惜しくもアカデミー賞受賞は逃したものの、かなり評価が高い映画『
イミテーションゲーム』を観てきました。
この映画は実話を基に作られているのですが、ベネディクト.カンバーバッチ演じる主人公の複雑で興味深い人物像に魅せられ、ご覧になった多くの方と同じように私も深く感動しました。
誰しも、特に思春期においては、「何故、自分はこんなにも他人と違うのだろうか。」と孤独感に苦しむのではないかと思いますが、主人公のアラン.チューリングの孤独はそんな生易しいものではありません。
天才であり、アスペルガー症候群(定かではありませんが、人とのコミュニケーションに問題があった)であり、ホモセクシュアルだったアラン.チューリングは、そのいずれの要素も一般人とはかけ離れていてそれゆえに素晴らしい業績を残したとも考えられますが、その孤独の深さは計り知れないのではないでしょうか。
第二次世界大戦のさなか、ドイツ軍との争いで苦戦を強いられるイギリス国でドイツのエニグマと呼ばれる暗号を解読するために国家の機密チームに参加した天才数学者チューリングは、その特異な性質により仲間とのコミュニケーションの断絶に苦しみながらも独自の機械を作り上げ、懸命に暗号の解読に取り組んでいきます。
映画は、エニグマの暗号解読を主軸にチューリングの現在、過去、を自由に行き来して彼の複雑で深い哀しみを感じさせる人物像をあぶりだしていくのですが、その中にエニグマの解読と言うスリリングな謎解き、チームメイトたちの人間模様、自分とかけ離れたものへの差別、戦争における国家と言うものの醜悪さなどを複雑に絡めて非常に見ごたえのある素晴らしい作品に仕上げています。
チューリングがホモセクシャルでありながらも、チームで唯一の女性ジョーンと心を通わせるシーンにはとても救われます、またジョーンのお蔭で他のチームメイトとも打ち解けることが出来て、そのことが暗号の解読と言う成功への道を作っていくのですから、やっぱり人は支え合って生きていくことが大切ですね。
ジョーンは彼がホモセクシャルであると知りながらも、共に人生を生きて共に何かを作り出そうと提案したのに、彼はその申し出を断るのですが、それは心の底からジョーンを大切に思っていたからなのでしょうか?
スパイの容疑を掛けられている自分といることがジョーンのためにはならないと思ったからなのでしょうか?
私としては、ジョーンと共に生きることが彼を救う唯一の道だったのでは、と思わずにはいられないのですが、、、。
そして、所々にちりばめられている、学生時代に唯一心を通わせることが出来た大切な友人であり初恋の相手クリストファーとの逸話が、哀しくも美しく、とても心に残ります。
コンピューターの概念を作ったと言われる巨大な暗号解読機にクリストファーと名前を付けていたことからも、彼の唯一であった大切な友人への思いの深さが感じられて胸が痛くなります。
結局チューリングが求めていたものは、エニグマ解読によってもたらされた戦争の早期終結による功績をたたえる栄誉などではなく、誰かにチューリング自身を受け入れてもらいたい、誰かと深く通じ合いたいと言う事だったのだと思うにつけ
哀しみが胸に広がっていきます。
最後のチューリングの言葉「クリストファー(機械の名称)を奪われる事には耐えられない、一人になるのは絶対に嫌だ。」と言うつぶやきが心を離れません。
ジョーンの「あなたが普通じゃないからこそ世界はこんなにも美しい。」と言う言葉がチューリングの胸にささやかでも幸せを与えてくれていたらと思ったのは私だけではないはずです。
さて、私の拙い感想では映画の魅力の十分の一も伝えられていないのですが、様々な要素が複雑に絡み合う重厚で素晴らしいこの映画をたくさんの方に見ていただきたいと思っています。
もちろん、ベネディクト.カンバーバッチの演技は最高です。
チームメイトと共にエニグマの解読に取り組む
暗号解読機クリストファー
一時はジョーンと婚約するのだが
戦争終結とともに、エニグマの解読と言う国家機密をすべて燃やして消滅させた
PS.映画があまりにも素晴らしくて複雑なため感想を書くのにとても苦戦しました、文章がどことなく緊張していて映画の魅力を十分にお伝えできなくてすみません
いつか、手直ししたいと思っています!