鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

新開孝さんと「しわざ」さがし 2日目

2018-08-08 16:42:46 | 日記

 

 昆虫写真家 新開孝さんとの散策2日目。

この日は狭山丘陵にある里山公園へ。

昨日とひきつづき絵本作家のIさん、そしてレンジャーのKさんと私の夫も参加。

相変わらずの炎暑。

 しかしどうしても今日中にクリアしたい大事なミッションがある。

「いつでも撮れるから、そのうちちゃんと撮ろう」と思っている被写体って、あるもの。

そして、それがどうしても必要になる時がきて、ちょっと焦る。

新開さんにとってそのひとつが、母グモと卵、あるいは子グモがいる「カバキコマチグモの産室」だという。

時期的に今がちょうどいいらしい。

 

 公園に着くと駐車場でKさんが「2週間くらい前に、このオニグルミでスタッフがムラサキシャチホコの幼虫を

何匹か観ているんですよね」と。

「ええっーーー!!!」

今年1匹だけ見つけたムラサキシャチホコの幼虫が寄生が出てしまって、もう悔しいこと、悔しいこと。

Iさんと私は、まだ可能性あるかも、と探し続けていたのですが・・・・・・2週間前かあ。

何齢くらいだったのかにもよるけれど、もう蛹のステージにいっちゃってるかなあ。

この時期幼虫の成長は早い。

オニグルミの樹でオオミズアオの幼虫を見つけた新開さん。

まだこんな小さいのがいるんだ。

 

 「よっし!探そう」と勢い込んで探すも、ムラサキシャチホコの幼虫はみつからなかった・・・・・・。

  気を取り直して、本日のミッションに向かう。

 

 この暑さ、里山公園には私たちのほかに訪れる人もいない。

田んぼのヘリのススキを丹念に見ていくが、うーん・・・・・・「チマキ」はない。

 可能性のある個所をほぼ観終わって、最後のススキポイントへ。

あったー!!!

2つ。

 

カバキコマチグモは国内に生息するクモのなかでは最強の毒をもっているといわれている。

私の虫友も、好奇心から葉を巻いた「チマキ」を開けて、あっという間に噛まれ、

激痛と、手がグローブ状になっただけでなく、それから数か月間、だるさ、悪心、微熱など、体調が悪かった、

という。これを聞いて以来、私は「チマキ」には触らないようにしている。

 でもね、産室のなかの様子を撮影するには―開けるしかない。

 

まずはスケールを添えて外景を撮る。

 

こわい。

 

そして―

みんなが固唾をのんで見つめるなか、

新開さんがいちばん外側の葉をめくった。

すると、糸をはりめぐらした膜状のものが現れた。

そして、さらにこれを破ると―

出た―――!

おっきいーーー!

こわいーーー!

もうハラハラ、ドキドキしっぱなし

幸いにも、母グモは糸の膜の修復に忙しく、すぐ目の前の指を噛むことはなかった。

巣の奥には子グモがいっぱい

 

2つ見つかったもうひとつのほうも開けてみる。

カバキコマチグモは、母グモが子グモにその体を最初の食事として与える。

こちらの巣には、体液を吸い尽くされた母グモの体の残骸だけが残されていた。

 

炎天下でのスリル満点の撮影が終わり、ほっと。

里山の民家を模した休憩所の畳の上でお弁当&ごろり。

 

 メイン・ミッションをクリアしたので、ゆっくり休憩したあとは、のんびりと散策。

サブ・ミッションのエビイロカメムシも見つかった。

 

どっしりとしたクワカミキリ。

 

コスズメ幼虫。

 

樹液にはカナブンやクワガタやヨツボシケシキスイなどが

 

頭や体を樹皮の隙間につっこんで、一心不乱に樹液を吸っている。

 

ところで2日間新開さんと散策をして気が付いたのは、

ときどき見せる、こんな一見ぼーっとタイム。

 

でも、ハエトリグモ並みに虫目が8つぐらいありそうな「虫のしわざ探偵団団長」ですから、

きっと五感はフル活動して、まわりの環境を総合的に把握しているのでしょう。

 

 この日の最後を華々しく飾ってくれたのは、

新開さんが見つけたヤママユガの新成虫!

 

 

 

 

 

暮れなずむころ、窓の外をタマムシやトンボが飛ぶ「蜻蛉亭」で夕食。

ああ、 なんてぜいたくな2日間。

この夏のビッグイベントが終わり、私は今、ちょっとぼーっとしています。