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生活保護クレーマーになす術なし!死体遺棄ケースワーカーの孤立職場&-27℃

2020年02月09日 | 事件

みわよしこ:フリーランス・ライター
 

死体遺棄ケースワーカーを
助ける人はいなかったのか
 2019年6月、京都府向日市の生活保護ケースワーカー・Y氏(当時29歳)が、死体遺棄容疑で逮捕された。現職の公務員による犯罪であるばかりではなく、その遺体はY氏の担当していた生活保護受給者・H氏(当時55歳)と同居していた女性のものであり、H氏が自分の担当ケースワーカーであるY氏を精神的に支配し、遺体遺棄をさせたという異様な関係にあったことから、事件は日本社会の関心を集めた。
 事件への関心は、同年7月の「京都アニメーション」スタジオ放火事件によって立ち消えた形となったが、その後捜査や取り調べが行われ、10月からはH氏・Y氏およびH氏と共犯したZ氏の公判が開始されている。Y氏の公判は12月に結審し、本年1月に判決の予定であった。しかし現在は、結審が3月初旬、判決は3月末の予定となっている。
 公判を通じて明らかになってきたのは、向日市の生活保護の現場の機能不全ぶり、各ケースワーカーの孤立、そして不適切な生活保護制度の運用であった。元暴力団員とされていたH氏は、実際には暴力団との縁を切っておらず、現役の暴力団員である疑いが濃厚であった。
 申請時点で暴力団を脱退していない場合、生活保護の対象とならないわけではないが、「すぐに保護しなくては生命に関わる場合に限る」など、厳しい制約が課せられている。保護費は暴力団の活動資金ではないからだ。しかしH氏は向日市で、生活保護で暮らすことができた。そして暴力団との関係を維持していた可能性があり、暴力的な言動や“洗脳“のような手法でY氏を支配していた。
 とはいえ、死体遺棄に関しては、Y氏は結果として手を染めた。被害と加害が入り組んだ状況を、どう読み解くべきであろうか。筆者の見方では、公判の現在の焦点もこの点にある。
 生活保護の現場と運用に詳しい吉永純さん(花園大学教授、社会福祉学)は、「担当者に任せていた」という点を、最大の問題として指摘する。
吉永さんは、20年以上にわたって京都市役所に勤務し、生活保護を含む福祉業務に携わってきた。その経験を踏まえて、次のように語る。
「Yさんが犯罪に追い込まれてしまった要因は、向日市が不当要求に対してあまりに無防備で組織的に対応できず、結果として、担当者であるYさんに任せっぱなしになっていたことにあると思われます」(吉永さん)

 行政には、時に不当な要求が行われる。正当な手続きや要請を行おうとする住民が、行政から「クレーマー」呼ばわりされることもある。しかし時に、事実として、一見「クレーマー」そのものの住民もいる。特に生活保護行政の現場は、「カネ」という生々しい存在を扱っている。時に正当な取り扱いを丁寧に説明されても、“逆ギレ“する受給者もいる。
生活保護支給の現場で
感情を揺さぶる「カネ」の話
 生活保護費に限らず、カネの話は感情を大きく揺さぶるものだ。特に生活保護費は、生死そのものや生死に近いレベルの判断や選択に関係することが多い。
「しかし向日市は、不当要求を受けることに関して、組織として無防備すぎたように思われます。生活保護行政を実際に行う場面にも、組織としての方針がなかったように見受けられます」(吉永さん)
 事実であるとすれば、まことに無政府主義的な職場だ。しかもその職場は自治体、すなわち地方政府である。その「無政府主義の地方政府」は、不条理劇の中の架空の存在ではなく、日本の現実だ。
 このような職場の“ヒラ”にとって最も有利な選択は、責任を負わず判断をせず、大過なく次の異動を迎え、その繰り返しで定年まで逃げ切ることであろう。
 しかしY氏は、市職員として生活保護ケースワーカーとして、可能な限り責任を果たすことを試みたようだ。
ケースワーカーの
せめてもの抵抗
 Y氏は、日々の多忙な業務とH氏からの圧迫のもとで、可能な限り具体的にケース記録を残していたことを、12月の公判で語っている。
 直属の上司であり生活保護業務の査察指導員である係長、および課長は、立場上「知りませんでした」とは言えない。そして、H氏による毎日2時間以上の電話と不当要求にY氏が苦しめられて精神的に追い込まれた経緯、そして死体遺棄で逮捕されたという結果からは、どう考えても「管理職が適切なマネジメントを行っていた」とは言えない。
 向日市の非常勤職員として、Y氏と共に生活保護の業務に就いていた元同僚のSさんは、匿名を条件に「私は、H氏が向日市で生活保護を申請する前に退職したので、Yさんの苦悩は想像するしかないのですが」と前置きしつつ、次のように語る。
「私が在職していたときは、ケースワーカーが5名、査察指導員(係長)1名、課長1名、面接相談員1名という、非常に小さな組織でした。電話で毎日何時間も対応を迫られる“困難ケース”に、上司や同僚が気づかないはずはありません」(Sさん)
 困難ぶりは、充分に推察されていたはずだ。ケースワーカーとしての多忙かつストレスフルな業務の中で、担当している生活保護世帯に関する記録を毎日残すことは、当然といえば当然なのだが、徹底されていない職場も多い。
 2018年7月、札幌市で障害を持つ60代女性が熱中症で死亡しているところを発見された事件では、担当ケースワーカーが長期間にわたって本人と対面できていなかった。女性は、電気料金を滞納して送電を停止されており、住まいに造りつけられていたクーラーを利用できなかったと見られている。
しかし、札幌市の福祉事務所は、ライフラインが停止している事実を把握していなかった。担当ケースワーカーも記録を残していなかったため、「訪問したけれども会えなかった」のか、それとも「訪問を試みず、したがって会わなかった」のか、いずれとも判断のつかない状態だった。
 ともあれ、記録を残すことは重要だ。

孤立と絶望に追い込まれて
それでも責任を果たしたあげく…
 元同僚・Sさんは、死体遺棄へと至ったY氏の思いを、次のように推測する。
「同僚たちが尻込みして彼ひとりを矢面に立たせていた構図は、あたかも、集団いじめを見て見ぬふりする『消極的ないじめ』のようです。彼の絶望感は、計り知れないものだっただろうと思います……。誰を責めるというのではありませんが」(Sさん)
 同じ課長・係長の下で働くY氏の同僚たちは、同じ立場で、同じように職場の病理に毒されていたはずだ。しかし管理職には、その状況に関する責任がある。
 向日市の生活保護の現場では、そもそもケースワーカー数が不足していた。社会福祉法が示す標準に従い、1人のケースワーカーの担当世帯を80世帯とする場合、ケースワーカーは5人必要である。しかし4人体制であったり、5人体制ではあるが新人が3人であったりする不安定な状況が続いた。事件が発生した2019年の1月、Yさんは110世帯を担当しながら、新人の教育係を務めていた。
 適切な人員配置を人事部門に働きかけ、実現を求めるのは、本来ならば管理職の仕事である。さらに、人数だけが揃っていれば良いわけではない。生活保護業務は、短期間で移動するケースワーカーが大多数の職場で行えるものでもない。
900ページにわたる生活保護の最低限のハンドブックの内容を頭に入れるだけでも、2~3年は必要であろう。都道府県による監査事項にも、「実施体制の確保」として「人員の不足がないか」「大半の異動がないか」という点が含まれている。
 さらに向日市は、実は現役の暴力団員であった可能性があるH氏を、そのまま生活保護の対象とし続けていた。H氏の不当要求を知りつつも、組織的に対応せず、Y氏に対応と責任を求め続けていた。
自治体のガバナンス欠如を
法廷は裁けるのか
 吉永純さんは、向日市が数多くの法令や規定に違反していた可能性に加えて、ガバナンスの欠如を指摘する。
 かつて吉永氏が在職していた京都市は、2007年に「京都市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定した。
「自治体職員に対する不当要求を行う人、法令に基づいて応じられない場合でも執拗に要望を繰り返す人は、時にはいます。職員が1人で対応していると、ストレスが溜まって心身共に疲弊し、屈してしまう可能性があります。ですから、組織をあげて毅然とした対応を行う必要がありますし、そのためのルールが必要なのです。それがなくては、職員は安心して職務につくことができません」(吉永さん)
 Y氏は、暴力団員に対するケースワークという「無理ゲー」を、いわば上司から「ネグレクト」された状態で強いられていた。その点からはY氏は被害者だが、結果として死体遺棄に加担している。
 この入り組んだ状況に関する判決は、3月末に示される見通しだ。
(フリーランス・ライター みわよしこ)


-27.4℃、今季ではなく、ここ数年で最も冷え込んだ日。

 朝トイレの水が出てきません。ポータブル石油ストーブをもってきて10分くらいで出てきました。江部乙の方も水は落としてあるのですが、どういうわけか出てきません。薪ストーブをどんどんたいてようやく出るようになりました。以前、トイレを凍らせたのは数年前の-24℃の時。-25℃を超えるのはほんと、しばらくぶりでした。