奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

植物を調べる コスズメガヤ

2021-08-01 15:03:36 | 植物を調べる
7月12日に近くの草地でイネ科の植物を採集してきました。名前を調べ、顕微鏡写真を撮ったままになっていたので、まとめて出しておきます。





調べたのはこんな植物です。7月12日の朝、近くにハナハマセンブリの花が咲いているので、撮影に行ったのですが、そのとき、近くに生えていたイネ科の植物です。最近、長田武正氏の「日本イネ科植物図譜」を購入したので、今まで分からなかったイネ科植物を調べ始めました。





小さな花(小花)の集まったものを小穂といいますが、幅はわずか1.1 mmしかありませんでした。小穂全体は包頴(ほうえい)という膜で覆われ、小花一つずつは護頴(ごえい)という膜で包まれています。それぞれ外側から第1、第2という風に番号付けされています。「日本イネ科植物図譜」の中ではイネ科全体を12群に分けて、調べていくことになっています。この植物の場合、次の特徴で区別されていきます。

①花序は頂生、特異な総包葉はない
②円錐花序をもつ
③円錐花序の枝ははっきりしていて全体が円錐花序であることがよくわかる
④小穂は3個~多数の小花からなり、包頴は最下小花と同長またはより短いので、小花の数は外から見てよくわかる
⑤小穂は無芒 第11群
⑥小穂はふつう多くの小花が2列に並び、護頴は3脈、果実は熟せば頴から抜け出して落ち、内頴だけが小軸上に残る スズメガヤ属 Eragrostis

①~⑤は群の検索表によるもので、上の写真からほぼ見て取れます。この植物の場合、第11群に入れられることが分かります。そこから先は絵を見ながら、似た植物を探していかなければいけないのですが、この植物の場合、⑥のように多くの小花が2列に並び、護頴は3脈というところから、スズメガヤ属Eragrostisであることが分かります。スズメガヤ属はこの図譜の中でも10種載っているので、調べるのが大変そうですが、この植物には特徴的な性質があります。









それはこの写真のように、包頴と護頴の竜骨上には円盤状の腺と呼ばれる構造があることです。さらに、小穂の柄には環状の腺があります。このような構造をもつものは、スズメガヤとコスズメガヤに限られます。さらに、スズメガヤは小穂の幅が2.5~3 mmもあり、幅が1.5~2 mmのコスズメガヤと大きさで区別できます。さらに、スズメガヤは小花の数も10~30個もあり、コスズメガヤの4~12個とはっきり区別されます。外見上もスズメガヤは小穂が密に分布している感じがしますが、コスズメガヤは上の写真のようにまばらに分布しています。ということで、今回調べた種はコスズメガヤE. minorだろうと思われます。これらの腺は悪臭を出すとのことですが、その理由はよくわからないようです。また、悪臭はスズメガヤの方が顕著とのことです。



倍率を上げて円盤状の腺を拡大してみました。



小穂を少し分解して、透過照明で撮ってみました。護頴に3脈があること、また、内頴のあることが分かります。中心にあるのは、まだ、育っていない子房だろうと思います。

というわけで、道端に生えているイネ科を調べてみました。今回は腺という特徴的な構造があるので、比較的に簡単に種まで到達できました。この属にはカゼクサやニワホコリなどよく見る種が含まれるので、今度見つけたら調べてみたいと思います。


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