所用まで時間があったので、ふと、九十九里の砂浜に降り立つ。
夏の終わりの遅い午後の海岸…というものは、どうしてこうも1970年代の記憶を呼び覚ますのだろうか。
(♪砂山を…指で掘ってたら~~……はもっと古い記憶……)
寄せる波、引く波、時折生じる三角波…悠久変わることなく繰り返される海の営み。
♪寄せては返す波の鼓…長唄『岸の柳』の一節。
(岸の柳の前半の一節 ♪緑の髪に風薫る~~→エメロン♪振り向かないで~~につながるのが、ジャスト昭和な世代……)
岸の柳は初夏の風物を描くすがすがしい唄だけれど、もう晩夏の初秋で、見上げる空の雲は鱗。
……てなことがあった翌日の午前中、先週までは植木に水を遣るほか、寸時の滞在も躊躇するようなありさまだった日向のベランダに出てみたら、虫よけ網の向こうでブンブンと緑葉に取り掛かろうとするつわものがいた。
あらあらと、そのけたたましさに度肝を抜かれて、ただぼんやりと傍観していたら、枝に近寄れないまでも、網のクロス目に尻尾をつけて、卵を産んだ。極々小さい、透明な翡翠色の一粒。
ぁーーー………。
オオスカシバか、くちなしか。
またもやもたらされた、究極の二択。