日刊ゲンダイデジタル 2021/09/09
国民が知らないデジタル庁の恐ろしさ(2)
「デジタルの利便性」という言葉に惑わされると、あっという間に個人のデータは吸い上げられ、プライバシーを奪われる。それを超える公共性があるというなら、最低限のルールが必要だ。きちんとした情報公開、国民によるチェック機能、そして、何よりも政治への信頼だ。それがない時にデジタルはファシズムの道具になる。近著「デジタル・ファシズム」(NHK出版新書)で警鐘を乱打した国際ジャーナリスト、堤未果さんの緊急寄稿第2弾。
◇ ◇ ◇
9月1日に発足したデジタル庁は、6日に官邸が開いた初の「デジタル社会推進会議」で、デジタル社会構築に向けた新重点計画案に、新型コロナウイルスワクチン接種歴証明のための電子式「ワクチンパスポート」を提案した。スマホアプリ搭載型で、提示すれば、県をまたぐ旅行や飲食店への入店制限が緩和される。感染拡大防止と国内経済再開が両立できる画期的計画だというが、本当にそうだろうか。デジタルという新技術を管轄する省庁の初事業としては、ツッコミどころが多すぎて、むしろ同庁の真の目的が見え隠れするような案件だ。
まずは周知の事実だが、ワクチンは重症化は防止しても感染拡大防止効果は期待できない。新しい変異株が次々と出ているのだからなおさらだ。無症状感染者の行動緩和が感染拡大を招く恐れが強い。
パンデミック下で死活問題になる情報の偏りも依然として根強い。ワクチン接種後に亡くなっている方々や、フランスをはじめ海外で頻発中の「ワクチンパスポート」に対する大規模抗議運動についての報道は一切なく、異物混入後も推奨を続ける政府と主要マスコミの報道姿勢に、国民の不安と不信感は増している。
任意接種を盾にデジタルデータで国民を二分し、政府が日常生活の規制を分ける〈ワクチンパスポート〉。そこにはアプリ開発の名の下に、2億5000万円もの税金が使われる。お友達企業が潤うだけでなく、パンデミックという危機を千載一遇とばかりに利用し、個人情報一元化を急がせるデジタル庁。その裏には効率を錦の御旗にして、公共を切り捨てていく〈デジタル管理型社会〉が見えてくる。
モスクワでは、ワクチンパスポートは国民の主権を奪うファシズム的手法だとする反対市民運動が湧き起こり、中止に追い込まれた。アメリカ12州でも同様の事例がある。日本人はこの辺の意識が希薄ではないだろうか。
もたつくデジタル庁を侮って、矛盾だらけの行動制限を容認すれば、衆院選後の憲法改正で〈緊急事態条項〉が現実化した時、国民は必ず後悔するだろう。忘れてはならないのは、デジタル社会は〈ファシズム〉と組み合わさった時、最も獰猛な牙をむくということだ。
だから、それをさせないよう国民が制限をかけておかなければならない。エストニアでは当局が個人情報にアクセスすると、ログイン履歴が残り、国民はそれを自由に閲覧できる。個人データの削除も可能だ。こうした監視が何よりも不可欠なデジタル庁の実態について、我が国では情報格差の厚い壁が障害になっている。利便性だけを宣伝され、無邪気に日本のデジタル化を急くことは、〈デジタル・ファシズム〉への入り口を開けることになりかねない。
ゆうちょ銀行と韓国の銀行が連携してする計画とは?
政権への「信頼」が不可欠だ。その裏に何かがある。
今日の天気予報では朝の一時期小雨というものだったがほぼ一日霧雨状の雨が降っていた。明日は晴れて暑くなる予報。