奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

植物を調べる イヌホタルイ

2021-08-15 17:14:49 | 植物を調べる
この間から気になっていた植物を調べてみました。マンションのすぐ近くに小さな湿地があり、ガマやイなどが生えているのですが、その中に群がって生えている植物があります。残念ながら、柵があって中に入れないので、採取ができないのですが、この間、休耕田の横を歩いていたらそこにも生えていました。早速、採取して調べてみました。





マンションの近くの湿地に生えていた植物です。図鑑で見ると、ホタルイとか、イヌホタルイあたりが似ているのですが、柱頭が2分岐なのか3分岐なのかという点で見分けないといけません。それで、何とか採取して調べてみたいと思っていたら、別の場所の休耕田に生えていました。

今回、調べるときに用いた図鑑は、星野卓二、正木智美著、「日本カヤツリグサ科植物図譜」(平凡社、2011)です。非常に丁寧な線画で描かれていて、検索表も載っているので、大変使いやすそうな本です。残念ながら、まだ、検索表を追いかけていくほどよく分かっていないので、今回は参考程度に見ていきたいと思っています。

①痩果の鱗片は2枚以下
②少なくともいくつかの花は両性花
③小穂は多花で常に両性花
④花被片がある
⑤花被片は刺状か糸状
⑥小穂は通常多数
⑦花被片は4~6個以下で刺状
⑧鱗片は無毛または縁に繊毛がある
⑨茎は中実で、まれに節がある ホタルイ属
⑩有花茎は円柱形または不明瞭な稜がある
⑪有花茎の高さは1m以下、分花序に柄がない
⑫叢生し、匍匐根茎はない
⑬痩果の長さは約2mm
 ⑭a 小穂は狭楕円形で先が尖り、刺針状花被片の長さは痩果の約2倍 タイワンヤマイ
 ⑭b 小穂は広倒卵形、刺針状花被片の長さは痩果より長いか短い
  ⑮a 柱頭は常に3岐、痩果の断面は3稜形 ホタルイ
  ⑮b 柱頭は2岐、まれに3岐、痩果の断面はレンズ形
   ⑯a 有花茎の横断面は不明瞭な5ー6稜があり、柱頭は2岐、まれに3岐 イヌホタルイ
   ⑯b 有花茎の断面は4-5稜があり、柱頭は2ー3岐 シカクホタルイ

検索表ではこのような手順で検索を進めていきます。だいたいは分かるので、次回は検索表に沿って見ていこうと思うのですが、今回は最後の⑭~⑯のあたりを見て、似た種を区別していこうとも思います。



これは小穂の写真です。小穂は10 mmほどで、鱗片から顔を出している柱頭を見ると2岐になっていそうです。2岐か3岐かは痩果に2稜あるか3稜あるかで確かめることができます。そこで、後で痩果を見ることにします。



鱗片をはがすと中には黒っぽい痩果が入っています。



これは鱗片の拡大図です。鱗片には特に毛のようなものが生えていません。これは検索⑧の確認です。



これは痩果を横から見たものです。長い針状のものが花被片です。この長さが痩果の長さとほぼ同じところから、タイワンヤマイを除外することができます。痩果の先端には本来花柱がついているはずなのですが、取れて無くなっています。いくつか見たのですが、どれもついていませんでした。



これは痩果を上から見たところです。いわゆるレンズ形で、2稜しかないことが分かります。これで、ホタルイを除外することができます。



最後は茎の断面です。シカクホタルイはかなりはっきりした四角形をしているので、シカクホタルイも除外できます。ということで、イヌホタルイだけが残りました。



ついでに撮った写真です。これは小穂の中ほどにある鱗片をはがしたものです。まだ、雄蕊が入っていました。その間に花被片があることが分かります。



これは別の痩果です。花被片の長さを確認するために撮っておきました。

カヤツリグサ科の検索を初めて試みてみたのですが、何とかできそうな感じです。痩果がはっきりしていて、これを見るとある程度のところまで分かります。でも、カヤツリグサ科には最大の難関であるスゲ類が含まれているので、まだまだこれから先が大変です。


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