2019年11月12日 東京新聞社説
政府の検討会議で有識者が述べた意見の一部が、議事録に記載されていなかった。政府方針と異なる内容だ。都合の悪いことは公の記録から排除する安倍政権の異様な体質を指摘せざるを得ない。
不記載が明らかになった議事録は、政府が九月二十日に開いた全世代型社会保障検討会議の初会合のもので、十月四日に首相官邸のホームページで公開された。
一定以上の収入がある働く高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度について、政府は高齢者の働く意欲を損なっているとして見直しが必要としているが、有識者メンバーとして出席した中西宏明経団連会長は「経営者から見ると意欲を減退させることはない」などと発言した、という。
しかし、中西氏の発言のこの部分は議事録に記載されておらず、「(制度見直しによって年金財政が悪化するなどの)財源の問題もあるので、慎重に検討した方がいいのではないか」と述べた箇所だけが記されていた。
経団連側は異論部分の記載を要望したが、政府側は応じず、経団連側も最終的に了承したという。
国会審議に限らず、政府の審議会や諮問会議、検討会議など政策決定に関わる会議での発言内容を正確に残すべきは当然である。
さもなければ、その政策決定が正しかったかどうか、後々、検証できないからだ。会議の主宰者にとって都合のいい発言だけを残すのなら、議事録の体をなさない。
政府はなぜ中西氏の発言を議事録に記載しなかったのか。明確な理由は説明されていないが、政府の方針に反する発言を排除したと批判されても仕方があるまい。
政権にとって都合の悪い記録を廃棄したり、改竄(かいざん)するのは、中西氏の発言にとどまらない。
例えば、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊は現地での「戦闘」や「激しい銃撃戦」を日報で報告。政府は治安悪化を認識しつつも派遣期間を延長し、日報の情報公開請求にも当初、廃棄済みを理由に不開示としていた。
森友学園への国有地売却を巡る決裁文書では、安倍晋三首相や昭恵夫人、麻生太郎副総理兼財務相らの名前が削除されるなどの改竄が行われていた。
中西氏の発言不記載も、これまでと同様、首相らに対する官僚の忖度(そんたく)なのか。背景に、政権への異論を排除し、首相の意向一色に染め上げる政権の体質があるとしたら、限りなく根は深い。
このようなでたらめ政治、いつまでやらせるのだろう!?
明日の天気は大荒れ。今夜から明日昼過ぎまで雨で、その後雪に代わり、猛烈な風を伴う氷点下の模様。明日は全然仕事にはならない。そんなわけで、ハウスビニールを降ろしました。これでひとまず安心ですが、まだ雪の下にしたくないものが残っている。あまり積もらなければいいのだが。