2017年4月19日 藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事
毎日新聞【経済プレミア編集部・戸嶋誠司】
市場任せの住宅政策から「社会住宅」へ転換を
<会場から>私は今シェアハウスに住んでいて、建築士の人とよく話すんですけれども、結局、高い家賃、高い土地という前提でスタートしていて、家賃を下げるという話が業界にはなさそうです。これだけ空き家問題があるのに、家賃を下げようという意思がないことが不思議です。
藤田さん 日本の住宅政策は、決定的に失敗しています。市場任せなんですよね。本当はもう少し税を入れ、政府に住宅政策に介入してほしい。
「社会住宅」という考え方があります。企業や大家さんが低所得の人たちに家を貸す場合に、建設時に税を優遇する、あるいは、空き家を自治体が改修して公営住宅として使ってもらう、というシステムのことです。
大規模な公営住宅をどんどん造る時代じゃありませんから、今あるもの、ストックを利用して住宅を整備する方向への転換が必要だと思います。
また、家賃補助制度はもっと充実していていい。日本は持ち家制度で、持ち家の人には住宅ローン減税という不思議な優遇があります。家を買った人にはメリットがありますが、賃貸住宅居住者には何の減税もありません。
住宅が商品でなくなったら、かなり生活が楽になる人が出てくるんじゃないかと思います。特に、20代の若い人たち、たとえば18万円とか20万円の初任給でどのぐらいの家賃を払っているか。東京都内だとだいたい8万円とか9万円になってしまいます。収入の半分近くですよ。
日本の住宅政策は、ヨーロッパと比べて50~60年は遅れています。高度成長期は、ある程度賃金を渡せばなんとか住宅を手に入れられたので、国は住宅政策をやらなかったんでしょうか。そろそろ転換期を迎えていると思います。
編集部 実際、人口が減って空き家が増えているのに家賃が下がらないのはなぜかと思います。不思議な現象ですね。
◆それでもアパートやマンションがどんどん建ってますよね。大手のデベロッパーの方も、アパート造りませんかってやってますね(「空室リスク軽視」銀行アパートローン急増の危険)。もうアパート作らないでください(笑い)。
みなさんも政府や自治体に、低所得の人に貸すから税制優遇してよと、政策を求める声を上げていってください。そんな声が仕組みを変えます。
※政府は、地方自治体に登録された空き家・空き室に入居する際、国などが最大月4万円を家賃補助する新たな住宅セーフティーネット制度を作る方針。法案が今の国会で審議されている。
どうすれば増税が受け入れられるか
編集部 藤田さんは増税をして財源を増やし、それを社会保障などで手厚く配分すべきだという意見をお持ちですが、増税への忌避感が強いなか、どういう方法をとれば増税が受け入れられるでしょうか。
◆今日お集まりの皆さんはどうですか? 増税に賛成してくれますか? 賛成の人もいるようですが、たぶん少数派ですね(笑い)。大多数の人は反対じゃないでしょうか。
私たちが社会保障を求め、理想の社会を目指すのであれば、高齢化率も上がっていきますから、財源が足りません。給付を増やすためには財源が必要です。
そこで、税金を払ってもちゃんと返ってくる、支出を下げられるような政策が必要と思っています。税金を払い、その税金を原資にしたサービスを無償で受けられる社会を想像してください。北欧は税率が高いけれども、支出も下げられる。子育て世代は大学教育まで無償で、そのお金を貯金しなくて済みます。
声を上げないと社会の仕組みは変わらない
<会場から>73歳の父親ですが、娘が育児うつになりました。私も育児の手伝いに行って疲れ切っています。娘の夫は忙しくて、朝7時に家を出て帰ってくるのが夜の11時過ぎ。娘は初めての子供なのに手助けもなく、育児の悩みを誰にも相談できないで抱え込んでいます。しかも今から教育資金をためなくちゃいけないと悩んでいるんです。
先ほどおっしゃっていたダブルワークだトリプルワークをしなきゃ生きていけない世の中って、おかしいじゃないか、とんでもない世の中だと思います。今日はお話を聞いて勉強しようと思い、本も買いました。すみません、支離滅裂な発言でもしないと腹が立って収まらないので(会場から大きな笑いと拍手)。
◆本当におっしゃるとおりです。仕組みが全然追いついてないんです。このまま行くと、低賃金で長時間労働の男性が増え、家に帰って来られない。家事も育児もできない状況が続きます。娘さんにそのしわ寄せが来ていますね。
本来であれば、長時間労働を是正するのはもちろん、女性もちゃんと働きながら双方で家事育児を分担する仕組みができないといけない。最近は働き方改革が進み始めていますが、まだまだ議論が遅れていますね。私たちが税金の使い道も含めて、身近な人を助けるために、いろいろ要求していくことが大切だと思います。
<会場から>藤田さんと同世代の30代半ばです。同じ世代を見て、正直言ってすごく二極化していると思うんです。格差がすごく広がり、本人の能力の問題とは言えないような状況が生まれていると思います。年収もライフストーリーも変わって、見てる世界も違う。そのような絶望を藤田さんはどうやって乗り越えようとしているのでしょうか。
◆私も難しいと思っています。二極化が進んで、お金を持っている人はとことん持ち、圧倒的多数は下流に落ちている。30代半ばで年収2000万円の人もいれば、100万円、200万円稼ぐのが精一杯という方もいます。双方がわかり合えるかというと、なかなか難しい状況ですね。
ただ大切なのは、一生懸命働いて200万円しか稼げない人々が、なにも特別なことではないと、社会に向かって伝えることだと思うんです。その人たちを放置することが、社会経済的に損失だよと伝えていかないといけない。
金持ちと貧乏人、若者と高齢者、男性と女性、みんなが分断され、お互いにわかり合えないと諦めている状況ですが、ずっと諦めずにやっていくしかない。そのためには夢と希望が必要です。今日私が話した内容は夢と希望です。みんなで夢と希望をどんどん語りましょう、声を上げましょう。
「どんな人にも尊厳が必要だ」
編集部 最後に。英国のケン・ローチ監督の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を見てきました。社会保障給付を受けるために四苦八苦する59歳主人公の、最後のメッセージが心に残りました。「私は市民だ、犬ではない、敬意を払って接してほしい」という普遍的なメッセージでした。
◆そうですね、今は社会が逆の方向に向いています。経済的にちゃんと働いてることが人間として価値があり、働いていない人は無価値だ、と言われる社会です。
そこで、障害がある人は無価値ですか、人工透析をしている人は無価値ですか、若いのに生活保護を受けている人は無価値ですか、と私たちが抵抗できるかどうかが試されています。他者を無価値とレッテル貼りする社会がどこに向かうのか、歴史が証明しています。
どんな人にも価値がある、という社会をみなさんと一緒に構想していきたいですね。どうですか? まとまりましたか?(笑い)。
これから暗くなるまで仕事しなければなりません。更新時間もだんだんと遅くなりますがよろしくお願いします。
「青年の木」というらしいのですが、伸びて伸びて軽く私の身長を超えてしまいました。脇芽も出ずただ上に上にと伸びるだけで面白みがありません。
そこでバッサリと4等分にして、上の3つはミズゴケの瓶にさしてありますがまだ変化なし。一番下の根っこのついたやつが新たな芽を4つ出しています。
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こうなれば、と思い。