長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『キャッツ』

2020-02-08 | 映画レビュー(き)

 そんなに目くじらを立てる事もないだろう。イギリスの詩人T・S・エリオットの『キャッツ~ポッサムおじさんの猫とつき合う法』にアンドリュー・ロイド・ウェバーが曲を付けたミュージカルは、劇団四季によって日本でも人気の演目だ。猫たちが新たな生命への転生を望み、選ばれし一匹になろうとするこの話にストーリーらしいストーリーはない。個性的な猫たちが次々と歌を披露し、我こそはと競う一夜の宴に過ぎないのだ。“話がない”とケチをつけるのは筋違いだろう。

 『キャッツ』は演劇の嘘でこそ成り立つ作品だ。派手に施された猫メイクと、グラムロック風のファーを纏った俳優の扮装は舞台上でこそ映える虚飾であり、『レ・ミゼラブル』で通りにカメラを出し、切々と心情を歌う俳優の顔を映し続けたトム・フーパーのリアリズム演出とはそもそも相性が悪い。フーパーはCGによって俳優の肉体に猫の皮を着せ、まるでデヴィッド・リンチが猿に人間の唇を合成して喋らせた短編『ジャックは一体何をした?』のグロテスクさに近い。その艶めかしいボディラインのエロチックさといい、全く予想外の世界を生み出されている。フーパーがこれを自覚的に行っていることは卒倒モノのゴキブリダンスからも明らかだ。

 もともと映像へ置換しにくかった題材に思いがけぬ倒錯性が加わった本作は、それでも素晴らしい楽曲によって如何ともしがたい110分の時を刻むのである。


『キャッツ』19・米、英
監督 トム・フーパー
出演 フランチェスカ・ヘイワード、ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、イドリス・エルバ、ジェニファー・ハドソン、イアン・マッケラン、テイラー・スウィフト、レベル・ウィルソン
 

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