この間から、大和郡山市西部にある松尾寺に植物調べに行っています。スゲを見つけたのですが、名前が分かりません。それで、今回、検索表を用いて名前を調べてみました。

調べたのはこんなスゲです。スゲは似たような種が多くて、いつもスゲの仲間で済ませていました。でも、一度くらいはちゃんと調べてみようと思って、今回、チャレンジしてみました。スゲについては、勝山輝男著、「日本のスゲ増補改訂」文一総合出版(2015)と星野卓二ほか著、「日本カヤツリグサ科植物図譜」平凡社(2011)という本が手元にあり、共に検索表が載っています。今回は前者の検索表を用いることにしました。この本によると、日本産スゲ属植物は全部で269種、変種・亜種が18種、計288種もあるそうです。これらはいくつかの節に分けられているので、まずは節の検索を行います。
節への検索表
A 小穂は複数が穂状、総状、円錐状に配列する
B 花序は総状または円錐状、小穂は多少は柄があり、その基部に前葉がある
C 小穂は総状につき、前葉は筒状、小穂は単性または両性
D 柱頭は2岐、果実は2稜形
E 苞は有鞘
F 側小穂は雄雌性、秋咲き ナキリスゲ節
節の検索表に従って調べていくと、上のようにナキリスゲ節に到達しました。これを写真で確かめていきたいと思います。なお、検索表の順に写真を出していくと何度も同じ写真を出すことになるので、写真ごとにその写真に関係する項目を調べていきます。

最初は全景です。この写真から複数の小穂がついていることが分かります。穂状というのは小穂に柄が無くついている場合、総状は柄のある場合、円錐状は全体が円錐形になっている場合を言います。

穂を拡大したものですが、小穂には柄があるので、総状であることが分かります。これで検索項目のA及び、BとCの一部が確かめられました。

穂の基部は葉の鞘で覆われているのですが、それを剥がすと写真のような筒状の前葉が見られました。これでBとCもOKです。

次は小穂についてです。小穂の先端は茶色になっていて、よく見ると、雄蕊の葯がみられます。従って、先端部分は雄花ということになります。先端以外は細いひも状の柱頭が出ているので、雌花です。ということで、小穂は両性ということになり、先端が雄花、基部が雌花なので、雄雌性ということになります。写真は先日撮ったばかりなので、秋咲きです。

雌花は鱗片で覆われているのですが、それを外すと柱頭がついた果実が見られます。柱頭は2岐です。また、果実は紙面の手前側が盛り上がっているので、2稜形ということになります。

次は葉の基部のあたりの写真ですが、葉の基部は鞘になっています。それで、この項目もOKです。ということで、ナキリスゲ節になりました。
種への検索表
A 頂小穂は雄雌性、基部の鞘は伸長せず、葉身がある
B 柱頭は長さ2~3.5 mm、早落性
C 果胞は長さ2~4 mm、幅1~1.2 mm
D 果胞は長さ2~3.5 mm、やや短い嘴となる
E 果胞は広楕円形で長さ2.8~3.5 mm、幅1.2~1.5 mm、やや太い脈があり密毛
F 匍枝は出さず密に叢生、茎は高さ30~80 cm ナキリスゲ
次は種の検索です。先ほどの本の検索表を用いて調べた結果、ナキリスゲになりました。これも写真で確かめていこうと思います。

最初は頂小穂についてですが、側小穂と同様に雄雌性になっています。

次は葉の基部ですが、鞘は適当な長さがあり、葉身もあります。これでAが確かめられました。

次は柱頭の長さです。果胞の内部までは見えないのですが、後で寸法をお見せするように、果胞自体の長さが3 mm弱なので、柱頭はおそらく2~3.5 mmの範囲に入っていると思われます。早落性かどうかは分かりません。

次は果胞の寸法です。寸法は実体顕微鏡を用いて、スケールも一緒に撮影し、ImageJというソフトを用いて計測しました。果胞2つで計測しましたが、長さは2.7~2.8 mm、幅は1.2 mmでした。いずれも検索表に書かれた範囲内に入っています。というので、これらの項目も確かめられました。

果胞を生物顕微鏡に対物鏡10Xを取り付け、焦点位置を変えながら撮影し、深度合成を行いました。表面に太い脈があり、毛が密に生えていることが分かります。

最後は最初と同じ写真ですが、「匍枝は出さず密に叢生」していることが分かります。高さは測っていないのですが、おそらく30 cmくらいだったと思います。
ということで、すべての項目でおおよそ確かめることができたので、おそらく、ナキリスゲ節のナキリスゲであっているのではと考えています。
今回、初めてスゲ属の検索をしてみたのですが、頑張ればなんとかなりそうです。次回は別のスゲも調べてみたいと思っています。

調べたのはこんなスゲです。スゲは似たような種が多くて、いつもスゲの仲間で済ませていました。でも、一度くらいはちゃんと調べてみようと思って、今回、チャレンジしてみました。スゲについては、勝山輝男著、「日本のスゲ増補改訂」文一総合出版(2015)と星野卓二ほか著、「日本カヤツリグサ科植物図譜」平凡社(2011)という本が手元にあり、共に検索表が載っています。今回は前者の検索表を用いることにしました。この本によると、日本産スゲ属植物は全部で269種、変種・亜種が18種、計288種もあるそうです。これらはいくつかの節に分けられているので、まずは節の検索を行います。
節への検索表
A 小穂は複数が穂状、総状、円錐状に配列する
B 花序は総状または円錐状、小穂は多少は柄があり、その基部に前葉がある
C 小穂は総状につき、前葉は筒状、小穂は単性または両性
D 柱頭は2岐、果実は2稜形
E 苞は有鞘
F 側小穂は雄雌性、秋咲き ナキリスゲ節
節の検索表に従って調べていくと、上のようにナキリスゲ節に到達しました。これを写真で確かめていきたいと思います。なお、検索表の順に写真を出していくと何度も同じ写真を出すことになるので、写真ごとにその写真に関係する項目を調べていきます。

最初は全景です。この写真から複数の小穂がついていることが分かります。穂状というのは小穂に柄が無くついている場合、総状は柄のある場合、円錐状は全体が円錐形になっている場合を言います。

穂を拡大したものですが、小穂には柄があるので、総状であることが分かります。これで検索項目のA及び、BとCの一部が確かめられました。

穂の基部は葉の鞘で覆われているのですが、それを剥がすと写真のような筒状の前葉が見られました。これでBとCもOKです。

次は小穂についてです。小穂の先端は茶色になっていて、よく見ると、雄蕊の葯がみられます。従って、先端部分は雄花ということになります。先端以外は細いひも状の柱頭が出ているので、雌花です。ということで、小穂は両性ということになり、先端が雄花、基部が雌花なので、雄雌性ということになります。写真は先日撮ったばかりなので、秋咲きです。

雌花は鱗片で覆われているのですが、それを外すと柱頭がついた果実が見られます。柱頭は2岐です。また、果実は紙面の手前側が盛り上がっているので、2稜形ということになります。

次は葉の基部のあたりの写真ですが、葉の基部は鞘になっています。それで、この項目もOKです。ということで、ナキリスゲ節になりました。
種への検索表
A 頂小穂は雄雌性、基部の鞘は伸長せず、葉身がある
B 柱頭は長さ2~3.5 mm、早落性
C 果胞は長さ2~4 mm、幅1~1.2 mm
D 果胞は長さ2~3.5 mm、やや短い嘴となる
E 果胞は広楕円形で長さ2.8~3.5 mm、幅1.2~1.5 mm、やや太い脈があり密毛
F 匍枝は出さず密に叢生、茎は高さ30~80 cm ナキリスゲ
次は種の検索です。先ほどの本の検索表を用いて調べた結果、ナキリスゲになりました。これも写真で確かめていこうと思います。

最初は頂小穂についてですが、側小穂と同様に雄雌性になっています。

次は葉の基部ですが、鞘は適当な長さがあり、葉身もあります。これでAが確かめられました。

次は柱頭の長さです。果胞の内部までは見えないのですが、後で寸法をお見せするように、果胞自体の長さが3 mm弱なので、柱頭はおそらく2~3.5 mmの範囲に入っていると思われます。早落性かどうかは分かりません。

次は果胞の寸法です。寸法は実体顕微鏡を用いて、スケールも一緒に撮影し、ImageJというソフトを用いて計測しました。果胞2つで計測しましたが、長さは2.7~2.8 mm、幅は1.2 mmでした。いずれも検索表に書かれた範囲内に入っています。というので、これらの項目も確かめられました。

果胞を生物顕微鏡に対物鏡10Xを取り付け、焦点位置を変えながら撮影し、深度合成を行いました。表面に太い脈があり、毛が密に生えていることが分かります。

最後は最初と同じ写真ですが、「匍枝は出さず密に叢生」していることが分かります。高さは測っていないのですが、おそらく30 cmくらいだったと思います。
ということで、すべての項目でおおよそ確かめることができたので、おそらく、ナキリスゲ節のナキリスゲであっているのではと考えています。
今回、初めてスゲ属の検索をしてみたのですが、頑張ればなんとかなりそうです。次回は別のスゲも調べてみたいと思っています。
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