「朝鮮半島の完全な非核化」目標 共同宣言
毎日新聞2018年4月27日
【ソウル米村耕一】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、軍事境界線のある板門店(パンムンジョム)の韓国側施設「平和の家」で会談し、「完全な非核化により、核のない朝鮮半島の実現という共通の目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名した。宣言では1953年から休戦状態にある朝鮮戦争の「終戦」を今年中に目指すことや、両国に米国や中国を交えた多国間の枠組みで、平和体制の構築を協議する方針も示した。
南北首脳会談は10年半ぶりで、2011年12月に北朝鮮が金正恩体制に移行してからは初。金委員長は軍事境界線を越えて韓国に足を踏み入れた初めての北朝鮮の最高指導者となった。
宣言は朝鮮半島の非核化について「北側が取っている主導的な措置は朝鮮半島の非核化のために非常に意義があり、重要な措置」だと指摘。今月20日にミサイル・核実験の中止や核実験場の廃棄を決めた金委員長の判断を評価したものとみられる。
ただ、非核化に向けた具体的な方策は示されておらず、6月初旬までに開催予定の米朝首脳会談で、どこまで踏み込んだ合意に至るかが次の焦点。文大統領は5月中旬に訪米し、トランプ米大統領と今後の対応を協議する見通しだ。
宣言では「いかなる形態の武力も互いに使用しないとの不可侵合意を再確認」し、両国が共に軍縮を進めていくと表明。「両首脳の定期的な会談やホットライン」によるやりとりで、朝鮮半島の平和や統一に向けて努力していくとした。北朝鮮・開城(ケソン)に双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を設置することや、文大統領が今秋に北朝鮮・平壌を訪問することでも合意した。
宣言には日本人拉致問題への言及はなかった。
宣言署名後の共同発表で、文大統領は「完全な非核化に向けて南北が緊密に協力していくことを明確に宣言する。我々は今後、決して後戻りしない」。金委員長は「これまでの合意のように履行できないことがないように、膝を付き合わせ緊密に交流し、必ず良い結果が出るように努力するつもりだ」と述べた。
会談は融和的な雰囲気のなかで行われた。この日午前9時半、両首脳は軍事境界線をはさんで笑顔で握手を交わし、金委員長は徒歩で韓国入り。その後、文大統領は金委員長の勧めに応じ、手をつないで共に南北軍事境界線をまたぎ、北朝鮮側へと足を踏み入れた。韓国側の説明によると、文大統領が「私は、いつここを越えられるのでしょうかね」と言うと、金委員長が「では今越えてみますか」と勧め、2人で北朝鮮側に渡った。
首脳会談には、韓国側はイム・ジョンソク大統領秘書室長▽徐薫(ソ・フン)国家情報院長が、北朝鮮側は金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長▽金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が同席した。この日夜には平和の家で夕食会が開かれ、金委員長の妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏も出席した。
歴史の大きな発展である。宣言は「朝鮮半島にもうこれ以上の戦争はないとし、新しい平和の時代が開いたということを8000万の国民と全世界に重く、鮮明にした」と述べた。
金委員長は「歴史的な責任感を持って会談に臨んだ」、「この合意が、もう二度と死分化されないように、緊密に話し合いを行い、実を結ぶために努力する」と表明した。