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役所

2018年06月07日 | 社会・経済

役所の母子支援窓口で感じたこと

 情報・知識&オピニオンimidas 2018/06/06

  仁藤夢乃“ここがおかしい”第25回

   先日、○○市の区役所へ未成年であるA子の相談に同行した。彼女は親から虐待を受けて育っていて、Colabo(コラボ)と繋がっていた彼女の友達の紹介で、15歳の時に私と知り合った。Colaboで一時的に居場所を提供した後、弁護士や児童相談所と協力して親との関係を断ち、ある施設に入所したが、厳しいルールやスタッフの指導になじめず黙って出てきた。

 数日後、「こんなことになってごめん。うちにはもう耐えられない。今いる場所は教えられない。危ない所にはいないから安心して」と連絡があった。

 施設関係者や児童相談所は、彼女を心配し、また自分たちの責任問題にも関わることから彼女を探していたが、彼女は児童相談所に追われるのを恐れて、支援者たちと連絡を絶とうとしていた。というのも、A子は過去に一時保護所(児童相談所に付設された18歳未満の子どもを留め置く施設)という所にも入所した経験があり、そこでの生活が管理的で窮屈であったため、また自分の自由が奪われるような所に連れていかれるのではないかと恐れたのだ。

 居場所を関係者に伝えないことを約束して彼女と再会すると、彼女は友達に「寮付きで働ける」と声を掛けられて、店長もボーイもスタッフの女の子たちも全員が16歳という違法な夜の店で働き、そこで働く少年少女たちだけで生活を始めていた。当てがあったから施設を出ていったのだと言うけれど、その時、私は「よりましな選択肢」を提示できなかったことが悔やまれた(こうした経験を重ねる中で、少女たちがいつでも気軽に泊まれる場所を作りたいと、のちに私たちはシェルターを開設した)。

 夜の店からは抜けられたものの

  Colaboでは、たまにお茶をして、近況を聞いたり話したりする関係を続けていた。

 ある日、「店を辞めたくても辞めさせてもらえない。彼と一緒に逃げたいが、匿ってもらえる所を知らないか?」と連絡があった。店で働く男の子と付き合い始めたことをきっかけに、オーナーに仕事を辞めたいと申し出ると、店のバックに暴力団が付いていることをちらつかせながら「辞めたらどうなるか分かっているか。△△(地名)を歩けなくさせてやる」と脅されたという。

 こういう場合、今であればColaboのシェルターにまず来て泊まってもらうことを提案できるが、当時は私自身もパートナーと暮らす自宅を開放して宿泊所に充てており、その時は私が地方へ出張中ですぐに迎えに行くということができなかった。すると数日のうちに彼の親がアパートを借りてくれ、そこに住めることになったという。心配ではあったが、彼の両親は良くしてくれていると言い、彼女はそこで暮らすことを決めた。

 働いていた店に対しては、給料の未払いや違法な仕事の強要など、本人が望めば店に対して法的手段を取ることも考えられた。が、彼女が未成年で、しかも家族を頼れない状況で違法行為に関わったことを公的機関が認識した時、「非行」や「犯罪」に関わったとして補導や取り調べの対象になったり、見守る大人がおらず、帰れる家もないという理由から(もちろん関わった事件や補導歴などの内容によるが)少年院行きになったりする可能性もあることを、彼女はそれまでの生活を通して感じていた。

 子どもができて生活が変わった

 A子は親や児童相談所に連絡されることを拒んでいて、仕事や生活の中で性被害に遭っても警察に行くことはできなかったし、弁護士にも頼りたくないと言っていた。「18歳になるまでは、児童相談所と関わらないために身を隠して生活する」と言い、その後しばらく連絡を取ることがなかった間に、彼女は妊娠した。

 彼の両親が連れて行った病院のソーシャルワーカーの勧めで、行政の支援を受けながら出産ができた時点で連絡をもらい、様子を見に行くと彼の職場の寮で過ごしていた。

 家には定期的に保健師が家庭訪問をしていて、行政の支援も受け入れ、役所の人とも関わりながら子育てをする彼女の姿に、子どものためにいくつもの決断をして努力しているとのこと。彼女の力を改めて感じ尊敬した。

「子どもができてから生活が変わり、自分の時間や、おしゃれや好きなことに使えるお金もなくなった。同年代の友達と話も合わなくなって、出掛ける機会もなくなった。彼に対していろいろ思うところもあるけれど、愚痴れる人もいない。でも、今はこの子といられることが幸せ」と言って、赤ちゃんを抱いていた。

 彼からのDVに悩みながら、家を出るにも出られず、ほぼ毎日家の中だけで過ごす彼女たちが気になって、月に1、2度様子を見に行くようになった。出産を控えた別の女の子と一緒に彼女の家を訪ね、子ども服やベビーカーのお下がりをもらったこともあった。

 母子生活支援を求めて区役所へ

 彼との別れを考え始めた頃、スーパーで子どもを抱えたA子を、彼女の親の知人が偶然見掛けたことをきっかけに彼女は両親と再会。彼と別れ、実家に戻ることにしたと連絡をもらった。戻ってしばらくは家族とうまくいっていたが、数カ月でかつてのような関係に戻ってしまい、このままでは自分にとっても、子どもにとっても良くないと考えた彼女は「家を出る方法はないか?」と相談してくれた。

 彼女は自分でお金を貯めて家を出ることも考えたが、アルバイトをするには、子どもを保育園に預けなければならない。役所に相談すると、待機児童が多く保育園にはすぐに入れないことや、彼女が収入のある親(子どもにとっては祖父)の世帯に入っていることで保育料も高くなっており、支払うことができない。そうかといって、子どもを見てくれる人もいないので、働きたくても働けずにいた。

 病気や障害を抱えた家族もいて、親からの金銭的援助は望めず、彼女は手持ちのお金と貯金を合わせても数千円しか持っていなかった。また、未成年のため自分で家を借りることにもハードルがあった。Colaboが運営しているのは中高生向けのシェルターであり、一時的な宿泊はしてもらえても、母子で安全に生活できるような環境は整っていなかった。

  そこで、母子生活支援施設を利用するか、生活保護を利用してアパートに転居し、生活の立て直しができないかと本人と相談し、役所に行くことにした。

 今日、今すぐにというのは難しい

 母子生活支援施設は、児童福祉法38条に基づいて作られた施設で、18歳未満の子どもを養育している母子や、何らかの事情で離婚届が出せていないが母子家庭に準ずる女性と子どもが、自立に向けて生活できる施設だ。経済的理由、病気や障害による生活困窮、夫などからのDVや虐待から逃れるためなど、さまざまな理由で入所する母子を支援している。私も、温かい雰囲気の施設が多いと知人から聞いていて、保育士など専門家による子どもの一時保育も利用でき、子育てに良い環境が用意されている。

 入所には役所からの紹介が必要なため、最初に母子支援を担当する窓口に行って相談員に事情を話すと、「どこにお住まいですか?」と聞かれ、答えると「今日はあなたの地域の担当者が不在なので、また電話で相談して下さい」と言われた。今暮らせる場所がなく困っていること、手持ちのお金もなく、支援してほしいことを話すと、「今日、今すぐにということは難しいので、後日改めて電話をして下さい」と言われた。

 彼女は、これまでにも担当者に電話で相談したけれど、具体的な支援はしてもらえなかったこと、このままでは食べていくこともできないことを訴えると、「今すぐにでもどこか入れる所が必要ということですか。お子さんは連れてきていないようですが、どうするのですか? 荷物はどうしますか? 今すぐ持ってくることはできるのですか?」と聞かれた。

 彼女は経験上、こうした相談は長時間になることが分かっていたので、子どもを家族に預けて来ているけれど、今すぐにでも家を出たいこと、すぐに行ける場所があれば、子どもを迎えに行き、今日にでも移動したいことを伝えた。

 すると、「今日の今日で入れる所は簡単には見つからない」「お金がないのなら生活保護を担当する窓口へ行くように」と言われた。たらい回しにするような対応が既に問題だが、母子支援担当課としてすぐに動くことはできないと言う。それなら生活支援窓口まで同行して相談に同席し、一緒に考えてほしいと伝えると、「分かりました」と言ったものの、窓口に案内し、簡単に事情を話しただけで相談員は帰ってしまった。

生活保護申請には暗黙のハードル

 生活支援窓口で、改めて彼女の現在の状況と今後の生活の希望、そして母子支援窓口では対応してもらえず、手持ちのお金もないため「生活保護を申請したい」旨を伝えると「相談ですね?」と言われる。生活保護の「申請」を断ることは法律上できないため、申請後に利用対象となるかどうかの調査があるにもかかわらず、申請そのものを嫌がる窓口が「相談」として対応しようとする場面は他の役所でも何度も経験してきた。

 そのため、「申請に来ました」と言うと「相談ですね?」と返される。「手持ちのお金もなく、子どものおむつも買えなくなりそうなので、申請したいのです」と返すと「まずは相談からになります」と言われ、「相談したら申請できますか?」と返すと、担当者は上司に電話を掛けて「かなり強硬に言ってきています……」と、私たちに聞こえるように対応を相談していた。

 強い態度を取ったつもりはなく、ただ「申請したい」と淡々と何度か伝えただけで、そんな扱いを受けた。結局、「生活保護は、他の制度を利用しても生活が成り立たない場合の最後の手段なので、まずは母子支援を受けるように」と言われ、先ほどの母子支援の窓口に戻された。この時点で、役所に来てから1時間以上経っていた。ただでさえ自分の個人的な事情を、見ず知らずの役人に話すだけでもかなりの力が必要なのに、こうした対応を受けると相談に訪れた人はどっと疲れてしまい、制度を利用することを諦めてしまうことが少なくない。

 相談は本人と1対1でしか受けない

 A子は出産前と産後数カ月間にわたって彼の家にいた時、役所から母子支援を受けていた。「その時の担当者なら、これまでの事情も分かってくれているから、その人と話がしたい」と言うと、彼女が実家に戻って住所が変わったことから、受け持ちエリアの関係で前の担当者とは話ができず、記録を共有することもできないという。

 また、相談は本人と相談員の1対1でしか受けられないとして「同行支援の方は席を外して下さい」と言われた。理由を聞くと、「母子生活支援施設の性質上、第三者の方の同席はお断りしております」と言う。

 本人だけでは状況や希望を伝えられるか不安であるため支援者が同行していることや、聞かれてはまずいことは本人以外の前では話さなくていいので同席させてほしいと伝えるが、相談員は「相談はご本人と1対1でしか受けられないことになっているので、このままだとお話を聞くことができない」と繰り返した。

 「そういうルールがあるんですか?」と聞くと、「ルールといいますか、そういう対応はできません」と言われた。

 DVなどの被害者が、加害者やその知人と来るなどして、相談者の安全が守れなくなってしまう場合などを想定しているのかなと思ったが、彼女はこれまでColaboを経由して公的機関に繋がった経験もあり、過去の状況を調べればその関係はわかるはずだ。こうした対応を受けたのは初めてだったので、「何かの規定に基づいて言っているのか、運用上のルールがあるのか、市の規定なのか、今後のためにも教えてほしい」と言うと、相談員は上司に確認しに行った。

 押し問答が延々と繰り返される

 戻ってきた相談員は、「規定はないが、○○市として同行者がいたらお話ができない」と言う。A子が「これまで何度も相談してきたけど、考えると言われるだけで、何も変わらず放置された。だから、これまでの事情を知っている夢乃さんたちに一緒に来てと自分がお願いした。私が話を聞かれてもいいと言っているのにダメなんですか?」と聞くと、「市としては、ご本人がいいと言ったとしても、ご本人の個人情報を含むような相談はその内容を第三者の方に聞かせることはできません」「市としては、それだとお話しができません」と繰り返され、話も聞いてもらえない状態が続いた。

 私がやり取りをメモしながら話していると、相談員から「メモをしないでもらえますか」と言われた。「どうしてですか?」と返すと、「市として、外に出ては困りますので」と言う。「メモをしなければ同席できるのですか?」と聞くと、「ご本人の個人的な状況などをお話しいただきますので、同席はしていただけません。一般的なお話はできますが、個別の相談についてはお話できません」と言われた。

 「○○市として、と繰り返されるが、誰が、どのような理由でそう言っているのか。相談すら受けてもらえないのは初めてだ。市に抗議する」と言うと、「今日すぐに行く所が必要なんですか? 今日すぐ(シェルターなどに)入りたいんですか?」と聞かれた。彼女が「入れるならすぐにでも」と答えると、「今日は無理です」と言って相談員は席を立ち、またしても上司に相談しに行った。

 これ以上の意見はホームページから

 20分以上待たされた後、上司がやってきて、「市のほうに確認したところ、この対応で問題ないと言われた」と言う。誰に確認したのか聞くと「子ども青少年局のBさんの判断で、初回の相談は1対1でないと受けられません。これ以上のご意見については、市のホームページの広聴のページから問い合わせ下されば公式な回答を行います」と言う。

 「彼女はこれまでにも相談していて、初回の相談というわけでもない」と返すと「相談者に提案する支援のメニューも見せられないですし、親族以外の第三者は同席させられないというのが市の判断です」と言う。彼女は親族を頼れないから相談に来ているのに。

 根拠となる規定はなく、「市としてはDV防止法をそう解釈していて、根拠としてお見せできるものはない。書面にすることもできない」とも言われた。DV防止法には、行政が民間の支援者の同席のもと相談者の話を聞いてはいけないと書かれていないし、彼女はDVにより誰かに追われているような危険な状況ではないし、母子生活支援施設はDV防止法を根拠法とする施設ではなく「居所なし」「若年」などの理由でも入所することができるのに。

 ここまでのやりとりに、2時間掛かっていた。「もういいです。もういい。二人で話せば何か変わるんですか? 二人でしか話せないならそれでいいですよ」とA子が怒りと疲れの混じった表情で言った。子どもが産まれる前のA子だったらきっと、ここまで耐えることはしなかったと思う。これだけ嫌味を言われて、たらい回しにされ、待たされても、耐えているA子の姿に、それだけ家を出たい気持ちがあるのだと感じた。

 こんな対応はあってはならないが、A子が役所のスタンスを仕方なく受け入れることになった。

 緊急一時保護の申し込みをすることに

 個室に案内された彼女が15分くらいして出てきた。「詳しい状況を教えるように言われて、同じことを説明して、どういう希望をしているのか聞かれたから、今のバイトに通えるような場所で生活したいと言ったら、場所によっては職場に通えなくなるかもしれないけど、どこになるかは調整してみないと分からないし、門限があったり、友達や男性は入れなかったり、携帯を使えないところもあるけど、それでも申し込みをしますか?」と聞かれたと言う。

 またこの日は月の中旬で、母子生活支援施設への次の申し込みは翌月1日締め切り、入所は翌々月からになるため、それまでは「緊急一時」という形で入所できる施設を探すが、「本入所」できる施設はまた別の所になるかもしれないという説明を、聞きなれない言葉を使いながらされたという。

 彼女はアルバイトを希望していたので、一時入所先からさらに別の地域に移る可能性があると、就職先を探すこともできないと心配していた。それでも、保護されればお金の心配は必要なくなるため、私は「まずどんな所か行ってみて、もし合わないと思ったらまた他の選択肢も考えたら?」と提案して、彼女はまず家を出ることを選んで緊急一時保護の申し込みをすることになった。

   ここから私も相談に同席できることになった。2週間ほどで受け入れ施設を探すため、それまで家に戻って待機してほしいと言われ、手元にお金もないのに、その間の生活費や役所に来るまでの交通費については支援してもらえることのないまま、この日はA子も疲れ切っていて、帰宅することになった。

 母子生活支援施設の厳しい入所条件

 3日後、彼女から電話があった。

 「今日役所から電話があって、母子生活支援施設のことで話をしたいので近々来られますかと言われて、入れる所が見つかったんだと思って今日すぐに行ってきた。入所の手続きだと思って行ったら、入るには携帯没収、友達とか親戚とか、これまでの繋がりは一切断ち切って関係を整理すること。仕事にも行けない。子どもを私のママに会わせたくても地元に戻ってくることは許されない。地元からは遠い施設になる。一時保護の間、知人や支援者の人ともやり取りすることは一切できなくなる。地元を歩くことも禁止と言われた。

それでも入りたいかどうか、家族や友達、支援者には相談しないで自分一人だけで決めるように言われて、そんなんだったらもういいですと言って、申し込みを取り下げてしまった」と言う。

 彼女はまた公的支援を受けることを拒むようになり、家にいられない時はColaboや友達の家などを訪ね歩いている。また本人が必要とするタイミングが来たら、家を出るサポートをしたいと考えているが、今が好タイミングだったのに、と思う。もっと行政との連携ができていたら、と思う。

 制度や施設を必要としている人がいても、こうした対応から利用できずにいる人がたくさんいることを、役所などへの同行を通して日々実感している。

 入所のルールや制限はどうあるべきか?

 母子生活支援施設やシェルターは、DVなどから身を隠すようにして生活している方も入所するため、ある程度のルールや制限があることは理解できる。

 しかし、相談者が安心して相談できる環境を役所が作らない、相談をさせない、申請をさせない、施設を怖く厳しい所であるかのように「脅す」(そういう対応を受けた女の子たちが「脅された」と表現するのを聞いている)、どんな所であってもそこで生活する覚悟があるのかと迫る、これまでの繋がりを断たないと利用できないなど相談者を孤立させるようなことを言うなどして、制度を利用させない対応を再三目にしている。

 「せっかく入所させても、すぐに退所してしまう人がいるから」という相談員の声を聞いたこともあるが、そこでの生活が自分に合うかどうか、雰囲気はどうか、どこにあるか、どんなスタッフや利用者がいるか、どんな設備があるかなど、行ってみなければ分からないことの方が多い。合わなかった時に、相談者の失敗のような扱いを受けたり、面倒くさそうに迷惑そうに対応されたり、今後の支援を嫌がられることがあるが、相談者を責めるのではなく、別の施設や別の選択肢を提案できるようになってほしい。

 ルールや制限は管理のためではなく、利用者の安心安全や権利のためにあるべきだ。ある程度の制限があっても、一人ひとりが安心して入所できるように、相談者の状況に合わせて制限を緩くしたり、一定の約束のもとで携帯電話の使用や外出許可などの配慮を行ったりしている施設もある。この施設ならそうした対応をしてくれると分かっていても、施設への入所措置を決めるのは行政の判断になるため、私たち支援者が施設と関係を築くだけでは不十分だ。

 現実に起きていることを伝えたい

 役所では「施設側がそうした対応が可能だと判断するかは分からないため、窓口では一番厳しいことを言う」という話も聞いたことがある。が、そうであれば施設との入所調整を行う相談員が、相談者の希望や状況に合わせて、施設と交渉したり、相談者の不安を解消できるような説明をしたり、コミュニケーションをと取ったりすべきだ。そうしたスキルや知識、経験をもち、相談者に寄り添える良い相談員がいることも知っているが、相談に行った窓口で当初からそういう人に出会えることは、これまでにほとんどなかった。良質な相談員を確保するための待遇改善や研修の強化も必要だ。

 こうした対応の問題を指摘すると、関係機関に「あの支援者とは連携しにくい」と思われてしまうから、声を上げない方がいいと支援の関係者から忠告されることがある。施設関係者からは「相談員に相談者の利益のために動いてもらうためには、相談員の下手に出て相手を労ったり、どうしたらいいですか? と判断を委ねたりしてうまく動かすこと。相談中にイライラしそうになっても笑顔で、お願いする姿勢を忘れないように、とその子に伝えること」などとアドバイスされることも少なくない。

 でも、相談の現場はそんなに甘くない。施設側が、入所までにこんなに高いハードルがあることに気付いていないことも多い。だからこそ、こうして現実に起きていることを伝えたいと思った。

 相談者に変わることを求めるのではなく、支援の側が、必要としている人に利用してもらうために変わる必要がある。必要としている人がいたら、その人が安心して支援を受けられるようにサポートしてほしい。そして今回のケースでは、どこにも明文化されていないらしい「相談は1対1でしか受けられない」などのルールも、見直すべきではないだろうかとも感じた。