さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

地域の特産品を組み合わせ 冬の食卓を彩る「柑橘鍋つゆ」

2024-11-10 19:30:01 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
11月7日、大阪管区気象台は近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたと発表。昨年より4日早く、朝晩は冷え込むようになった。秋の深まりを感じるこの時期は、お鍋の季節の到来でもある。

昨今、豆乳鍋を筆頭に、豚骨醤油鍋やキムチ鍋まで、様々な「鍋つゆ」が販売され、冬の食卓のレパートリーが増えた方も多いのではないか。
先日、とある食料品店で「柑橘鍋つゆ」なるものを見つけた。柑橘を使った鍋つゆとはどのようなものか、実際に食してみた。


写真】柑橘の果汁と鶏ガラスープで作られた「柑橘鍋つゆ」

購入した鍋つゆには3種の柑橘が使われている。「柚子(ゆず)」「酢橘(すだち)」「柚香(ゆこう)」の果汁が配合され、塩味の鶏ガラスープをベースにしている。
使用されている食材は全て徳島県産。柚香という柑橘は徳島県の山間部でのみ栽培されている希少品種。柚子とダイダイの自然交配による品種とされる。

徳島県では「香り柚子、酸味酢橘、味柚香」といわれるほど親しみ深い柑橘のひとつ。筆者が購入した鍋つゆには、3種全てが配合されており、徳島県が誇る柑橘を凝縮した逸品である。スープに使用されている鶏ガラも徳島県産の「阿波地鶏」。大手航空会社におる地域振興のプロジェクトの一環で開発されたもので、地域の特産品の消費拡大を目指している。

鶏ガラスープであるため、鶏肉をベースに野菜を入れ、鍋つゆを注ぐ。食してみると柑橘のほのかな風味に薄い塩味を感じる。鶏ガラスープであるが強調し過ぎることなく、柑橘の旨味を引き立てる程度の薄味で、あっさりとした鍋を楽しみたいときにオススメしたい。

地域の特産品を組み合わせ、人気を博す鍋つゆの領域への挑戦。あっさり味の新たなジャンルとして、食卓に浸透することを期待したい。

(次田尚弘/神戸市)
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ロゲイニングやeスポーツ 「温泉」と「サイクリング」の融合

2024-11-03 13:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山市内の温泉が、有馬温泉の「金泉」と同様の「鉄泉」と、「銀泉」と同様の遊離二酸化炭素量が豊富な「炭酸泉」の両方を含む、ハイブリッドな存在であることを取り上げた。
有馬温泉では、地域が持つ魅力を活かした、新たな旅行者の獲得に向けた取り組みが始まっている。


【写真】多様な切り口で誘客を図る「有馬温泉」

過去に神戸市などが企画し開催された「サイクルロゲイニング」のイベントでは、有馬温泉を中心に六甲エリアなど、サイクリストのレベルに分けた6つのコースを用意。完走後に有馬温泉の好きな温浴施設で日帰り入浴を楽しめるというもの。

サイクルロゲイニングとは、自転車で特定の地域を巡るイベント。ロゲイニングとはナビゲーションスポーツの一種とされ、地図をもとに制限時間内にチェックポイントを巡り得点を集めるスポーツ。
有馬温泉では、周辺地域の美しい景観や起伏の激しい地形を組み入れたコースを設けるなど、神戸の自然資源を活かしたサイクルツーリズムが推進されている。

また、世界各国からサイクリストがバーチャルで参加し、有馬温泉から六甲山を目指すオンライン上のレースが行われ、後日、実際に現地でレースを行うオフライン型のイベントを開催し、世界からの誘客を図るなど、eスポーツとの連携も進む。

和歌山県内では鉄道沿線の活性化を目的としたサイクルロゲイニングが開催されている。
チェックポイントとされる観光地を巡り完走した参加者に、土産品を提供。人気を博し、和歌山県がサイクリング王国と称される所以ともいえるイベントである。

観光資源とサイクリングを組み合わせた取り組みが進む昨今、サイクリング初心者でも気軽に楽しめるものとして、市内の魅力的な温泉が活用されることを期待したい。

(次田尚弘/神戸市)
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金泉と銀泉のハイブリッド 高濃度の炭酸ガス、市内の「療養泉」

2024-10-27 16:37:21 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、茶褐色をした和歌山市内の温泉が、有馬温泉の金泉と同様の「鉄泉」であり、全国的にも珍しい存在であることを取り上げた。温泉分析表を見るなかで、更なる魅力が見えてきた。
今週は泉質欄で「含二酸化炭素」と記され、溶存ガス成分中の「遊離二酸化炭素」の含有量が多い温泉の効能を紹介したい。

和歌山市内の温泉の特徴を調べるなかで目に留まったのが「遊離二酸化炭素」の量である。有馬温泉には、金泉と銀泉の2種類があることを皆さんもご存知だろう。銀泉は金泉と打って変わって無色透明。泉質は炭酸泉に分類される。有馬温泉で炭酸煎餅が製造され温泉客に人気であるのはそれが理由である。


【写真】有馬の温泉やぐら(神戸市北区)

環境省によると、昭和23年に制定された「温泉法」により、地中から湧出する温水のうち、摂氏25度以上、遊離二酸化炭素が1㎏中1000㎎以上のものを、治療の目的に供しうる「療養泉」と定義している。有馬温泉の銀泉は1㎏中1000㎎以上の二酸化炭素を含み療養泉とされる。

和歌山市内の温泉もこの数値を上回るもので療養泉に分類される。更にいえば、金泉と同じ鉄泉であるため、いわば、金泉と銀泉のハイブリッドといって過言ではない。

炭酸泉の効能は、温泉に溶け込んだ高濃度の炭酸ガスが皮膚から吸収されることで血管を拡張し血行を促進する。欧州では炭酸泉が多く、医療にも取り入れられており「心臓の湯」として名高い存在。日本では全国の温泉の約0.5%程度と希少性がある。

有馬温泉の金泉と銀泉に類似する全国的にも珍しい湯が身近なところに。深まる秋を感じながら、自然の恵みを受けてほしい。

(次田尚弘/神戸市)
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理由は鉄分にあり 有馬の「金泉」と市内の温泉の共通項

2024-10-20 15:37:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
早いもので10月も下旬に。ようやく酷暑の夏が過ぎ、少しずつ秋を感じる今日この頃である。この季節になると温泉に入るのが気持ちよくなってくる。
和歌山県内では、日本三古泉として名高い「白浜温泉」や日本三大美人の湯として知られる「龍神温泉」をはじめ、同じ県内に居ながらにして様々な泉質を楽しめる魅力がある。
和歌山市内では中心市街地で温泉を楽しめる温浴施設をはじめ、複数の宿泊施設がある。なかでも、茶褐色をした特徴のある温泉は、まるで有馬温泉の「金泉」のよう。神戸市在住の筆者にとって、有馬は身近な存在。
今週は、金泉と和歌山市内の温泉の共通項を紹介したい。


【写真】鉄分を含む有馬の「金泉」

金泉は湧き出した時点では一般的な温泉と同様に無色透明。湯の中に多量の鉄分を含むため、空気に触れることで水酸化鉄となり茶褐色に変色する。温泉の元は約600万年前の太平洋の海水。地殻変動によりプレートと共に地中深くに潜り込み、長い歳月をかけて鉄分を携えていく。同時に塩分濃度が海水の1.5倍程度となる。全国に約3万箇所ある温泉のうち、有馬のように「鉄泉」に分類されるのは約1%で珍しい存在となっている。

公表されている温泉分析表によれば、金泉は「含鉄、ナトリウム、塩化物強塩温泉」とされる。一方、和歌山市内の温泉の泉質は「含鉄・ナトリウム、塩化物・炭酸水素塩強温泉」あるいは「含二酸化炭素、鉄、カルシウム、マグネシウム、塩化物温泉」などとされ、いずれも、鉄が含有することがわかる。それ故に金泉と同様に茶褐色となる。

各成分の含有量に違いはあれ、鉄分が豊富に含まれることで色を変える珍しい温泉。深まる秋を身近な温泉で楽しんでみては。

(次田尚弘/神戸市)
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山椒との融合で味わい引き立つ 「源五兵衛クリームチーズ」の作り方

2024-10-13 13:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、酒の肴に相性が抜群の「奈良漬クリームチーズ」を取り上げた。
和歌山県の伝統野菜である「源五兵衛(げんごべい)」でも、この味を再現できるのか。家庭で楽しめる「源五兵衛クリームチーズ」の作り方とその味わいを紹介したい。


【写真】クリームチーズを介し山椒と融合する「源五兵衛

作り方は至ってシンプル。一人分としての目安は、クリームチーズ50gに源五兵衛25g。まずはクリームチーズを常温に戻し柔らかくする。次に源五兵衛を粗めに刻む。続いてボウルにクリームチーズを入れて練り上げた後、源五兵衛を加えて、よくあえれば出来上がり。所要時間は5分程度。あっという間に、源五兵衛クリームチーズの出来上がりだ。

クラッカーに乗せ、オリーブオイルや黒胡椒を振りかけると風味が増す。日本版の胡椒として名高い、和歌山県産の山椒を振りかけてみた。濃い酒粕の香りと塩気がある源五兵衛がクリームチーズに包み込まれ、柔らかな食感とまろやかな味わい。そこに山椒の香りとピリ辛さが相まって、絶妙なテイストとなる。

源五兵衛と山椒という和歌山県が誇る伝統の食材が絡み合い、クリームチーズが介することで、一見相反する組み合わせがまさかの価値を出す。単一では出し切れない価値を現代人の嗜好に合わせアレンジし、新しい食べ方を生み出すと共に高い価値を出していくこと。
加工メーカーや飲食店の創意工夫によるものが多いが、その食材の根幹にある魅力や秘められた価値を知るのは農作物の生産者であり、また、地域に住まう者だからこそ。

伝統野菜を後世に受け継いていく、サステナブルな農業の実現には、縦割りではなく、多様なスペシャリストが混ざり合い創意工夫することが大切。
俯瞰して物事を観察し、一歩踏み出し挑戦してみる地域の力が必要だ。

(次田尚弘/和歌山市)
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酒の肴に相性抜群 「奈良漬クリームチーズ」

2024-10-06 13:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、伝統野菜を次世代につなぐために、「源五兵衛(げんごべい)」の素材を活かした創意工夫により、経済的持続性を成立させている鳥取の「とまり漬け」の事例を取り上げた。
粕漬(奈良漬)を若者や海外の人々に親しみやすくしようと、粕漬を他の食材とアレンジする試みが広がっている。
今週は人気が高まる「奈良漬クリームチーズ」を紹介したい。


【写真】「奈良漬クリームチーズ」

先日、筆者は梅田駅近くの飲食店に居た。帰宅途中、同僚と立ち寄ったお店のメニューに、人気商品としてマーキングされていたのがこれだ。渋いメニューを選ぶねと笑われながら、迷わず注文してみることにした。

小さな鉢の中に、すりきり一杯に入れられたクリームチーズの中から、角切りにされた奈良漬が顔を出し、可愛らしい緑の飾り葉が乗せられ、その傍らにはクラッカーが添えられている。

スプーンで、奈良漬が練り込まれたクリームチーズをすくい取り、クラッカーに乗せて食す。「うまい!」。奈良漬特有の酒粕の香りが、クリームチーズのまろやかさと融合し、香り高い高級食材と化している。ビール、ワイン、日本酒、どのお酒にも合う味わいで、酒の肴にぴったりな存在である。

人気を博し始めたのはここ数年。大手の漬物メーカーなどが商品化し販売を開始。奈良漬として使用されている原材料は「クリームチーズ」「瓜」「酒粕」と表記されており、使用されている瓜の品種はわからないが、酒粕たっぷりで濃い味が特徴の源五兵衛は、美味しくいただけるであろうと感じた。

クリームチーズには様々な種類があり奥が深い。奈良漬にも原材料や地域によって違いが多い。
一見、相反するような存在の異色な組み合わせが、日本ならではの食材の、新しい価値を見出している。

(次田尚弘/大阪市)
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経済的持続性が成立 伝統野菜「源五兵衛」のこれから

2024-09-29 13:38:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山の伝統野菜「源五兵衛(げんごべい)」を使った鳥取の名産品「とまり漬け」を取り上げた。
今週は、伝統野菜を次世代に伝えていく、持続可能な農業について考えたい。


【写真】源五兵衛の粕漬(左)と醤油漬(右)

江戸時代から布引地区で栽培が始まった源五兵衛であるが、現在は、松江地区が主な栽培地となっている。栽培面積は約2haで、生産量は100t程度とされる。一般に流通する機会は無く、漬物業者への出荷が確約された契約栽培。収穫されたものは農家の手で一次加工された後、県外へ出荷される。

県外で粕漬にされた加工品が再び県内のスーパーなどの店頭で見かけることは稀で、和歌山市の伝統野菜であることを知る方は少ない。
市場に並ぶことがなく認知度は低いものの契約栽培という形式で細々と生産が続くのは、経済的持続性が成立しているから。

市場に出荷するだけでは採算性が取れないが、生産・製造(加工)・小売を地域で一貫して行う、いわゆる六次産業化により付加価値を高めることで採算を確保し、経済的持続性が成り立つケースはある。

源五兵衛は、生産と製造(加工)の一部を農家が行い、製造の残工程と小売は県外の業者が担い、粕漬(奈良漬)として、漬物が有名な他地域のブランド品として認知され、さり気なく、和歌山の伝統野菜として、持続可能な立ち位置を確立している珍しい事例である。

とまり漬けは、粕漬としての価値への限界という、地域の危機感から生まれ、新たな味として定着。そこには、農作物をいかに価値あるものに変化させるかという創意工夫のうえに成し得たもの。

和歌山産の源五兵衛も、地域を跨いで生産と加工のプロフェッショナルが連携し、新たな価値を提供し続けることが、伝統野菜を次世代につなぐ、持続可能な農業の大きなカギになりそうだ。

(次田尚弘/和歌山市)
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鳥取県で栽培される源五兵衛 薄口醤油で癖が無い「とまり漬け」

2024-09-22 13:33:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
江戸時代から栽培が続く、和歌山の伝統野菜「源五兵衛(げんごべい)」を取り上げている。
前号では、古くから受け継がれる粕漬の製法と、その味わいについてお伝えした。
近年は、消費者の嗜好に合わせ、薄口醤油に漬け込まれた醤油漬けの販売が始まっている。
今週は、鳥取県の名産品となっている「とまり漬け」を紹介したい。


【写真】源五兵衛を加工した「とまり漬け」

和歌山市の布引地区を中心に栽培が広がった源五兵衛であるが、現在、県内での栽培は僅か。和歌山市と同様に砂地の地形が特徴の鳥取県では、源五兵衛が積極的に栽培されている。

主な生産地は湯梨浜町。鳥取県の西部に位置する。ここで栽培される源五兵衛を半年程度酒粕に漬けて寝かせた後、酒粕と塩を抜き、薄口醤油で浸ける。収穫から加工され出荷するまで約1年かけて出来上がったものが「とまり漬け」だ。

大変なのは加工の工程だけでなく、収穫も。とまり漬けに適した果実の大きさが直径5.4㎝から6.4㎝のものと定められているため、成長が早い源五兵衛は、朝に直径5.4㎝未満であっても1日で6.4㎝を超えるサイズになる。
そのため、農家は1日に複数回の収穫を余儀なくされるという。とまり漬け(鳥取県産)と源五兵衛(和歌山県産の粕漬)のサイズを比べると、とまり漬けの方が、果実のサイズが小ぶりであることがわかる。

食してみると、源五兵衛(粕漬)と比べ柔らかい。コリコリした食感は無く、巨大なオリーブを食しているような感覚である。サクサクとして粕漬特有の香りもなく、甘辛い醤油の味付けと、刻まれた鷹の爪のピリ辛さが絶妙である。
小さめのサイズで収穫され、外皮が薄いからなのか、醤油漬けによるものなのか、理由は定かでないが、柔らかくプニプニとした弾力がある。

(次田尚弘/和歌山市)
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和歌山の伝統野菜を使用 深い味わい「源五兵衛の粕漬」

2024-09-15 17:19:39 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より、紀州名産の小スイカ「源五兵衛(げんごべい)」を取り上げている。
江戸時代から栽培が始まり「小スイカの粕漬」に加工され、現在も親しまれる源五兵衛。
今週はその中身と味わいを紹介したい。


【写真】スイカを連想させる「源五兵衛

収穫当初は一般的なスイカと同様に張りのある果皮であったが、粕漬にする過程で、おにぎりのような形になる。輪切りにしてみると、中心部分を一周するように小さな種があり、これがスイカであることを明らかにさせてくれる。

源五兵衛の粕漬は、酒粕を5度に渡り浸け直して製造。これは和歌山の伝統的な粕漬(奈良漬)の作り方であるという。
現在、和歌山県内で製造する業者は僅かなようで、筆者が手にしたものは県外で加工されたもの。県内で収穫された源五兵衛は、すぐに酒粕に漬け込まれ、粕漬の一次加工がされたうえで県外に出荷される。県外の加工業者で更に加工され商品となる。

一般的な漬け込みの期間は半年から1年程度とされる。伝統的な漬け込み方法である5度の浸け直しが行われているかは定かではない。
源五兵衛の粕漬にはランクがあり、漬け込みの期間が浅いものは1個あたり700円前後が相場。酒粕を取り換え、長期熟成されたものは高級品として扱われる。

食してみると、コリコリとした歯ごたえがあり、柔らかさがなく食べ応えがある。噛むごとに口いっぱいに酒粕の風味を強く感じ、若干の苦みはあるが、ご飯が進む逸品である。

時代の流れなのか、粕漬(奈良漬)特有の風味と味の濃さよりも、さっぱりとした味わいを求められる傾向も。昭和30年頃から源五兵衛の栽培が盛んになった鳥取県では、近年、薄口醤油に漬け込み、醤油漬けとしての販売が始まるなど、現代の消費者の嗜好に合わせた工夫が行われている。

(次田尚弘/和歌山市)
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布引地区の小スイカ栽培 紀州名産、歴史が深い「源五兵衛」

2024-09-08 14:57:10 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、味覚の対比効果により甘味が引き立つ、スイカと塩の関係について取り上げた。
関西では有数のスイカの産地である和歌山県。長年、和歌山市内で栽培され、ご当地のみならず県外でも親しまれるスイカの品種があることをご存知だろうか。
今週は「源五兵衛(げんごべい)」を紹介したい。


【写真】こぶし大の「源五兵衛

源五兵衛は小スイカの一種で、主に、和歌山市の布引地区で栽培されてきた。
時は江戸時代にまで遡る。津波により不毛の地と化していた和歌山市南部の砂地の地域に対し、徳川頼宜が土地改良を命じ、スイカの栽培が始まった。
水はけのよい砂地が栽培に適し、良質のスイカが収穫できたため「布引スイカ」と呼ばれ、紀州の名産品になったという。

このスイカに転機が訪れたのは和歌山市本町にあった酒屋の杜氏(とうじ)・源五兵衛との出会い。源五兵衛が和歌山市毛見にある「濱宮(はまのみや)神社」に参拝する途中、布引の畑でこぶし大のスイカを拾った。酒屋に持ち帰り、酒粕に漬けたところ上品な仕上がりとなり、改良を重ね販売を開始。やがて「小スイカの粕漬」として紀州の名産品となり、大阪や京都、さらには江戸へと販路を広げていった。
この商品を作った人の名にちなみ、スイカにも粕漬にも、源五兵衛の名が付けられたという。

粕漬にした源五兵衛はこぶし大で、漬物の茄子よりも小さく、一般的なスイカのイメージを覆す。丸い形ではなく、やや上下に長い楕円形をしており、上部にはしっかりしたヘタが付いている。

実際に食してみるとどのような味わいなのか。次週に続く。

(次田尚弘/和歌山市)
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