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ロバート・ゼメキス監督がロアルド・ダールを映画化、と聞いて師匠筋のスピルバーグがやはりダールの『BFG』を撮った時のような巨匠の余戯を想像したが、意外やフタを開けてビックリだ。舞台は1960年代のアメリカ南部。両親を亡くした黒人少年が祖母の元に引き取られと、かつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマイケル・J・フォックスにチャック・ベリーを盗ませ、『フォレスト・ガンプ』で公民権運動を無かった事にしたゼメキスが初めて黒人主役の映画を撮っているではないか!!
(『フライト』のデンゼル・ワシントンは人種について言及のない役であり、人種を超えた類稀なスターなのでここではカウントしない)。
これだけでも『魔女がいっぱい』はゼメキスという作家を語る上で素通りできない重要作だ。製作にギレルモ・デルトロが加わっていることも無視できない要素だろう。彼がこれまで描いてきた異形の者への偏愛は、子供をネズミにして踏みつぶす事を生きがいとする魔女が、意外や人の世に生きづらさを抱えているというダールらしいペーソスに相通ずるものがある。祖母役にはオスカー受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』にも出演したオクタヴィア・スペンサーが扮し、その愛嬌ある存在感で映画にファニーな魅力をもたらしている。
(『フライト』のデンゼル・ワシントンは人種について言及のない役であり、人種を超えた類稀なスターなのでここではカウントしない)。
これだけでも『魔女がいっぱい』はゼメキスという作家を語る上で素通りできない重要作だ。製作にギレルモ・デルトロが加わっていることも無視できない要素だろう。彼がこれまで描いてきた異形の者への偏愛は、子供をネズミにして踏みつぶす事を生きがいとする魔女が、意外や人の世に生きづらさを抱えているというダールらしいペーソスに相通ずるものがある。祖母役にはオスカー受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』にも出演したオクタヴィア・スペンサーが扮し、その愛嬌ある存在感で映画にファニーな魅力をもたらしている。
見所は何と言っても魔女役のアン・ハサウェイだ。ゴージャスな外見は世を忍ぶ仮の姿。その正体は耳元まで口が裂け、手足はカギ爪、頭はカツラで醜くかぶれた怪物だ。CGと特殊メイク、へんてこなアクセントをフル活用しての怪演は『永遠に美しく…』よろしく、大女優への道に課せられた伝統芸か。もっとも、彼女にはそろそろ『ブロークバック・マウンテン』や『レイチェルの結婚』で見せたチャレンジングな演技を期待しているのだが。
先頃、ダールの生前におけるユダヤ差別発言を遺族が公式に謝罪する一幕があった。本作の原作は未読だが、ダールのブラックなユーモアを活かしつつ、Black Lives Matterへの巧みな置き換えに脚色陣の原作に対する愛と知性が感じられた。それはダールのみならず、ゼメキスをもキャンセルカルチャーから次のフェーズに進ませるのではないだろうか。
『魔女がいっぱい』20・米
監督 ロバート・ゼメキス
出演 アン・ハサウェイ、オクタヴィア・スペンサー、スタンリー・トゥッチ、クリス・ロック
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