この間から、大和郡山市内で植物調べをしているのですが、名前調べの難しいカヤツリグサ科に少しずつ入り始めました。今日はヒデリコとテンツキです。これまで、丸っこい小穂のあるのがヒデリコ、長細いのがテンツキと覚えていたのですが、星野卓二ほか著、「日本カヤツリグサ科植物図譜」(平凡社、2011)を見ると、ヒデリコやテンツキを含む日本産テンツキ属は実に28種も載っていることが分かりました。これはちゃんと調べないといけないなと思って、この本に載っている検索表を用いて検索をしてみました。
ヒデリコだと思っていたのはこんな植物です。道端でよく見かける植物です。点々と見えているのが小穂です。この小穂が丸っこいとヒデリコだと思っていました。「日本カヤツリグサ科植物図譜」に載っているテンツキ属の検索表でヒデリコであることを確かめるには次の各項目を調べないといけません。
A 小穂は扁平とならない、鱗片は螺旋状につく
B 痩果は広倒卵形~倒卵形
C 花柱は扁平とならず、無毛かわずかに毛がある
D 鱗片の先端は凹端にならない
E 葉身は発達しない
F 小穂は多数
G 柱頭は3岐、痩果は3稜形 ヒデリコ
それで、各項目を写真で確かめていこうと思います。なお、検索順にすると同じ写真を何枚も出さないといけなくなるので、写真に関連する項目をまとめて書いたので、一緒に見ていきたいと思います。
まず、小穂についてです。この写真から小穂が扁平でないことはすぐに分かります。また、小穂の周りについているは鱗片ですが、先端に向かって整列していないので、螺旋状というのでしょう。これでAはOKです。次は鱗片の先端が凹かどうかですが、チャイロテンツキやイッスンテンツキでは鱗片の先端近くがやや凹み、真ん中の中肋が突き出しています。写真では分かりにくいのですが、そういう形ではないので、これもOKとします。
鱗片をはがすと中からこんな形のものが出てきます。黄色い部分が痩果、そこから花柱が突き出し、先端が3つに分かれた柱頭になります。また、痩果の基部から2本の雄蕊が出ています。花柱が扁平かどうかはこの写真では分かりにくいのですが、以上のような観察から書かれている項目はすべてOKとしました。
これは花柱の先端部分を拡大したものです。ここまで拡大する必要がなかったのですが、花柱の先端部分には少しだけ毛が生えています。これでCはOKです。
Eの葉身は発達しないというのは初めどういう意味かよく分からなかったのですが、ヒデリコの説明を読むと、「無葉身の鞘がある」と書かれているので、もう一度、調べに行きました。たぶん、矢印の部分のように葉身が伸びていないことを言うのではないかと思いました。
この写真を見ると、小穂がたくさんあることが分かります。これでFもOKです。
これは痩果を拡大して撮影し、深度合成したものです。矢印で示すように3稜がありそうです。これで、ヒデリコに至る検索の項目はすべてクリアしたので、おそらくヒデリコで間違いないと思ってよさそうです。決め手は、花柱が扁平でなく、葉身が発達しないで、柱頭が3つに分かれるというところですが、おそらく、丸っこい小穂がいっぱい出ていたら、ヒデリコと思って間違いなさそうです。
検索には必要がなかったのですが、小穂と痩果の寸法も測っておきました。ちなみに本では、小穂が長さ2.5~3.5 mm、幅1~1.5 mm、痩果が長さ約0.6 mmになっていました。当たらずと言えども遠からずという感じです。
次はテンツキっぽい植物の方です。この写真を見ると、小穂がヒデリコより長細いことが分かります。大きさもやや大きいです。これも検索表で調べてみました。
A 小穂は扁平とならない、鱗片は螺旋状につく
B 痩果は広倒卵形~倒卵形
C 花柱は扁平状となり上部は有毛
D 葉は有花茎の基部につく
E 中型から大型の一年草~多年草、小穂の幅は2-7 mm、
痩果の長さは1-1.2 mm
F 痩果の表面に格子紋がある
G 小穂は長さ4-8 mm
H 一つの枝に1個の小穂をつける テンツキ
検索表で調べていくと、テンツキそのものになりました。これも写真で確かめていきたいと思います。
ヒデリコの場合と同じですが、まず、小穂の形から見ていきます。小穂は扁平ではなく、鱗片が先端に向かって規則正しくついているわけではないので、螺旋状といってよいのでしょう。小穂の長さや幅はこの範囲に入っています。共にOKとします。
鱗片を向いたら中から出てきた痩果です。これを見てまず気が付いたのは花柱が扁平なこと、それに痩果は格子状になった模様があることです。それにヒデリコとは異なり、柱頭は2岐です。
Cの花柱の上部に毛があるというのが分かりにくかったので、ちょっと拡大してみました。確かに毛があります。また、この写真から花柱が扁平なことがよく分かります。
痩果を拡大してみました。綺麗な格子紋があります。
検索には必要はないのですが、生物顕微鏡を用いてさらに拡大してみました。びっくりするほど綺麗な構造ですね。
次は痩果の大きさです。長さを測ってみると、検索表の値より少し大きかったのですが、この項目は長さ0.5~0.7 mmという、より小さい痩果を持った種を除外する項目だったので、良しとしました。
葉は先ほどのヒデリコと比較すると、矢印で示すように葉身が普通に伸びています。
写真を撮るために一株抜いてみました。かなり大きな感じがします。また、1年草のような根をしています。ということで、EもOKでしょう。
最後はHで、これはオホーツキテンツキとクグテンツキを除外する項目です。これらの種では枝の先に2~3個の小穂をつけています。ということで、これもOKでしょう。
ということで、期せずして普通のテンツキに落ち着きました。一度、こうやって調べておくと、テンツキ属の違う種があった時にも気が付きやすいのではないかと思います。
ヒデリコだと思っていたのはこんな植物です。道端でよく見かける植物です。点々と見えているのが小穂です。この小穂が丸っこいとヒデリコだと思っていました。「日本カヤツリグサ科植物図譜」に載っているテンツキ属の検索表でヒデリコであることを確かめるには次の各項目を調べないといけません。
A 小穂は扁平とならない、鱗片は螺旋状につく
B 痩果は広倒卵形~倒卵形
C 花柱は扁平とならず、無毛かわずかに毛がある
D 鱗片の先端は凹端にならない
E 葉身は発達しない
F 小穂は多数
G 柱頭は3岐、痩果は3稜形 ヒデリコ
それで、各項目を写真で確かめていこうと思います。なお、検索順にすると同じ写真を何枚も出さないといけなくなるので、写真に関連する項目をまとめて書いたので、一緒に見ていきたいと思います。
まず、小穂についてです。この写真から小穂が扁平でないことはすぐに分かります。また、小穂の周りについているは鱗片ですが、先端に向かって整列していないので、螺旋状というのでしょう。これでAはOKです。次は鱗片の先端が凹かどうかですが、チャイロテンツキやイッスンテンツキでは鱗片の先端近くがやや凹み、真ん中の中肋が突き出しています。写真では分かりにくいのですが、そういう形ではないので、これもOKとします。
鱗片をはがすと中からこんな形のものが出てきます。黄色い部分が痩果、そこから花柱が突き出し、先端が3つに分かれた柱頭になります。また、痩果の基部から2本の雄蕊が出ています。花柱が扁平かどうかはこの写真では分かりにくいのですが、以上のような観察から書かれている項目はすべてOKとしました。
これは花柱の先端部分を拡大したものです。ここまで拡大する必要がなかったのですが、花柱の先端部分には少しだけ毛が生えています。これでCはOKです。
Eの葉身は発達しないというのは初めどういう意味かよく分からなかったのですが、ヒデリコの説明を読むと、「無葉身の鞘がある」と書かれているので、もう一度、調べに行きました。たぶん、矢印の部分のように葉身が伸びていないことを言うのではないかと思いました。
この写真を見ると、小穂がたくさんあることが分かります。これでFもOKです。
これは痩果を拡大して撮影し、深度合成したものです。矢印で示すように3稜がありそうです。これで、ヒデリコに至る検索の項目はすべてクリアしたので、おそらくヒデリコで間違いないと思ってよさそうです。決め手は、花柱が扁平でなく、葉身が発達しないで、柱頭が3つに分かれるというところですが、おそらく、丸っこい小穂がいっぱい出ていたら、ヒデリコと思って間違いなさそうです。
検索には必要がなかったのですが、小穂と痩果の寸法も測っておきました。ちなみに本では、小穂が長さ2.5~3.5 mm、幅1~1.5 mm、痩果が長さ約0.6 mmになっていました。当たらずと言えども遠からずという感じです。
次はテンツキっぽい植物の方です。この写真を見ると、小穂がヒデリコより長細いことが分かります。大きさもやや大きいです。これも検索表で調べてみました。
A 小穂は扁平とならない、鱗片は螺旋状につく
B 痩果は広倒卵形~倒卵形
C 花柱は扁平状となり上部は有毛
D 葉は有花茎の基部につく
E 中型から大型の一年草~多年草、小穂の幅は2-7 mm、
痩果の長さは1-1.2 mm
F 痩果の表面に格子紋がある
G 小穂は長さ4-8 mm
H 一つの枝に1個の小穂をつける テンツキ
検索表で調べていくと、テンツキそのものになりました。これも写真で確かめていきたいと思います。
ヒデリコの場合と同じですが、まず、小穂の形から見ていきます。小穂は扁平ではなく、鱗片が先端に向かって規則正しくついているわけではないので、螺旋状といってよいのでしょう。小穂の長さや幅はこの範囲に入っています。共にOKとします。
鱗片を向いたら中から出てきた痩果です。これを見てまず気が付いたのは花柱が扁平なこと、それに痩果は格子状になった模様があることです。それにヒデリコとは異なり、柱頭は2岐です。
Cの花柱の上部に毛があるというのが分かりにくかったので、ちょっと拡大してみました。確かに毛があります。また、この写真から花柱が扁平なことがよく分かります。
痩果を拡大してみました。綺麗な格子紋があります。
検索には必要はないのですが、生物顕微鏡を用いてさらに拡大してみました。びっくりするほど綺麗な構造ですね。
次は痩果の大きさです。長さを測ってみると、検索表の値より少し大きかったのですが、この項目は長さ0.5~0.7 mmという、より小さい痩果を持った種を除外する項目だったので、良しとしました。
葉は先ほどのヒデリコと比較すると、矢印で示すように葉身が普通に伸びています。
写真を撮るために一株抜いてみました。かなり大きな感じがします。また、1年草のような根をしています。ということで、EもOKでしょう。
最後はHで、これはオホーツキテンツキとクグテンツキを除外する項目です。これらの種では枝の先に2~3個の小穂をつけています。ということで、これもOKでしょう。
ということで、期せずして普通のテンツキに落ち着きました。一度、こうやって調べておくと、テンツキ属の違う種があった時にも気が付きやすいのではないかと思います。
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