古今の医家が葛根の薬性について言う時、生津か又は升津か、
論の分かれる所である。
筆者は葛根の性味は辛甘であり、酸甘ではないと思う。
だから滋陰生津の作用はないと思う。
所謂、「升津」とは胃気を鼓舞することにより、胃陽を升発し、
陽が升ると陰が動きだし、陰津が上部を潤すと消渇を治し、
経脈を濡潤するという効果に結び付くのである。
故に漢代の張仲景は葛根の辛甘升散の性を借りて
体内の津液を経輸に升入してその経を濡潤し、
太陽病の“項背強几几”を治したのである。
これを見れば葛根は升津であり、生津ではないと分かる。
故に温熱傷津か或いは陰虚火旺の証では盲目的に葛根を
選用してはならない。さもないと辛甘升散の葛根は
更に陰津を耗傷することになる。
「黄河医話」童増畢