東京新聞 2019年12月11日
気候変動の現状に危機感を示し、地球温暖化対策に取り組む決意を表明する「気候非常事態宣言」をする自治体が国内でも出てきた。宣言は世界で千以上の国や自治体に広がっており、日本では長崎県壱岐市が九月に発表。十二月も長野県と同県白馬村が続いた。台風19号などの災害が相次いだことや、スウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさん(16)に刺激を受けた若者の行動も後押ししている。
「雄大な自然の恵みを受けてきた村だからこそ、行動を起こさなければいけない」。四日、ウインタースポーツの拠点で有名な白馬村。下川正剛村長が、村議会で宣言文を読み上げ、二〇五〇年に再生可能エネルギー自給率100%を目指すことや、温室効果ガスの排出抑制に取り組むことを約束した。
「パウダースノーを守りたいという一文が宣言にあって、私たちの思いが伝わったと感じた」と笑顔を見せるのは、白馬高校二年の宮坂雛乃さん(17)。持続可能な開発目標(SDGs)の勉強会に参加したのがきっかけで、同級生の金子菜緒さん(16)、手塚慧介さん(17)と行動を開始。宣言を出すよう村に求める街頭活動や、気候難民支援のチャリティーバザーを企画してきた。
暖冬の年が増え、先輩から「最近は雪が減った」と聞く。「スキーも白馬村の雪も好き」と金子さん。手塚さんは「楽しみながら続けるのが大事」と力みなく話す。
長崎県壱岐市SDGs未来課の小川和伸課長は「大雨による農地被害や、藻場の減少で漁獲量が半減するなど温暖化の影響を感じており、市長に危機感があった」と説明。認定NPO法人環境経営学会の提案を受け、宣言に至ったという。
台風19号で被災した長野県は今月六日に宣言を行い、都道府県の第一号に。福岡県大木町も準備を進めているという。十一月末には宣言を出すよう東京都に求める若者ら約六百人が都庁周辺を行進した。
環境経営学会の中村晴永理事は「自治体が宣言を出すことで、住民に呼び掛け、危機感を共有できる。日本でも広がりつつあるのは非常に良いことだ」と話した。
(東京新聞)
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政府が極め付けの後退姿勢を示す以上、自治体や民間が「宣言」することは極めて有意義なことです。
COP25inマドリード さよなら石炭火発
日本政府名指し「コール」
「しんぶん赤旗」2019年12月7日
【マドリード=小梶花恵】スペイン・マドリード市で開催中の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の会場入り口前で5日、途上国や日本のNGOが日本政府を名指しし、「さよならコール(石炭)」の声を響かせました。
日本政府はバングラデシュのマタバリ島やインドネシアなど途上国の石炭火力発電所建設に融資しています。
この行動では、安倍晋三首相の面をかぶったメンバーに向かって、二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電をやめるよう訴える場面もありました。バングラデシュのハサン・メヘディさんは「マタバリ島の6700人以上が発電所のために立ち退きを迫られているが、ほとんどの人は日本政府からの補償がない」と指摘。「温暖化で国土が沈み漁民は漁ができない。これが日本の石炭がもたらすものだ。私たちは日本政府に石炭火力発電をやめるよう強く求める」と訴えました。
インドネシアのムハンマド・レザさんは「日本の石炭火力で土壌が汚染し、住民は皮膚病などの健康被害を受けている。汚染を輸出するのをやめなければならない」と訴えました。
COP25inマドリード 石炭火力発電企業に融資
日本3銀行 上位独占
「しんぶん赤旗」2019年12月7日【社会】
年金も投資
【マドリード=遠藤誠二】ドイツの環境NGO(非政府組織)「ウルゲワルド」とオランダの同NGO「バンクトラック」は5日、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開かれているスペインのマドリードで、2017年1月から今年第3四半期までに、世界の民間銀行が石炭火力発電企業に1590億ドル(約17兆1700億円)融資し、うち日本の銀行が融資額で上位3位を独占したとする調査結果を発表しました。
融資銀行のトップ3は1位が、みずほフィナンシャルグループ(FG)(168億ドル=1兆8100億円)、2位が三菱UFJ・FG(146億ドル)、3位が三井住友銀行(79億ドル)。日本の銀行は全体の融資額の32%を占めます。
調査結果は今年、石炭火力発電企業に1922の機関投資家が2760億ドル投資したと発表。投資額1位は米国の資産運用会社ブラックロックの176億ドル。2位は日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の174億ドルで、国民の年金が地球温暖化促進のために使われている形です。上位10位のうち日本の投資家は4者。投資額全体に占める割合は米国の29%が1位で、日本は23%の2位。
ウルゲワルドのシュウキング代表は5日、「国連事務総長や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、世界中の気候科学者らが石炭火力発電の迅速な廃止を呼びかけているが金融機関は聞く耳も持たず、この3年間で総額7450億ドル(約80兆円)ものばく大なお金を新たな石炭火力発電所のために投融資しました」とコメントを発表。日本企業に対して「電源開発や関西電力などの電力会社だけでなく、丸紅、三菱商事、住友商事などによってオーストラリアからバングラデシュまで新しい石炭火力発電所が開発されているのを見るのは遺憾です」と述べています。