京都新聞 社説 9/23(月)
地球温暖化の被害を強く受ける世代の危機感を、重く受け止めねばなるまい。
全国の15~19歳の若者16人が先月、火力発電を手がける関西電力など10社を相手取り、二酸化炭素(CO2)排出削減を求めて名古屋地裁に提訴した。
若者たちは、被告の大手電力会社やその発電会社はCO2の国内最大級の排出事業者で、産業革命前からの世界の気温上昇を1・5度未満に抑えるというパリ協定などの国際合意を順守する義務を負っているとして、大幅削減を求めている。
子どもの頃から熱中症のリスクにさらされるなど、日常生活の制約を受けてきた。今後さらに過酷な影響を受けるだろう―。こう訴えている。
気候変動を巡る訴訟は従来、火力発電所建設や運転の差し止めなどを周辺住民が求めて争われてきたが、全国規模の集団訴訟は初めてである。
これまでは、過去の公害訴訟と違って原告側に明白な健康被害などが認められないなどの理由から、事実上の「門前払い」で退けられてきた。
今回の訴訟はCO2排出がもたらす気候危機とその悪影響を、「人権問題」として位置付けて争うのが特徴だ。
被告10社の排出対策は、パリ協定をはじめとする国際合意や国際ビジネス原則に対して不十分で、「民法上の不法行為」であると主張している。
「1・5度未満」を達成するには、より厳しく2019年比で35年に65%削減するよう専門家パネルが求めている。
重要なのは、これまでに排出された大量のCO2の累積が、気温上昇や災害を起こし、将来世代のエネルギー選択や生活様式、健康に不可逆的な影響を与えるという視点だろう。
同様の訴訟ではすでにオランダで、19年に最高裁が「気候変動による悪影響は人権侵害」と認定し、21年には同国ハーグ地裁が石油大手シェルに対し「企業の義務は軽減されない」として、排出削減を命じた。
今年4月にはスイスの住民が欧州人権裁判所に、スイス政府の気候変動対策の不十分さを訴えた裁判で、人権侵害が認められた。ドイツや韓国でも企業責任を認める判決が出ている。
日本は30年に13年比でCO2などを47%削減するとしているが、達成できるか不透明な状況だ。再生可能エネルギーへの転換も遅れる。
国の施策を言い訳に、企業は不作為を許される、という時代ではない。
誰もが安定した気候の下で健康的に暮らす権利がある。若者たちの訴えは、先進国の大量排出のしわ寄せを受ける発展途上国の訴えと通じる。
直接の利害を狭く捉えず、裁判所をはじめ社会全体で将来世代の訴えに耳を傾けて判断する必要がある。
わたしも応援していきたい。
園のようす。
今朝も最低気温更新。
イヌサフランが出てきました。
今咲いている花たち。