2007年に公開され、大ヒットを記録した『魔法にかけられて』はディズニー映画のセルフパロディと、2005年に『Junebug』でアカデミー助演女優賞にノミネートされてはいたものの、ほとんど代表作のない遅咲きエイミー・アダムスによるディズニープリンセスの徹底模写が衝撃的な1本だった。この作品をきっかけに大ブレイクを果たしたアダムスはその後、主演助演合わせて計5度のオスカーノミネートを数えるアメリカ映画界屈指の名優へと成長。今年48歳を迎えた彼女が15年ぶりに出世作の続編に挑んだが、しかしいくらなんでも遅すぎだ。
前作から数年後、ロバート(お久しぶりのパトリック・デンプシー)とジゼル姫は郊外の田舎町モンローヴィルへと引っ越してくる。ロバートの連れ子モーガンは反抗期真っ只中のティーンエイジャーで、ママ友マルヴィナ・モンロー(ノリノリのマヤ・ルドルフ)は町の顔役とも言うべき存在で当たりがキツい。現実社会の困難にさらされたジゼルの元にアニメ王国アンダレーシアからエドワードとナンシーが何でも願いの叶う“魔法の杖”を持ってきて…。
ディズニーが標榜してきた“プリンセス像”を巧みに脱構築しながら、現代人がそこへ寄せるロマンチシズムを肯定した前作の機知を再現するには至っておらず(20分も長くなったランニングタイムからも不明ぶりは明らかである)、理想の王子様と結ばれてめでたしめでたし…の先を描くには踏み込みが足りない。アダムスの器用さを持ってすれば容易に前作のフィーリングを再現できるかもしれないが、15年を経て描くべきはお姫様ではいられない現実社会とそれでもファンタジーを夢見ずにはいられない肯定だろう。アニメーション世界から現代社会へとやってきたジゼル姫がディズニープラスの会員数と株価のためにストリーミング荒野に打ち捨てられたのはあまりに空しい。信じられない事に前作では歌っていなかったナンシー役イディナ・メンゼル(『アナと雪の女王』のエルサ役だなんて説明、いる?)が面目躍如で、アラン・メンケンとスティーブン・シュワルツによる楽曲を熱唱。真のプリンセスは彼女かもしれない。
『魔法にかけられて2』22・米
監督 アダム・シャンクマン
出演 エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、イディナ・メンゼル、マヤ・ルドルフ、ガブリエラ・マルダッチ
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