奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

植物を調べる タチスズメノヒエ

2021-06-28 10:28:00 | 植物を調べる
先日、長田武正著、「日本イネ科植物図譜」を購入したので、今までよく分からなかったイネ科を調べ始めました。この図鑑、手描きの図が丁寧で、イネ科全体を12群に分ける簡単な検索表が載っていて、また、種の同定のポイントも書かれているので、大変、役立ちます。今回は田んぼの脇にある休耕田に生えていたイネ科植物を調べてみました。



今回調べた植物はこんな格好の植物です。よく見かける植物だったのですが、名前が分からなかったので調べてみました。

①花序は頂生、特異な総包葉はない
②穂状花序または総状花序(有柄と無柄の小穂が双生し花軸上に並ぶ場合を含む)、あるいはそれらの花序が2個~多数集まってできた花序をもつ
③花軸は明らかに小穂より幅が狭い
④総(穂状花序と総状花序を合わせて総とよぶ)は2個~多数、稈頂またはその近くにほぼ手のひら状または放射状に集まり 第4群

イネ科全体を12群に分ける検索表ではこんな手順で調べていきます。①は特殊な花序を持つものを除外する項目で、今回は問題はありません。写真のような植物は穂状花序というようで、花軸は小穂よりは明らかに狭そうなので、②、③はすぐに分かります。さらに、④は穂がいくつかというのですが、パッと見ただけで10個以上はあるので、④もOKです。というか、パッと見、オヒシバやシマスズメノヒエに似た感じなので、それらが入っている群を探すと第4群にぶつかります。第4群にはメヒシバ属、オヒシバ属、スズメノヒエ属、オヒゲシバ属、アシボソ属、ウシヌケ属、ススキ属、及び、6種ほど含まれているので、ここからは一つ一つ見ていかないといけません。



花の部分を実体顕微鏡で拡大してみました。丸っこいのはイネ科の花で小穂(しょうすい)と呼ばれています。そこから出ている褐色のものが雄蕊、黒っぽいのが雌蕊で、全体に白い毛がいっぱい生えています。



小穂の一つを拡大してみました。中央にある太い脈(中央脈)が目立ちます。



一つの小穂を外してみました。すると、意外なことに2つが対になっていました。この2つを合わせて小穂といいます。基部についている方を第1小花といい、穂になっているときには陰に隠れたような状態になっています。先端についている方が第2小花です。この2つを合わせて小穂になっています。スズメノヒエ属はこのように2つの小花を持っているのが特徴で、第1小花は不完全で実ができません。さらに、イネ科の小穂では小穂全体を包む2つの包頴があるのですが、この植物では第1小花にある第2包頴だけで、第1包頴はありません。包頴の内側には小花を包む護頴があります。この植物では第1小花を包む薄い護頴と第2小花を包む頑丈な護頴があります。「日本イネ科植物図譜」によると、小穂の周りにこんなに長い毛があるのはタチスズメノヒエか、シマスズメノヒエに限られるとのことです。シマスズメノヒエは小穂が大きく、穂(総)の数が3-6本なので、すぐに見分けられます。ということで、これはタチスズメノヒエということになります。



第2小花を拡大してみました。長さは2.8mm。シマスズメノヒエは3-3.5 mmだそうです。



そして、これは裏側から見たところです。裏側は内頴で覆われています。



最後は葉を引っ張って、茎についている付け根の部分を見てみました。タチスズメノヒエでは大きな葉舌があります。


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