触れたきと 風の願ひの かなひたる 汝が目の前に 生まれ来し我
*昨日がとてもきつい歌でしたので、今日はこれを選んでみました。かのじょの初期の作品です。ミクシィで発表したか、旧ブログで発表したものかもしれません。もしかしたら未発表かもしれない。まあ、ここからは確かめるすべもありません。
三句目が連体形で終わるのは、係り結びの省略形です。ゆえにそこに強い意味が発生します。
あなたに触れたいと、誰かの願いが風に乗って流れてきたので、その願いをかなえるために、わたしはあなたの目の前に生まれてきたのですよ。
なんとうるわしいのでしょう。これを、あの美しい人が詠んだのだということを想像してごらんなさい。かなり効くでしょう。
本当の美の女神とはこういうものですよ。美しいからと言って、お高くとまったりはしない。美しいあなたの姿を見たい、触れあって、恋をしてみたい、などという願いを聞けば、そうなのですかと笑って、かわいらしい美女の姿をまとって、この世界の男たちの前に生まれてきてくれるのです。
こんなかわいい愛があるということを、馬鹿な男は知らないのだ。だから、やっときてくれた本当の美女を見たとき、こんなものは嘘だと頭から思い込んで、みんなで攻撃して、殺してしまった。
愚かなどというものではありませんね。
何度も言われていることだが、これからも何度も言われることでしょう。永遠に、言われ続けることでしょう。イエスのことのように、事実は伝説となり、伝説は神話となり、物語となり、この世界で語り継がれていき、永遠に生きていくのです。
忘れられるはずがない。あなたがたはそれほど、愚かなことをしたのですから。
あまりにうるわしい歌だが、この世界には、だれもこれに歌を返せる男がいない。これはかなり痛いことですね。代わりに答えてあげたい。いずれあなたがたも、返歌をさしあげられるくらい成長することができるでしょうが、それを待っているのはつらいですね。やってみましょう。
春風を 絹におほひて 輿をなひ ゆふづつの君 むかへにゆかむ 夢詩香
春の風を絹で覆って輿をつくり、宵の明星のように美しいあなたを迎えに行こう。
理知的だが、わたしらしい。これくらいの表現はできるようにならないと、あんな人と恋をすることはできませんよ。