つい最近まで私は、「日本における米軍基地の75%が沖縄にある」と信じていました。事実、目に触れる教科書や問題集にもそう書いてあるので、これまで塾の生徒たちにもそう教えてきました。学校の先生も、おそらくそんなところでしょう。
ところが、ツイッターで次のような記事を目にしたのですね。
産経ニュース(2012/03/04)
75%発言 沖縄の脱被害者意識を阻む人たち
つい最近のことだが、テレビのワイドショーを見ていて、思わず、耳を疑ってしまった。「沖縄の米軍基地は在日米軍基地の75%を占めているのです。75%ですよ」したり顔で「75%」を連呼する自称・ジャーナリスト氏に、司会者も「そうなのです。75%も沖縄に駐留しているのですよ」。
在日米軍基地の総面積は平成22年3月末現在で、10万2822ヘクタール。そのうち沖縄の米軍基地面積は2万3293ヘクタールで、全体の22・7%だ。
75%というのは、在日米軍基地のうち、米軍「専用」基地が沖縄に占める割合である。それも、実際は75%ではなくて、73・9%なのだが、それはさておき、佐世保や横須賀、厚木、岩国、三沢など自衛隊と共用している米軍施設は含まれていない。自衛隊と共用する基地を含めると、沖縄の占める割合は22・7%なのである。
実情を知らない視聴者が聞けば、「それは大変だ」ということになる。一般国民に、沖縄県民がいかに基地被害を受けているかを浸透させるには格好の数字ではある。 (中略)
沖縄は今年で復帰40周年を迎える。復帰の年に生まれた「復帰っ子」と呼ばれる年齢層が社会の中心になり、「戦争」と「米軍基地」への被害者意識は薄れつつあるように感じる。彼らの間から、それ以上に段階的な基地の撤去と沖縄の自立経済の確立への道を探ろうとする声が出始めている。
ところが、被害者意識の呪縛からの脱却を阻んでいるのが紹介したジャーナリスト氏や活動家たちで、彼らは自分たちの主義主張の発露のために沖縄を利用しているのである。
(中略)
沖縄にいると、日本の行く末を少しは真剣に考えるようになる。(那覇支局長 宮本雅史)
記事によれば、「75%」を強調しているのは、主に左翼メデイアや左翼ジャーナリスト・活動家である、と読めますが、事態はもっと深刻です。というのは、私が目にしたことのある教科書や問題集は、すべて「75%」記載だったような気がするからです。
それで、本当はどうなのか気になったので、インターネットで調べてみたのですが、なんとそれを調べ上げた奇特な方がいらっしゃったのですね。tamatsunemi.at.webry.info/201005/article_2.html
公民教科書の偏向記述
こういう偏向報道と関連しているのだろうが、実は、ほとんどの現行版公民教科書にも一部の現行歴史教科書にも、沖縄に米軍基地の75パーセントが集中していると書かれているのだ。以下に、その例を引用しておこう。
○中学校歴史教科書
帝国書院……「日本における米軍基地の75%が沖縄にあります」(229頁)
○中学校公民教科書
東京書籍
米軍普天間基地の写真説明で「日本にあるアメリカ軍施設の約40%、面積では75%が沖縄県にあります」(41頁)。
大阪書籍 「沖縄のアメリカ軍基地」の写真説明で「在日アメリカ軍基地の約75%が沖縄県にあり、その面積は県の10%(沖縄本島の18%)にもおよんでいます」(168頁)。
教育出版 「冷たい戦争の後に残された課題」の大コラムの下、「沖縄のめざす道」の小見出し下、「沖縄県には、在日米軍基地の約75%が集まっています。そのため、住民は騒音や振動、米軍兵士による犯罪などの危険と隣り合わせの生活を強いられてきました」(150頁)。
帝国書院 「空から見た嘉手納基地(沖縄県)」の写真説明で、「現在日本にある米軍基地の半分以上は沖縄に集中しています。米軍基地の周辺では、米軍機による騒音や米兵の犯罪などの問題が発生しています」(163頁)。
清水書院 本文で「また、沖縄などでは、アメリカ軍基地を維持し続ける理由も問い直されている(⑤)。」と記し、側注⑤で「こんにち、東アジアのアメリカ軍基地の機能の多くが沖縄に集中し、また、日本にあるアメリカ軍基地や訓練場の約75%が沖縄におかれ、住民の生活空間を圧迫している」(95頁)。
日本書籍新社 「全国の在日米軍基地の整理・縮小問題が大きな課題となっている。とくに米軍基地施設の75%が集中する沖縄県では、人々の生活に多大な影響を与えている。米軍人が沖縄県民をまきこむ事故や事件があとをたたない」(146頁)。
扶桑社 「在日アメリカ軍基地」の語句説明で、「在日米軍基地の75%が沖縄県に集中している」(138頁)。
偏向報道も問題ですが、何も知らない子どもたちへの偏向教育による刷り込みはさらに大きな問題です。なぜなら、報道よりも学校教育の方が公共性の程度が高いからです。なんといっても、学校教育はわれわれの血税によってまかなわれているのですから。正直、私自身これまで長い間だまされ続けていたわけで、それを思うと怒りを禁じえません。その感情は、左翼勢力の狡猾さに向けられたものであると同時に、それを――意図的にか不勉強からかどちらかは分かりませんけれど――見逃してきた文部科学省にも向けられたものです。血税を投入して、次世代を担う子どもたちを洗脳しようと企てるとは、不埒千万です。
この件は、曖昧な部分を残さないように決着をつけておきましょう。
在日米軍施設・区域別一覧(防衛省ホームページ)
このURLの表のいちばん下に、以下の数字があります。
沖縄計 33施設・区域 231,761 千m²
全国計 132施設・区域 1,027,092 千m²
沖縄 231,761 千m² / 全国 1,027,092 千m²×100 = 約22.6%(小数第2位四捨五入) となります。
これが、全ての在日米軍基地のうち沖縄に占める割合です。
沖縄県庁が公表している資料にも、上とほぼ同じ数字が記載されています。
www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/toukeisiryousyu2403.html
「1. 基地の概況」の2ページ目です。
沖縄にある米軍基地の割合は、分母を、在日米軍基地全てにする場合と、そのうちの米軍「専用」基地にする場合とで、得られる数値が大きく変わります。だから、なにも説明をせずにいきなり「75%」と大きい方の数字を表記するのは、教科書の記載としては、「虚偽」と断じざるをえません。私は、条件を明示したうえで「22.6%」と表記するのが常識的であると考えます。百歩譲っても、ふたつの数値を条件を明示して併記すべきであると考えます。というのは、普通の人は、分母は在日米軍基地全てであると思っているはずであるからです。むろん、私もそうでした。
また、報道においても、いきなり「75%」と言い出す場合は、いま述べた普通の人たちの思い込みを悪用した虚偽報道であると断じざるをえません。分母を米軍「専用」基地にした場合でも、本当は「75%」ではなく73.9%の小数第一位を四捨五入したとして「74%」なんですがね。それをさらに繰り上げて75%にするとは、いささか強引のそしりをまぬがれません。
これからは、そういう目で教科書や報道に接することにしましょうね。油断もスキもあったもんじゃないとはこのことです。
〈コメント〉
Commented by kusanone-world さん
在日米軍基地の数字は、防衛省発表の132と言う数字からして、疑わしいものです。実際は、203ではないかと推定されます。防衛省のその数字は、地位協定(在日米軍基地の日本政府による米軍への「提供」の公式記録でありこれを恣意的に変えることは本来防衛省はできないはず)による3種類の基地に分類していないものであって、恣意的ですらあります。第1種類は、地位協定2条1項のいわゆる「米軍専用基地」、第2種類は、2条4項aの「米軍管理の米日共同使用基地」、第3種類は2条4項bの「自衛隊管理の米日共同使用基地」です。ところが、防衛省のホームページでは、第2種類は第1種類に含めてしまっています。なぜそうするのか。多分事実上の憲法違反の「集団的自衛権」行使に当たっているからではないかと推定します。また、第3種類の米軍基地を米軍基地とせず自衛隊基地として発表しているに近いのです。しかも、その数を実際(119基地)よりも55基地少ない64基地と発表しています。米軍のホームページ、自衛隊防衛省のホームページでも沖縄米軍基地は全国の74%と大いに宣伝していることは、彼ら基地維持勢力にとって、その数字が都合がいいからであると推定されます。彼らにとっては、全土基地方式の「基地国家日本」の問題を沖縄問題に閉じ込めることに利益を感じているからでしょう。約20%の米軍基地を国土の0.6%、人口の1%の沖縄県に集中させていることは、すさまじい基地の集中であると言わざるを得ません。なお、全世界の米軍基地の約33%が日本にあると推定されることも、付言する価値があることです。沖縄県への米軍基地の集中は、全世界の中で、日本に米軍基地が集中していることのそれこそ集中的表現であり、日本がとうてい独立国家であるとは言えないことを示しています。詳しくは、「沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動」の機関紙「草の根ニュース」74号をご覧ください。平山基生
Commented by 美津島明 さん
To kusanone-worldさん
貴重な情報提供をありがとうございます。ご指摘の点、知らないことばかりでした。政府が、自分たちの実施したい政策のために、数字をいくらでも都合のいいように改ざんしている可能性が大いにありうることは、消費増税議論における税収弾力性の数値や公共投資の乗数の数値をめぐって、私自身、政府見解をあまり信じていないことから鑑みて、けっこう受けいれられます。国防に関しても、kusanone-worldさんのような批判的視点を持つことは、とても重要であると思っています。
ここで、お断りしておきたいのは、私は、沖縄の米軍基地の存在を正当化する側に加担するために、当小論考をアップしたつもりなどまったくない、ということです。自国の領土は基本的に自国で防衛すべきだと思っているので、沖縄から米軍基地がなくなることを願う気持ちは人後に落ちないつもりです。もしかしたら、あなたとは防衛に対する考え方が異なるかもしれませんが、それは勘弁してくださいね。
私がこの文章を書いた基本的な動機は、公教育で子どもたちに教える重要な数字は、きちんと条件を明示して、教え手が教えられるようにすべきなのに教科書の記載の仕方がそうなっていない、ということへの怒りなのです。私自身、「騙された」という思いが強くあります。kusanone-worldさん がおっしゃるように、①「米軍専用基地」から②「米軍管理の米日共同使用基地」を分離したとしても、「75%」と「23%」の乖離が失くなるわけではありませんね。むしろ、その方が分母が小さくなるので、「75%」の数値が大きく跳ね上がり、乖離が大きくなります。その場合、条件の明示・両数値の併記の必要性は高まることがあっても、低くなることはありません。私が申し上げたいのはそういうことです。高い・低いで言えば、「23%」でも十分に高い割合であると私は思っています。
また投稿してください。
Commented by okinawazin さん
ネットの誤った情報に惑わされて、勘違いしている方が多いみたいですが、
米軍専用施設だけでは無く、自衛隊と共同使用している施設を加えても、
「在日米軍施設の約74%は沖縄県に集中している」
で間違い有りません。
米軍専用施設に横田、厚木、横須賀、佐世保などの自衛隊と共同使用している
施設を加えても、在日米軍施設の約74%は沖縄県に集中しているのです。
「沖縄の在日米軍施設は23%しか無い」と主張する方がいますが、
その数字を導き出すには、
東千歳駐屯地、仙台駐屯地、朝霞駐屯地、伊丹駐屯地、北熊本駐屯地等の
陸上自衛隊、各方面隊を代表する自衛隊施設を米軍施設として、
無理に「米軍専用施設」や、「米軍と自衛隊との共同施設」に加えなければ
導きだす事ができません。
下記の資料の( )付きの施設が自衛隊施設です。
在日米軍施設・区域別一覧(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetuitirann.html
ちなみに、防衛省の下記資料を根拠に、沖縄の負担は、
「在日米軍専用施設の74%」
「在日米軍施設の23%」を主張される方が居ますが、
在日米軍施設・区域(専用施設)面積
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetumennseki.html
在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetutodoufuken.html
防衛省は、3種類ある在日米軍の使用形態を
2種類に分け資料を公表しています。
(1) 米軍専用施設(①専用施設+②共用施設)
(2) 一時利用可能施設(③一時利用可能施設)
資料を閲覧する方が誤読してしまうのは仕方がないです。
Commented by okinawazin さん
補足します。
まず、在日米軍の施設利用形態は次の3通りに分かれます。
A.米軍だけが使用する施設
B.米軍の施設だが、自衛隊も使用する施設
C.自衛隊の施設だが、米軍も使用する施設
より、正確に表すと、
A .在日米軍が専用で利用している米軍施設
B .日米地位協定2-4-(a) に基づいて日米で共同使用している施設
C .日米地位協定2-4-(b) に基づいて米軍が一時的に利用可能な自衛隊施設
そして、AとBを対象にした時の沖縄県の負担率が74%。
それに、Cを加えると23%です。
ですから、専用施設+共同施設では74%に成ります
自衛隊施設は上に上げた(C)以外に自衛隊専用施設があります。
Commented by 美津島明 さん
To okinawazinさん
貴重な情報をありがとうございます。
おかげさまで、論点の精緻化を図ることができました。
在日米軍の施設利用形態は、
A .在日米軍が専用で利用している米軍施設
B .日米地位協定2-4-(a) に基づいて日米で共同使用している施設
C .日米地位協定2-4-(b) に基づいて米軍が一時的に利用可能な自衛隊施設
の三つであること。
AとBを対象にした時の沖縄県の負担率が74%となり、それに、Cを加えると23%になること。及び、単に「専用施設+共同施設」というなら74%になること。
以上、納得です。自分なりに調べ直してみた事実とも符合します。その機会を与えていただいたことを重ねて感謝します。
私としては、マスコミや教科書や教育現場は、そういうふうに、正確に言うことが肝要である、と申し上げたいのです。単に「沖縄には米軍基地の75%があるんですよねぇ」では、報道言説としても教育言説としても困るということです。また、どうやらCが増えているという別の問題もあるようですし、そのことを考え合わせてもやはり、正確な事実認識の上に立って議論をすべきだとあらためて思いました。
*私は、この記事を掲載したときほど、ブログをやってよかったと思ったときはありませんでした。なぜなら、自分がアップした投稿に対するコメントやレスポンスによって、投稿の論点が精緻化されていって、投稿者自身が正しい認識を得るに至る、という道筋が、このときほどくっきりと浮びあがったときは、他にないからです。その点、議論の勝ち負けはどうでもいいと思っています。むろん、okinawazinさんにはボロ負けです。感情的な論争や唾のかけあい的な応酬の虚しさをあらためて痛感します。(2013・12・17 記す)
ところが、ツイッターで次のような記事を目にしたのですね。
産経ニュース(2012/03/04)
75%発言 沖縄の脱被害者意識を阻む人たち
つい最近のことだが、テレビのワイドショーを見ていて、思わず、耳を疑ってしまった。「沖縄の米軍基地は在日米軍基地の75%を占めているのです。75%ですよ」したり顔で「75%」を連呼する自称・ジャーナリスト氏に、司会者も「そうなのです。75%も沖縄に駐留しているのですよ」。
在日米軍基地の総面積は平成22年3月末現在で、10万2822ヘクタール。そのうち沖縄の米軍基地面積は2万3293ヘクタールで、全体の22・7%だ。
75%というのは、在日米軍基地のうち、米軍「専用」基地が沖縄に占める割合である。それも、実際は75%ではなくて、73・9%なのだが、それはさておき、佐世保や横須賀、厚木、岩国、三沢など自衛隊と共用している米軍施設は含まれていない。自衛隊と共用する基地を含めると、沖縄の占める割合は22・7%なのである。
実情を知らない視聴者が聞けば、「それは大変だ」ということになる。一般国民に、沖縄県民がいかに基地被害を受けているかを浸透させるには格好の数字ではある。 (中略)
沖縄は今年で復帰40周年を迎える。復帰の年に生まれた「復帰っ子」と呼ばれる年齢層が社会の中心になり、「戦争」と「米軍基地」への被害者意識は薄れつつあるように感じる。彼らの間から、それ以上に段階的な基地の撤去と沖縄の自立経済の確立への道を探ろうとする声が出始めている。
ところが、被害者意識の呪縛からの脱却を阻んでいるのが紹介したジャーナリスト氏や活動家たちで、彼らは自分たちの主義主張の発露のために沖縄を利用しているのである。
(中略)
沖縄にいると、日本の行く末を少しは真剣に考えるようになる。(那覇支局長 宮本雅史)
記事によれば、「75%」を強調しているのは、主に左翼メデイアや左翼ジャーナリスト・活動家である、と読めますが、事態はもっと深刻です。というのは、私が目にしたことのある教科書や問題集は、すべて「75%」記載だったような気がするからです。
それで、本当はどうなのか気になったので、インターネットで調べてみたのですが、なんとそれを調べ上げた奇特な方がいらっしゃったのですね。tamatsunemi.at.webry.info/201005/article_2.html
公民教科書の偏向記述
こういう偏向報道と関連しているのだろうが、実は、ほとんどの現行版公民教科書にも一部の現行歴史教科書にも、沖縄に米軍基地の75パーセントが集中していると書かれているのだ。以下に、その例を引用しておこう。
○中学校歴史教科書
帝国書院……「日本における米軍基地の75%が沖縄にあります」(229頁)
○中学校公民教科書
東京書籍
米軍普天間基地の写真説明で「日本にあるアメリカ軍施設の約40%、面積では75%が沖縄県にあります」(41頁)。
大阪書籍 「沖縄のアメリカ軍基地」の写真説明で「在日アメリカ軍基地の約75%が沖縄県にあり、その面積は県の10%(沖縄本島の18%)にもおよんでいます」(168頁)。
教育出版 「冷たい戦争の後に残された課題」の大コラムの下、「沖縄のめざす道」の小見出し下、「沖縄県には、在日米軍基地の約75%が集まっています。そのため、住民は騒音や振動、米軍兵士による犯罪などの危険と隣り合わせの生活を強いられてきました」(150頁)。
帝国書院 「空から見た嘉手納基地(沖縄県)」の写真説明で、「現在日本にある米軍基地の半分以上は沖縄に集中しています。米軍基地の周辺では、米軍機による騒音や米兵の犯罪などの問題が発生しています」(163頁)。
清水書院 本文で「また、沖縄などでは、アメリカ軍基地を維持し続ける理由も問い直されている(⑤)。」と記し、側注⑤で「こんにち、東アジアのアメリカ軍基地の機能の多くが沖縄に集中し、また、日本にあるアメリカ軍基地や訓練場の約75%が沖縄におかれ、住民の生活空間を圧迫している」(95頁)。
日本書籍新社 「全国の在日米軍基地の整理・縮小問題が大きな課題となっている。とくに米軍基地施設の75%が集中する沖縄県では、人々の生活に多大な影響を与えている。米軍人が沖縄県民をまきこむ事故や事件があとをたたない」(146頁)。
扶桑社 「在日アメリカ軍基地」の語句説明で、「在日米軍基地の75%が沖縄県に集中している」(138頁)。
偏向報道も問題ですが、何も知らない子どもたちへの偏向教育による刷り込みはさらに大きな問題です。なぜなら、報道よりも学校教育の方が公共性の程度が高いからです。なんといっても、学校教育はわれわれの血税によってまかなわれているのですから。正直、私自身これまで長い間だまされ続けていたわけで、それを思うと怒りを禁じえません。その感情は、左翼勢力の狡猾さに向けられたものであると同時に、それを――意図的にか不勉強からかどちらかは分かりませんけれど――見逃してきた文部科学省にも向けられたものです。血税を投入して、次世代を担う子どもたちを洗脳しようと企てるとは、不埒千万です。
この件は、曖昧な部分を残さないように決着をつけておきましょう。
在日米軍施設・区域別一覧(防衛省ホームページ)
このURLの表のいちばん下に、以下の数字があります。
沖縄計 33施設・区域 231,761 千m²
全国計 132施設・区域 1,027,092 千m²
沖縄 231,761 千m² / 全国 1,027,092 千m²×100 = 約22.6%(小数第2位四捨五入) となります。
これが、全ての在日米軍基地のうち沖縄に占める割合です。
沖縄県庁が公表している資料にも、上とほぼ同じ数字が記載されています。
www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/toukeisiryousyu2403.html
「1. 基地の概況」の2ページ目です。
沖縄にある米軍基地の割合は、分母を、在日米軍基地全てにする場合と、そのうちの米軍「専用」基地にする場合とで、得られる数値が大きく変わります。だから、なにも説明をせずにいきなり「75%」と大きい方の数字を表記するのは、教科書の記載としては、「虚偽」と断じざるをえません。私は、条件を明示したうえで「22.6%」と表記するのが常識的であると考えます。百歩譲っても、ふたつの数値を条件を明示して併記すべきであると考えます。というのは、普通の人は、分母は在日米軍基地全てであると思っているはずであるからです。むろん、私もそうでした。
また、報道においても、いきなり「75%」と言い出す場合は、いま述べた普通の人たちの思い込みを悪用した虚偽報道であると断じざるをえません。分母を米軍「専用」基地にした場合でも、本当は「75%」ではなく73.9%の小数第一位を四捨五入したとして「74%」なんですがね。それをさらに繰り上げて75%にするとは、いささか強引のそしりをまぬがれません。
これからは、そういう目で教科書や報道に接することにしましょうね。油断もスキもあったもんじゃないとはこのことです。
〈コメント〉
Commented by kusanone-world さん
在日米軍基地の数字は、防衛省発表の132と言う数字からして、疑わしいものです。実際は、203ではないかと推定されます。防衛省のその数字は、地位協定(在日米軍基地の日本政府による米軍への「提供」の公式記録でありこれを恣意的に変えることは本来防衛省はできないはず)による3種類の基地に分類していないものであって、恣意的ですらあります。第1種類は、地位協定2条1項のいわゆる「米軍専用基地」、第2種類は、2条4項aの「米軍管理の米日共同使用基地」、第3種類は2条4項bの「自衛隊管理の米日共同使用基地」です。ところが、防衛省のホームページでは、第2種類は第1種類に含めてしまっています。なぜそうするのか。多分事実上の憲法違反の「集団的自衛権」行使に当たっているからではないかと推定します。また、第3種類の米軍基地を米軍基地とせず自衛隊基地として発表しているに近いのです。しかも、その数を実際(119基地)よりも55基地少ない64基地と発表しています。米軍のホームページ、自衛隊防衛省のホームページでも沖縄米軍基地は全国の74%と大いに宣伝していることは、彼ら基地維持勢力にとって、その数字が都合がいいからであると推定されます。彼らにとっては、全土基地方式の「基地国家日本」の問題を沖縄問題に閉じ込めることに利益を感じているからでしょう。約20%の米軍基地を国土の0.6%、人口の1%の沖縄県に集中させていることは、すさまじい基地の集中であると言わざるを得ません。なお、全世界の米軍基地の約33%が日本にあると推定されることも、付言する価値があることです。沖縄県への米軍基地の集中は、全世界の中で、日本に米軍基地が集中していることのそれこそ集中的表現であり、日本がとうてい独立国家であるとは言えないことを示しています。詳しくは、「沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動」の機関紙「草の根ニュース」74号をご覧ください。平山基生
Commented by 美津島明 さん
To kusanone-worldさん
貴重な情報提供をありがとうございます。ご指摘の点、知らないことばかりでした。政府が、自分たちの実施したい政策のために、数字をいくらでも都合のいいように改ざんしている可能性が大いにありうることは、消費増税議論における税収弾力性の数値や公共投資の乗数の数値をめぐって、私自身、政府見解をあまり信じていないことから鑑みて、けっこう受けいれられます。国防に関しても、kusanone-worldさんのような批判的視点を持つことは、とても重要であると思っています。
ここで、お断りしておきたいのは、私は、沖縄の米軍基地の存在を正当化する側に加担するために、当小論考をアップしたつもりなどまったくない、ということです。自国の領土は基本的に自国で防衛すべきだと思っているので、沖縄から米軍基地がなくなることを願う気持ちは人後に落ちないつもりです。もしかしたら、あなたとは防衛に対する考え方が異なるかもしれませんが、それは勘弁してくださいね。
私がこの文章を書いた基本的な動機は、公教育で子どもたちに教える重要な数字は、きちんと条件を明示して、教え手が教えられるようにすべきなのに教科書の記載の仕方がそうなっていない、ということへの怒りなのです。私自身、「騙された」という思いが強くあります。kusanone-worldさん がおっしゃるように、①「米軍専用基地」から②「米軍管理の米日共同使用基地」を分離したとしても、「75%」と「23%」の乖離が失くなるわけではありませんね。むしろ、その方が分母が小さくなるので、「75%」の数値が大きく跳ね上がり、乖離が大きくなります。その場合、条件の明示・両数値の併記の必要性は高まることがあっても、低くなることはありません。私が申し上げたいのはそういうことです。高い・低いで言えば、「23%」でも十分に高い割合であると私は思っています。
また投稿してください。
Commented by okinawazin さん
ネットの誤った情報に惑わされて、勘違いしている方が多いみたいですが、
米軍専用施設だけでは無く、自衛隊と共同使用している施設を加えても、
「在日米軍施設の約74%は沖縄県に集中している」
で間違い有りません。
米軍専用施設に横田、厚木、横須賀、佐世保などの自衛隊と共同使用している
施設を加えても、在日米軍施設の約74%は沖縄県に集中しているのです。
「沖縄の在日米軍施設は23%しか無い」と主張する方がいますが、
その数字を導き出すには、
東千歳駐屯地、仙台駐屯地、朝霞駐屯地、伊丹駐屯地、北熊本駐屯地等の
陸上自衛隊、各方面隊を代表する自衛隊施設を米軍施設として、
無理に「米軍専用施設」や、「米軍と自衛隊との共同施設」に加えなければ
導きだす事ができません。
下記の資料の( )付きの施設が自衛隊施設です。
在日米軍施設・区域別一覧(防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetuitirann.html
ちなみに、防衛省の下記資料を根拠に、沖縄の負担は、
「在日米軍専用施設の74%」
「在日米軍施設の23%」を主張される方が居ますが、
在日米軍施設・区域(専用施設)面積
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetumennseki.html
在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_sisetsu/sennyousisetutodoufuken.html
防衛省は、3種類ある在日米軍の使用形態を
2種類に分け資料を公表しています。
(1) 米軍専用施設(①専用施設+②共用施設)
(2) 一時利用可能施設(③一時利用可能施設)
資料を閲覧する方が誤読してしまうのは仕方がないです。
Commented by okinawazin さん
補足します。
まず、在日米軍の施設利用形態は次の3通りに分かれます。
A.米軍だけが使用する施設
B.米軍の施設だが、自衛隊も使用する施設
C.自衛隊の施設だが、米軍も使用する施設
より、正確に表すと、
A .在日米軍が専用で利用している米軍施設
B .日米地位協定2-4-(a) に基づいて日米で共同使用している施設
C .日米地位協定2-4-(b) に基づいて米軍が一時的に利用可能な自衛隊施設
そして、AとBを対象にした時の沖縄県の負担率が74%。
それに、Cを加えると23%です。
ですから、専用施設+共同施設では74%に成ります
自衛隊施設は上に上げた(C)以外に自衛隊専用施設があります。
Commented by 美津島明 さん
To okinawazinさん
貴重な情報をありがとうございます。
おかげさまで、論点の精緻化を図ることができました。
在日米軍の施設利用形態は、
A .在日米軍が専用で利用している米軍施設
B .日米地位協定2-4-(a) に基づいて日米で共同使用している施設
C .日米地位協定2-4-(b) に基づいて米軍が一時的に利用可能な自衛隊施設
の三つであること。
AとBを対象にした時の沖縄県の負担率が74%となり、それに、Cを加えると23%になること。及び、単に「専用施設+共同施設」というなら74%になること。
以上、納得です。自分なりに調べ直してみた事実とも符合します。その機会を与えていただいたことを重ねて感謝します。
私としては、マスコミや教科書や教育現場は、そういうふうに、正確に言うことが肝要である、と申し上げたいのです。単に「沖縄には米軍基地の75%があるんですよねぇ」では、報道言説としても教育言説としても困るということです。また、どうやらCが増えているという別の問題もあるようですし、そのことを考え合わせてもやはり、正確な事実認識の上に立って議論をすべきだとあらためて思いました。
*私は、この記事を掲載したときほど、ブログをやってよかったと思ったときはありませんでした。なぜなら、自分がアップした投稿に対するコメントやレスポンスによって、投稿の論点が精緻化されていって、投稿者自身が正しい認識を得るに至る、という道筋が、このときほどくっきりと浮びあがったときは、他にないからです。その点、議論の勝ち負けはどうでもいいと思っています。むろん、okinawazinさんにはボロ負けです。感情的な論争や唾のかけあい的な応酬の虚しさをあらためて痛感します。(2013・12・17 記す)