「ポリティコン」桐野夏生 2011文芸春秋
『週刊文春』2007年08月16・23日号~08年11月27日号
『別冊文芸春秋』2009年01月号~10年11月号
ほお、ポリティコンとは社会的動物という意味か。
この作品ではその社会を作って支配しようとする人間のことだな。追い出されてもまた作ろうとするラストがそれか。
もしくは社会的な動物たり得ない人間としてのアンチテーゼか。
貧乏なお坊ちゃまが欲望むき出しで勢力を広げていくさまは、志は違うものの『海賊と呼ばれた男(百田尚樹)』に通じるものがあるな。
なんというか、こんな奴に感情移入してしまう自分が悔しい。そして、羨ましく感じている自分が情けない。
それにしても、桐野さんは男の生理を巧みに描くよね。本当は男なんじゃないかと思うくらいに。
作品の中でタバコを吸う吸う。
近頃は作品中の煙草も少し不快なだけで、特に何も感じなくなっていたのだが、雪の上での喫煙シーンではタバコの快感を思い出してしまった。もう禁煙して10年以上経ったのに。雪のあるところ、寒いところでは間があればタバコを吸っていたように思う。寒くてじっとしていられなかったのか、また、温度の変化に対して区切りをつけたかったのか、たき火などがあれば当然、そこでは火をつけたくなるだろう。スキーではリフトに乗るたびにタバコに火をつけていた。そんな記憶が雪と煙草を結び付けているのだろう。作品とは関係のない余計な話だ。
こんな嫌な奴なのに、嫌っていなかったなんて…わかんねーもんだな。
将来、嫌なジジババになっている図が頭に浮かぶ。