「ミート・ザ・ビート」羽田圭介 2010文藝春秋
『文學会』2009年12月号+書き下ろし
自転車の次は車ですか。まあ、社会とかかわるようになる青年期の順番ではありますな。この作品の主人公は結局、バイトも含めて逃避だと思うのだけれど。
うん、この作品が芥川賞候補?ふ~ん。やっぱり17歳で文藝賞とか受賞していると、その作家の周りでは何かしら力が働いているんだろうな。期待はわかるけどね。
青春だけど、破滅のにおいがいいね。
ちょっと余裕が欲しくてアルバイト?いやいや、すでに逃げている。そこの人間に影響されるのがそれを証明している。
しかし、車に関してはそれなりにやばいくらいに熱中している奴がいるので、そいつにも破滅のにおいがするにしても一種専門的な新しい出会いも期待してしまう。でも、主人公はあまりに無能だ。破滅の将来しか見えない。
売春婦が時速八十キロでやってくる。
まさにこのフレーズがこの作品のその先を象徴しているように思える。
車を譲り受けるのはいいさ。たださ、無料さ。でもその後の金のことを教えられても、さらに計算ができても変えられない。
書き下ろしの「一丁目一番地」はまさにこの点を指摘する作品かもしれない。テレビも車もいらないじゃん。
読みながら思うのは、「事故っちまえ!」「免停(取り消し)になれ!」
そして、『えっ!これでおしまい?』
せっかく「黒冷水」なんて作品を書いたのに、その後の作品が小物なのは「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を取ってから種明かしをしていたね。長い作品を書いてもそれは賞を取る対象に成り辛いらしい。だから、編集者たちからも短めの作品(中編?)で狙わされていたらしい。作家としてはそれは不幸だったんじゃないかと思うね。まあ、何とか取れたから良かった(?)けど。