物造庵 ものつくりあん ナラ(楢崎賢)

ものつくり人「ナラ(楢崎賢)」による
絵や作品の制作過程、自作詩の発表、その他徒然…

空はいつだって僕を受け入れてくれる

2009年11月16日 06時16分15秒 | 僕は空を見ている







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詩388「私詩」

2009年11月16日 05時19分24秒 | 自作詩

あなたとはろくな思い出がありません。
あなたのようにはなりたくなかった。
あなたのようにだけはなるまいと生きてきた。
後姿が似ていると言われ嫌だった。
歩き方が似ていると言われ嫌だった。
笑った口の形が似ていると言われ嫌だった。
性格が似ていると言われ嫌だった。
あなた自身が言った。
お前が一番俺に似ている。
苦笑いをしながらも頭では強く否定していた。
鏡を見てあなたに似た顔を発見しひどく焦った。
あなたに似ていく自分の変化を食い止めたかった。

あなたの亡骸を前にして僕は悲しくはなかった。
あなたの痩せて細った顔は。
骨格からなにから僕にそっくりで吃驚した。
自分の死に顔を眺めているようだったが。
不思議と嫌な気持ちは欠片さえなかった。
あなたの最後の言いつけを母から聞いた。
僕の知らないあなたの話を母から聞いた。
僕の思考に。
僕の性格に。
似ていると思ったが、嫌ではなかった。
何故だろう。
あなたは死んで僕の中に入った。

あなたは自分の意思で死んだことを僕は理解する。
最後まで我がままを通したことを知っている。
自分で全部を決め周りに迷惑をかけないという我がままを。
この顔と同じ穏やかで平安な心で逝ったことを。
悔いは一つとしてなかったことを。
あなたから一番遠く、あなたに一番似ていた僕は。
あなたの気持ちをよく理解している。
だから僕は悲しくなかった。
悲しむべきときではないのだ。
ただ其処に死があるだけだ。
生きている人のほうが大事にされるべきだとあなたは言うだろう。
僕も僕が死んだときには悲しんで欲しくはない。
だから僕は悲しくない。
悲しまない。
僕が泣いたら誰が泣かないでいられるのか。
安心してください。
母をひとりにはしません。
あなたの死の報を聞いて最初に思ったのはそのことだった。
あなたと同じようには生きない。
あなたと同じようには死なないが。
あなたは確実に僕の中にいて。
僕はそれを喜びさえ持ち受け入れる。
あなたは僕の重要な一部分となった。
あなたは死んで海に行ったな。
僕は死んだら森へ行こう。
あなたと共に。

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