「土壌汚染 フクシマの放射性物質のゆくえ」中西友子 2013NHK BOOKS1208
論理的に攻めてくる時は気を付けないといけない。
特に条件付きの表現とかは、きちんと読まないと騙されて誘導されちゃう。
この本もそういったレトリックを駆使した本かと、だんだん疑い出すような表現がある。
しかし、さらに読んでいくとちょっとした矛盾点などから生活者としての本音も覗きみられる。
学者として、組織の人間としての建前の部分と、生活者としての一人の国民的な部分。
引っかかる表現の部分は、「事実」だけを抜き出して読むしかない。
そうすれば、ほとんどの部分で『わかっていない』と結論付けられる。
著者も多分100ベクレル/㎏なんて個人的には認められないのが本音だろう。しかし、それを書くことは立場上できないのだろう。特にこういう公に晒されるものの中では。まあ、研究者的にはある程度までの放射線なんて慣れっこというのもあるかもしれないが。
東京大学農学部
地上に落ちた放射性物質のほとんどは土壌に結び付いて、あまり移動しない。
P54 コーデックス委員会ガイドライン年間1ミリシーベルト→放射線の影響の強い少年期に100ベクレル/㎏の食料を食べ続けたときの被曝量。(トータルで1ミリシーベルトであるはずなのに、食品だけでめいっぱいの計算してしまっている)
事故後最初に決められた暫定基準500ベクレル/㎏はICRPの基準である許容年間被ばく量10ミリシーベルトの半分として決めた。(これは基準の前提などを無視していると思われるが、そういった都合の悪いことは書かないんだよね)
(当然ね、著者もこの基準の可笑しいことは知っていて、立場的にそれを言うことはできないんだよね。本当、事故後の対応が悪すぎて「基準アレルギー(基準不信)」が未だに抜けないわ)
P56 野菜のカリウムは200ベクレル/㎏であり、基準値はこれの半分。(とはいっても、それは追加分だからね。だから安全、心配いらないとはならないよね。当然、そうは言っていない。こういうところに気を付けないと誘導されていくんだよね)
ストロンチウム
P59 チェルノブイリよりは低温だったので、飛び散った量が少ないと思われる。
P61(しかし、測定が難しいのでまだ確かなことはわからないらしい)
P60 2号機格納容器水素爆発(??そんなことを書いてある本は見たことがない。格納容器「損傷」であって、水素爆発とはね・・・つまり、学者さんたちの中では常識になっていて、それをポロリと言ってしまったのだろうか(意識的な告発だったりして))
P63 セシウムがなぜ硫酸塩と飛散したのか不明、落ちた後の結合方式も不明。
P67 相手にしているのは金属蒸気的な極小世界の存在、放射能がなければ気付かないもの。(こういうところでも矮小化の誘導かと思ってしまうのは、過敏になりすぎだね)
P68(図を見て気付いた。放射性カリウム(カリウムの中の1万分の1)って、放射性セシウムよりも単位エネルギーは大きいんだね)
P80 5000ベクレル/㎏以下の土壌で作物を作ってもほとんど移行しない。
そのあとで記述があるが、農業従事者の被曝も考えないといけない。これについてもさらに後に記述があり、埋めちゃえば大丈夫ってことだ。
そういう場所では「天然遺伝子組み換え」が起こらないのかな。たしか、中西さんはそう言った方面の専門家だよね。そちら方面の話が聞きたかったな。
P92 二次汚染の可能性(放射性物質を含む埃や泥の飛散)
P96 玄米を精米すると放射性物質は半分になり、それを炊けば水を吸って重量当たりのベクレル数は減少する。(お茶と同じことを言うんだね。計算上は間違っていないけれど、人道的に間違った発言だよね。おかゆにすればもっと汚染が酷くても基準値以下になるってか)
P112 汚染米がどうして産出されるのかわかっていない。(なのに、生産と出荷をどんどん緩めていくんだよな)
P125 巨峰の実験について書かれているが・・・東京が汚染されていることを、堂々と書いちゃっていますね。これも意識的な告発か?(しー!
P136 幹に溜め込んだセシウムを、モモは何年もかけて枝葉や果実に移していく。
P143 ICRPの「それ以下に抑えるのが望ましい」とする基準は年間100ミリシーベルト。豚の実験に使った毎時1マイクロシーベルトの場所は、年間8.76ミリシーベルトで基準よりもかなり低い値。(これまた怖い、嘘を言わない誘導に見えますね。前提条件を無視して「基準」という言葉でごまかしている。そして、それと比べて『かなり低い値』だと言い切る、政府(官僚)の言い分)
P150 野鳥の調査で浪江町へ行くと毎時30マイクロシーベルト、3、4回の調査で被曝量が1ミリシーベルトを超えるおそれ。(はははっ!年間100ミリシーベルトが基準なんでしょ?だったら、毎日調査に出かけても大丈夫だよ!こういうところに生活者(当事者)としての本音、放射線は危険だから浴びたくないという意識が見られる)
P146/7(土壌の放射性セシウムが激減している状態でのデータを使って「経年変化」を説明するのはインチキだよ。生体半減期の説明に使うのならいいけど)
P148 (比較しているだけだから「きわめて低い値」は嘘じゃない。けど、そういうことを言う必要がないのに・・・矮小化(安全)誘導だな)
P150 捕獲したウグイスの腫瘍、「こんな大きな腫瘍見たことない」「(でも)放射能によるものとは考えにくい」(ははは、・・・この部分は割愛してもよかったはず・・・やはり意識的に告発しているのだろうか)
P170 放射性セシウムでは生物濃縮は起きていないらしい。
P207 人々が書籍や政府関連ホームページを見ない。(これは単純に不信の表れに過ぎない。嘘・ごまかしと隠蔽をやり過ぎた。公表の仕方がわかりにくいというのもある。政府なんかはわざと見難く(探し難く)作っているんじゃないか?)
矮小化誘導されてしまったわけではないだろうが、放射性物質による影響は騒ぐほど大きくはならないだろうと感じた。
せっかくの貴重なまとめなのだから、『基準値(との比較)』とか『極めて低い値』などというあてにならないものや主観は表現から抜いてくれればよかったのに。
やはり、立場というのがあって『政府は正しい』が前提になって書いているわけですよね。当然です。
しかし、いくつかの点を告発としてみる限り、生活者としての本音が覗き見られるのは確かでしょう。
政府がきちんと見直して、みんなが納得できる状況になれば本音で話せる(書ける)ようになるでしょうに。
そんな日は100年先だから、次の事故が起きている…
その日が来るのはさらに100年先か。