そうか、やっちまったか。米国の研究所で、猿の胚に人間の幹細胞を移植し、成長させてみたらしい。順調に育ったが20日目で破壊したそうで、続けていたらどうなったのか、私でも気になる。専ら移植用臓器の用途で羊や豚の胚を使う実験は各国の研究所で取り組んでいるが、遺伝情報が近い猿で行う事には倫理的な問題が付きまとう。もしその胚が生命と呼べる段階まで成長したら、それはヒトなのか。ヒトならば、臓器の為に殺しても良いのか。そこら辺をぶっちぎるのが科学者の真骨頂である。実験でプラナリアを嬉々として切り刻む辺りから、それは明らかである。内緒でキメラ生物が既に誕生しているのかも知れない。そこで得られた知見は恐らく我々の医療分野で役に立つのだろうが、有用だったら何をやっても良いと云う理由にはなるまい。この問題はヒトとは何か、と云う命題に帰結するのであるが、残念な事に明確な解釈を導き出した哲学者は、まだ居ないのである。