「第二の矢」危うし
日本経済は、まだデフレから脱却したわけではありません。内閣府が11月14日に発表した2013年四半期別GDP速報によれば、七月~九月のGDPデフレーター(包括的な物価指数)は前年比マイナス0.1%でした。その前の四半期(四月~六月)がプラス0.1%なので、デフレからの脱却において直近の三ヶ月間は一歩後退したと言っていいでしょう。
デフレ下において、個人・企業は「流動性の罠」状態にあるのですから、積極的に消費や投資をしようとはせず、できるだけお金を使わずに溜め込もうとします。だから、デフレ下においては、政府が積極的な財政出動(いわゆる「第二の矢」)によって有効需要を創出し、GDPを引き上げる必要があります。インフレ期待を引き上げるために、インフレ・ターゲットを設定し、それに向けて大胆な金融緩和をパッケージで実施しなければならないのはいうまでもありません。
これは、ごく常識的な議論です。そう考える私の目に、次の記事が飛び込んできました。眠気もなにも吹っ飛んでしまいました。
公共事業費、今年度以下に…民間議員が提言へ
読売新聞 11月19日(火)11時4分配信
政府が20日に開く経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、2014年度予算をめぐり、民間議員が公共事業費を13年度当初予算(5兆2853億円)より減らすよう求める提言を行うことがわかった。
提言では、政策に充てる経費について、「13年度比でマイナスに抑制する必要がある。社会資本整備についても例外ではない」と主張する。
インフラ整備にあたっては、PPP(官民連携)やPFI(民間資金活用による社会資本整備)と呼ばれる方式を積極的に導入するよう求め、民間の人材を活用するために「PFIファンド事務局」の体制を英国並みの50人規模に強化することも盛り込む。
地方自治体が行政改革をどれだけ進めたかを判断する指標として、公共事業のうちPPPやPFIを活用した事業が占める割合を用い、これを基に地方交付税の配分を変えることを検討することも求める。
民間議員たちは、何の権限があって、国民経済の根幹に関わる「デフレからの脱却」という課題に水を差すようなマネをするのでしょうか。国民は、断じてこのような暴挙を許してはいけません。
私は、十月十五日の施政方針演説における安倍総理の、農業・医療・電力の規制緩和に関する積極姿勢に危惧の念を抱きました。なんとなく、「第二の矢」を素通りして、「第三の矢」=成長戦略に力を入れているように感じられ、また、成長戦略とは要するに小泉改革路線の延長としての規制緩和にほかならないのではないかと考えたからです。それらと、来年四月からの消費増税の実施とを重ね合わせれば、デフレからの脱却の実現の時期がはるか彼方に遠のいてしまうのは必定と思われます。安倍内閣は、ここにきて、経済政策に関してどうやら変調をきたしてしまったようです。
また、国家戦略特区の推進に関して、民間議員の連中の意見ばかりを重宝して、厚労大臣と農林水産大臣とをできうるかぎり蚊帳の外に置こうとしているのも、きわめていぶかしく感じます。安倍首相は、TPPがらみでアメリカのオバマ大統領となにかしらの密約を交わしたのでしょうか。どうも変です。
とにもかくにも、現段階における財政出動の収縮は、国民経済をデフレ圧力にさらすとんでもない暴挙なので、安倍内閣は、民間議員の馬鹿げた提案を採用しないように。
なお、上記のPPPやPFIの本質は、一般国民が総体として享受すべき経済的な利益を私企業が横取りするレントシーキングです。ゆめゆめ"PPPやPFIは、上からの経済政策を民間活力によって肩代わりする素晴らしいもの"などという「美しい言葉」にだまされないようにしましょう。むろんこれは、スティグリッツや三橋貴明氏から学んだ視点です。民間議員の国政におけるのさばりは、なんとしても阻止したいものです。
〔付記〕
その後、十二月四日に国土強靭化基本法が、ようやく成立しました。「第二の矢」を推進し、緊縮財政派や新自由主義勢力の圧力に抗するための法律上の拠点が生まれたことは、もって慶すべきことです。しかし、油断はできません。敵対勢力は、あの手この手を使って、この法律の換骨奪胎・有名無実化を図ることでしょう。朝日新聞などの反日メディアも、この法律が有効に働き出したら、日本弱体化とは逆の動きが息を吹き返すことになってしまうので、そんな悪夢を払拭するために「土建国家」批判に全力を尽くすことでしょう。闘いは、これからますます本格化することになるものと思われます。(2013・12・26 記す)
日本経済は、まだデフレから脱却したわけではありません。内閣府が11月14日に発表した2013年四半期別GDP速報によれば、七月~九月のGDPデフレーター(包括的な物価指数)は前年比マイナス0.1%でした。その前の四半期(四月~六月)がプラス0.1%なので、デフレからの脱却において直近の三ヶ月間は一歩後退したと言っていいでしょう。
デフレ下において、個人・企業は「流動性の罠」状態にあるのですから、積極的に消費や投資をしようとはせず、できるだけお金を使わずに溜め込もうとします。だから、デフレ下においては、政府が積極的な財政出動(いわゆる「第二の矢」)によって有効需要を創出し、GDPを引き上げる必要があります。インフレ期待を引き上げるために、インフレ・ターゲットを設定し、それに向けて大胆な金融緩和をパッケージで実施しなければならないのはいうまでもありません。
これは、ごく常識的な議論です。そう考える私の目に、次の記事が飛び込んできました。眠気もなにも吹っ飛んでしまいました。
公共事業費、今年度以下に…民間議員が提言へ
読売新聞 11月19日(火)11時4分配信
政府が20日に開く経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、2014年度予算をめぐり、民間議員が公共事業費を13年度当初予算(5兆2853億円)より減らすよう求める提言を行うことがわかった。
提言では、政策に充てる経費について、「13年度比でマイナスに抑制する必要がある。社会資本整備についても例外ではない」と主張する。
インフラ整備にあたっては、PPP(官民連携)やPFI(民間資金活用による社会資本整備)と呼ばれる方式を積極的に導入するよう求め、民間の人材を活用するために「PFIファンド事務局」の体制を英国並みの50人規模に強化することも盛り込む。
地方自治体が行政改革をどれだけ進めたかを判断する指標として、公共事業のうちPPPやPFIを活用した事業が占める割合を用い、これを基に地方交付税の配分を変えることを検討することも求める。
民間議員たちは、何の権限があって、国民経済の根幹に関わる「デフレからの脱却」という課題に水を差すようなマネをするのでしょうか。国民は、断じてこのような暴挙を許してはいけません。
私は、十月十五日の施政方針演説における安倍総理の、農業・医療・電力の規制緩和に関する積極姿勢に危惧の念を抱きました。なんとなく、「第二の矢」を素通りして、「第三の矢」=成長戦略に力を入れているように感じられ、また、成長戦略とは要するに小泉改革路線の延長としての規制緩和にほかならないのではないかと考えたからです。それらと、来年四月からの消費増税の実施とを重ね合わせれば、デフレからの脱却の実現の時期がはるか彼方に遠のいてしまうのは必定と思われます。安倍内閣は、ここにきて、経済政策に関してどうやら変調をきたしてしまったようです。
また、国家戦略特区の推進に関して、民間議員の連中の意見ばかりを重宝して、厚労大臣と農林水産大臣とをできうるかぎり蚊帳の外に置こうとしているのも、きわめていぶかしく感じます。安倍首相は、TPPがらみでアメリカのオバマ大統領となにかしらの密約を交わしたのでしょうか。どうも変です。
とにもかくにも、現段階における財政出動の収縮は、国民経済をデフレ圧力にさらすとんでもない暴挙なので、安倍内閣は、民間議員の馬鹿げた提案を採用しないように。
なお、上記のPPPやPFIの本質は、一般国民が総体として享受すべき経済的な利益を私企業が横取りするレントシーキングです。ゆめゆめ"PPPやPFIは、上からの経済政策を民間活力によって肩代わりする素晴らしいもの"などという「美しい言葉」にだまされないようにしましょう。むろんこれは、スティグリッツや三橋貴明氏から学んだ視点です。民間議員の国政におけるのさばりは、なんとしても阻止したいものです。
〔付記〕
その後、十二月四日に国土強靭化基本法が、ようやく成立しました。「第二の矢」を推進し、緊縮財政派や新自由主義勢力の圧力に抗するための法律上の拠点が生まれたことは、もって慶すべきことです。しかし、油断はできません。敵対勢力は、あの手この手を使って、この法律の換骨奪胎・有名無実化を図ることでしょう。朝日新聞などの反日メディアも、この法律が有効に働き出したら、日本弱体化とは逆の動きが息を吹き返すことになってしまうので、そんな悪夢を払拭するために「土建国家」批判に全力を尽くすことでしょう。闘いは、これからますます本格化することになるものと思われます。(2013・12・26 記す)