。

 日本では議員立法が非常に少ないですが、立法事務費として議員一人当たり『65万円/月(780万円/年)』も支給され、各議員には、税金で雇われた3名の秘書がついています。 「こんな端金(はしたがね)では議員立法なんか出来ない」と言うかも知れませんが、それでは幾ら欲しいのですか?・・・私は立法事務費の増額に賛成します。

 議員や政党が法案を作成する様にしたら、日本の政治は画期的に良くなると考えています。 票集めだけに熱心で、世事に疎い・ボンクラの政治家が数多く見受けられますが、法案を作成したり、改正案を作成する為には、政治家は種々勉強する必要が有ります。 議員立法制に移行したら、ボンクラ議員は排除される様になるでしょう!

(余談) 岸田内閣にも答弁が真面(まとも)に出来ない大臣がいます。彼女の下で働くキャリア官僚達は可哀そうです。 彼女がテレビに登場すると、見てられないのでチャンネルを回してしまいます。地元では人気が有るそうですから、次回も当選するのでしょう! 彼女に沢山公設秘書を付けても、議員立法の作成に参加するのは無理だと思います。 こんな人に投票してはいけません!

【官僚側から見た問題 :生涯所得が少ない】
 生涯所得が少ないと言う問題は、国家公務員のキャリア官僚に限定した問題です。ノンキャリア官僚は、終身雇用で有り、定年まで勤め上げれば、民間企業以上の生涯所得が得られています。

 キャリア官僚になる為には、難しい総合職試験に合格する必要が有ります。子供の頃から多くの時間を勉強に割いて、入学が難しい大学に合格して、大学でもそれなりに努力する必要が有ります。

 一方、日本でも大企業の重役の年収や退職金は億円単位になっています。キャリア官僚になれる人が、民間企業に就職したら重役になれる確率は高い様に思います。キャリア官僚の多くは定年前に天下りが要求されます。 キャリア官僚が中途退職が要求される時点での退職金は、民間企業に就職して重役になった大学の同級生と同等で有るべきだと考えます。その代わり、外郭団体への天下りは禁止すべきです。

 「天下りは駄目だ!」と言いながら、「キャリア官僚の中途退職は当然だ!」では、高給で退職金がガバット貰える外郭団体に再就職して、生涯所得の辻褄を合わせる事になります。

(余談 :勧奨退職) 2013年から国家公務員の早期退職募集制度がスタートしましたが、この制度で上乗せされる『金』は僅かですから、出世コースから弾き飛ばされたキャリア官僚は、外郭団体に再就職する悪い慣例は今後も続くと思われます。

【官僚側から見た問題 :忍耐・我慢】
 官僚とは、『忍耐と我慢』が強く無ければ長く務める事は出来ない職業です。 ボンクラの国会議員でも、当選回数が六、七回になると派閥人事で大臣になれます。官僚が用意した答弁案を真面(まとも)に読めない輩(やから)が時々います。キャリア官僚はこんな大臣にも、直接会って指示を仰ぐ必要が有るのです。 こんな大臣に仕えるキャリア官僚の身になって考えて見て下さい!

 キャリア官僚になる為には、進学高校→→難関大学に入って→→学生になっても勉強する必要が有ります。 (現在は)知能指数の高い人間で無いと、キャリア官僚にはなれません。 周囲にボンクラな人がいたら無視すれば良いですが、上司のボンクラ大臣は無視出来ません。

 私が勤務した会社の重役人事は、某料亭に最大派閥の面々が集まって決めていました。私は『料亭人事』と呼んでいました。 『ゴマすり』だけが得意で重役になる輩がいて、そんな重役達を社内では『パナソニックのゴマすり器』と呼んでいました。

 来期に1億円以上の開発費が必要なケースでは、開発計画書以外に大きな文字で書いた、グラフや写真を入れた要約版を作成しました。『パナソニックのゴマすり器』達には、重役室に出向いて口頭で説明する必要が有りました。そんな重役のなかに、東大の工学部卒の方もいました。大学卒業後に全く勉強しないで、ゴマばかり摺っていた様で、頓珍漢な質問をするのが常でした。『忍耐と我慢』が必要でした。

 現政調会長の高石早苗氏は良く勉強されている様に見受けられます。ボンクラ大臣に慣れてしまった財務省のキャリア官僚達は、もしも高石氏が財務大臣になられたら右往左往するのでは?と想像します。今までとは真逆の『忍耐と我慢』が必要になるでしょう!

【国立大学と研究所の研究官僚の問題】
 文官僚と武官僚について書いてきましたが、日本にとっては工業と科学の研究開発が重要ですから、『研究官僚』についても書きます。研究官僚は私の造語です。 『研究官僚』は、国の研究機関の研究者や国立大学の教授・准教授などを指します。

 昔は、「石炭は国家なり」とか「鉄は国家なり」と言って石炭産業や鉄鋼産業に、国は力を注いで来ました。 20世紀の後半からは「半導体、IT及びAIは国家なり」とすべきでしたが、これらの分野では、残念ながら世界的に遅れを取ってしまいました。

 21世紀の日本のスローガンとして、「研究開発は国家なり」を掲げるべきです。 私の見立てでは、小泉内閣以来、研究開発費や国立大学の予算の縮小/削減を進めています。 「こんな状態を続けたら、将来日本人がノーベル賞を貰えなくなる!」と言う方が多いいですが、私は「日本の工業が国際競争力を失ってしまう!」方が心配です。

 与野党の政治家の多くが科学や工業に関心が無く、大学で文系の学科(法科や経済学科)で学んだ官僚達が省庁の実権を握っている事が、根本的な原因だと思います。

 一時期、博士を増やそうとして大学院大学を多数設立しましたが、大学や研究所の予算を減らした為に、博士号を取っても就職先が激減しました。 そして、活性化を図ろうとしたのか?国立研究所の研究員に任期制度を導入しました。一方では、民間企業の多くでは研究員も終身雇用です。

 有名な理化学研究所(理研)について調べて見ました。博士号を取得して理研に採用されても、一年契約の『任期制研究員』にしかなれません。普通は5年間延長され、→→特別に10年間・理研で研究を続ける事が出来ます。そして、幸運な人は『(終身雇用の)限定無期研究員』になれます。(理研は、半終身雇用制なのです。)

 理研で行っているのは『基礎研究』です。「基礎研究を一年契約でやれ!」、「結果を出せ!」と言うのは無理な話です。素晴らしい論文でも、発表後・直ぐには評価されないケースは多々有ります。

 インターネットに「(理研の)研究員は2,938人ですが任期制研究員は2,310人」と言う記事が有りました。 79%が任期制研究員で、21%が限定無期研究員と言う事になります。 ストレートで博士号を取得するとしても27歳です、それから10年経って限定無期研究員になれるか?どうか?の別れ道の時、37歳になっています。

 理研を含め国立の研究所のボス研究員は、部下の研究のチェックとアドバイス以外に、限定無期研究員になれない研究員の再就職先を考える必要が有ります。 民間企業が早期退職者を募集する場合、再就職先を探す部署を設けたりしますが、国立の研究所には・そんな部署が無いので、ボス研究員が探さざるを得ないのです。

 大学や研究所の予算が縮小されて、一方では国際的に通用する研究をする為には高額の研究施設や機材が必要になって来ています。大学や研究所の新規研究者採用数が減少しています。民間企業の研究所は原則終身雇用ですから、途中入社枠が少ない様です。 中国は2008年から優秀な研究者を世界中から招聘する『千人計画』を始めました。 こんな状況ですから、日本の有名なボス研究員が日本での研究を諦めて、部下を連れて中国に渡るケースが増えているのです。 こんな状態を放置していて、日本に未来は有ると思われますか?

 現在、修士課程に進む学生は増えていますが、博士課程を希望する学生は減っている様です。研究者になっても安定した就職先を見つけるのが難しい現状を、何と無く認識している為だと思います。 この点からも、将来・日本人のノーベル賞受賞者は減少すると私は危惧しています。

❶ 任期制研究員 :1年契約で5年まで延長出来る。特別に10年の延長が認められるケースが有る。
❷ 限定無期研究員 :定年60歳・・・終身雇用
❸ 特別嘱託研究員 :定年65歳ですが、有名な方は更に延長される様です。

(余談 :息子のケース) 私の息子の一人は、東大で博士号を取って、1年間ポスドクをやりました。給料は雀の涙程しか貰えなかった様です。 その後、理研に任期制研究員として採用されて『脳の研究』をしていましたが、薄給だった様です。 ボスが中国に招聘されたので→→息子は10年間ほどで理研を辞めて→→現在は、社員数人のベンチャー企業に移って、夢を追っ掛けています。 息子の嫁さんが民間企業の研究者で、それなりの給与を貰っているので、人並みの生活が出来ている様です。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿