青疎らに

川上弘美 『風花』

主人公のはかなさと弱さと、でもその裏返しにある鈍さと不器用さと、でも繊細で傷つきやすく、でも飄々と生きていける強かさなどなどごちゃごちゃな人間性が、読み終わる頃によく見えてくる。人ってみんなそのような定まらなさを持っていると思う。きっと川上弘美本人とダブるものもあるのだろうな。
細かく書かないことで描写する文章がぴったりきて好きだ。

シャッターに描く １１

詩８０５「ぼんやりと」

ぼんやりとした光纏って。
ぼんやりとした魚が泳ぐ。
ぼんやりとした口あけて。
ぼんやりとした水を呑む。
ぼんやりとした世界の中で。
ぼんやりとした交尾して。
ぼんやりとした義務と責任。
ぼんやりとした魚の一生。
ぼんやりとした死を待って。
ぼんやりとした今が過ぐ。