2010年12月10日、名護市の某バナナ栽培施設で異常着色のバナナが見つかりました。
通常、バナナ果皮色は果指がパンパンに太った後に緑色から黄色に変わります。
また、着色は果房の基部から始まります。
ところが、今回のバナナは果指が太る前に着色しており、しかも果房先端の果手から着色が始まっていました(写真1)。
写真1.今回 収穫されたバナナ果実(左側が果房先端)
こういう場合は、バナナの茎を食い荒らすバナナツヤオサゾウムシ(Odoiporus longicollis)を疑うのですが、今回は見つかりません。
それならば、と収穫を終えた仮茎を蹴ってみると簡単に地際で折れて倒れました。
そしてバナナの芋(正確には真茎、塊茎とも云う。以下、真茎)の部分を見ると、白いデンプン部分の一部が褐色に変色していました。
さらに詳しく観察すると、黒く怪しい陰が・・・(写真2)。
写真2.食い荒らされた真茎と潜んでいたバショウゾウムシの成虫
バショウゾウムシ(別名:バショウオサゾウムシ)(Cosmopolites sordidus)です。
前述のバナナツヤオサゾウムシは仮茎の上部に多く、このバショウゾウムシは根元付近に多いのが特徴です。
この2種は大きさが やや異なります。
バナナツヤオサゾウムシが体長13~15mmに対し、バショウゾウムシは体長10~13mmと やや小さめです。
決定的な外観の違いは、翅(ハネのこと)の長さです。
バナナツヤオサゾウムシの翅は腹部を十分に覆い隠せていませんが、バショウゾウムシの翅は腹部を覆い隠しています(写真3)。
写真3.左:バショウツヤオサゾウムシ成虫、右:バショウゾウムシ成虫
色彩は、バナナツヤオサゾウムシは褐色が基本で、ために黒色の色彩変異個体がいます。
バショウゾウムシは、基本は黒色~黒褐色です。
今回は、バショウゾウムシで褐色のタイプがいました。
台湾のバナナ文献「香蕉保護技術」には、羽化したての成虫は全身が赤褐色、という記述があるので、この褐色タイプは若い成虫なのでしょう。
両種の色彩が褐色の個体を比べると、バナナツヤオサゾウムシの胸部には2本の黒紋が縦に入っていますが、バショウゾウムシの胸部には黒紋はありません。
それ以外にも蛹を見つけられるのであれば、バナナツヤオサゾウムシの蛹はバナナの繊維で作った繭に入っていますが、バショウゾウムシの蛹は簡易な薄膜に包まれた剥き出し同然の姿で見つかります(写真4)。
写真4.左:バショウツヤオサゾウムシの蛹と繭、バショウゾウムシの蛹
幼虫での見分け方は・・・、すいません、わかりません。
どちらも乳白色~黄白色のブヨブヨした芋虫です(写真5)。
見分けがつく方がいましたら、同定方法を教えてください。
写真5.左:バショウツヤオサゾウムシの幼虫、右:バショウゾウムシの幼虫
バナナの根元付近で多いバショウゾウムシは、バナナの真茎に蓄積されたデンプン(白色)を食い荒らしています。褐色のボロボロしたものは排泄物です。
茎の根元付近を縦断してみると、真茎部分だけが食い荒らされ、仮茎は食べていません(写真6)。
真茎が好きなのでしょうか。
写真6.真茎は食い荒らされているが、仮茎に被害は見られない
バショウゾウムシによる被害について、(社)国際農林業協力協会から出版されている「バナナ」という書籍には、
と記されています。
真茎だけでなく、仮茎もそして特に成長点も食害を受けるのだそうです。
私はバショウゾウムシが、株の上部で猛威を振るっている状況を見たことがありません。
一方、(株)全国農村教育協会から出版されている「日本農業害虫大辞典」には、
と生長点への加害については書かれていません。
しかし、どちらの文献でも「地際」は被害箇所のキーワードとなっています。
今回の記事のポイントは、バナナに被害を与えるゾウムは、仮茎に被害が集中するバショウツヤオサゾウムシと地際に被害が集中するバショウゾウムシの2種が確認されている(成虫なら簡単に見分けがつく)、ということでした。
〇参考資料
・「香蕉保護技術」.黄新川・鄭充・荘再揚.1990.台湾省政府農林庁・台湾省青果販売組合.
・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).
・「日本農業害虫大辞典」.(編)梅谷献二・岡田利承.1993.(株)全国農村教育協会.
※バナナツヤオサゾウムシ、バナナオサゾウムシの説明は、長嶺將昭氏が執筆。
通常、バナナ果皮色は果指がパンパンに太った後に緑色から黄色に変わります。
また、着色は果房の基部から始まります。
ところが、今回のバナナは果指が太る前に着色しており、しかも果房先端の果手から着色が始まっていました(写真1)。
写真1.今回 収穫されたバナナ果実(左側が果房先端)
こういう場合は、バナナの茎を食い荒らすバナナツヤオサゾウムシ(Odoiporus longicollis)を疑うのですが、今回は見つかりません。
それならば、と収穫を終えた仮茎を蹴ってみると簡単に地際で折れて倒れました。
そしてバナナの芋(正確には真茎、塊茎とも云う。以下、真茎)の部分を見ると、白いデンプン部分の一部が褐色に変色していました。
さらに詳しく観察すると、黒く怪しい陰が・・・(写真2)。
写真2.食い荒らされた真茎と潜んでいたバショウゾウムシの成虫
バショウゾウムシ(別名:バショウオサゾウムシ)(Cosmopolites sordidus)です。
前述のバナナツヤオサゾウムシは仮茎の上部に多く、このバショウゾウムシは根元付近に多いのが特徴です。
この2種は大きさが やや異なります。
バナナツヤオサゾウムシが体長13~15mmに対し、バショウゾウムシは体長10~13mmと やや小さめです。
決定的な外観の違いは、翅(ハネのこと)の長さです。
バナナツヤオサゾウムシの翅は腹部を十分に覆い隠せていませんが、バショウゾウムシの翅は腹部を覆い隠しています(写真3)。
写真3.左:バショウツヤオサゾウムシ成虫、右:バショウゾウムシ成虫
色彩は、バナナツヤオサゾウムシは褐色が基本で、ために黒色の色彩変異個体がいます。
バショウゾウムシは、基本は黒色~黒褐色です。
今回は、バショウゾウムシで褐色のタイプがいました。
台湾のバナナ文献「香蕉保護技術」には、羽化したての成虫は全身が赤褐色、という記述があるので、この褐色タイプは若い成虫なのでしょう。
両種の色彩が褐色の個体を比べると、バナナツヤオサゾウムシの胸部には2本の黒紋が縦に入っていますが、バショウゾウムシの胸部には黒紋はありません。
それ以外にも蛹を見つけられるのであれば、バナナツヤオサゾウムシの蛹はバナナの繊維で作った繭に入っていますが、バショウゾウムシの蛹は簡易な薄膜に包まれた剥き出し同然の姿で見つかります(写真4)。
写真4.左:バショウツヤオサゾウムシの蛹と繭、バショウゾウムシの蛹
幼虫での見分け方は・・・、すいません、わかりません。
どちらも乳白色~黄白色のブヨブヨした芋虫です(写真5)。
見分けがつく方がいましたら、同定方法を教えてください。
写真5.左:バショウツヤオサゾウムシの幼虫、右:バショウゾウムシの幼虫
バナナの根元付近で多いバショウゾウムシは、バナナの真茎に蓄積されたデンプン(白色)を食い荒らしています。褐色のボロボロしたものは排泄物です。
茎の根元付近を縦断してみると、真茎部分だけが食い荒らされ、仮茎は食べていません(写真6)。
真茎が好きなのでしょうか。
写真6.真茎は食い荒らされているが、仮茎に被害は見られない
バショウゾウムシによる被害について、(社)国際農林業協力協会から出版されている「バナナ」という書籍には、
本種の幼虫は仮茎、株を食害し株内で蛹化し、とくに成長点を食害する。1匹の幼虫が1仮茎を枯死させる場合がある。 本虫の被害株は、生長が停止し、新葉の抽出が見られない。バショウオサゾウムシによって食害された仮茎は、風によって容易に地際で折れる。そのため、台風が襲来して、加害が著しい場合は倒伏、枯死する。 (後略) |
と記されています。
真茎だけでなく、仮茎もそして特に成長点も食害を受けるのだそうです。
私はバショウゾウムシが、株の上部で猛威を振るっている状況を見たことがありません。
一方、(株)全国農村教育協会から出版されている「日本農業害虫大辞典」には、
(前略) 幼虫は株中または仮茎中で縦横に孔をあけて加害し、被害は地際部に集中する。仮茎では幹の芯部を加害するため生育が阻害され、萎縮、枯死する茎もある。加害株では着果しても倒れやすく、台風の被害を受けやすい。 (後略) |
と生長点への加害については書かれていません。
しかし、どちらの文献でも「地際」は被害箇所のキーワードとなっています。
今回の記事のポイントは、バナナに被害を与えるゾウムは、仮茎に被害が集中するバショウツヤオサゾウムシと地際に被害が集中するバショウゾウムシの2種が確認されている(成虫なら簡単に見分けがつく)、ということでした。
〇参考資料
・「香蕉保護技術」.黄新川・鄭充・荘再揚.1990.台湾省政府農林庁・台湾省青果販売組合.
・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).
・「日本農業害虫大辞典」.(編)梅谷献二・岡田利承.1993.(株)全国農村教育協会.
※バナナツヤオサゾウムシ、バナナオサゾウムシの説明は、長嶺將昭氏が執筆。
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