さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

国内初のタンゴール品種 県の生産量全国2位「清見」

2021-03-28 16:29:22 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では「不知火(しらぬい)」「デコポン」の家系を辿り、掛け合わせの親とされる「ポンカン」を取り上げた。
今週は、同じく親とされる「清美(きよみ)」を紹介したい。


【写真】温州みかんの風貌と固い外皮が特徴の「清見」

清見は、温州みかんに形が似ているが、重さ約200g、直径約8㎝と、温州みかんと比べると一回り以上大きいサイズ。
外皮はオレンジのように固いが、果肉は柔らかく甘味と香りに優れ、みずみずしい果汁が特徴。

春柑橘の多くが早い時期に収穫され、貯蔵した後に出荷となるが、清見の場合は果実1つずつに袋掛けを行い、3月頃まで木に実をつけたまま越冬させ、十分色づいた頃に収穫される。
そのため、実が完熟し甘味が増すという。

清見は、甘さが特徴の温州みかんと、アメリカのオレンジを交配した国内初のタンゴール品種。
タンゴールとは、みかんを指す「Tangerine(タンジェリン)」と「Orange(オレンジ)」の掛け合わせを意味する言葉。

静岡県清水区の「清見潟(きよみがた)」、当コーナー(家康紀行)で取り上げたことがある「清見寺(せいけんじ)」の近くで開発されたことから、清見(きよみ)の名が付けられた。
オレンジとの掛け合わせであることから「清見オレンジ」の名で呼ばれることもある。

農水省統計(2017年)によると、主な生産地は、愛媛県(44%)、和歌山県(38%)、佐賀県(5%)など。
和歌山県は愛媛県に次ぐ第2位であることから、目にする機会も多い。

春柑橘の新品種の多くは清見から誕生しており「せとか」「はるみ」「たまみ」など。
清見が親となる数々の春柑橘を紹介していきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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甘味が魅力、整腸作用も インドが由来「ポンカン」

2021-03-14 16:33:17 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では「不知火(しらぬい)」と「デコポン」が同じ柑橘であることを取り上げた。
「ポンカン」と「清見」を掛け合わせてできた不知火とデコポン。
柑橘の家系を辿り、今週はポンカンを紹介したい。


【写真】甘味が特徴の「ポンカン」

ポンカンは果実の頭部が突き出ており、お尻がへこんでいるのが特徴。不知火・デコポンで大きく発達したデコの由来ともいえる。
温州みかんより一回り大きく、直径7~8㎝、重さ120~150gで酸味がなく甘味が強い。
外皮がむきやすく内皮は薄くて柔らかいため袋のまま食べられることから子どもにも好まれる柑橘のひとつだ。

歴史は古く、インドが原産とされ、アジア各地で栽培されている。
農水省統計(2017年)によると、国内の主な産地は愛媛県(40%)、鹿児島県(15%)、高知県(12%)、熊本県(8%)、和歌山県(6%)、大分県(4%)と、西日本地域での栽培が多い。
紀南では「くろしおポンカン」の名称で販売され、日当たりがよく温暖な地形を生かした甘味の強いポンカンを出荷している。

県内での収穫時期は12月中旬頃から1月にかけて。長い期間、木に成らせておくと水分が抜けやすいとされ、早い時期に収穫され1月中旬頃まで貯蔵し出荷される。
大きい物は皮が厚く大味であるため、やや小さめで果汁の多い重めのものがおすすめ。
皮に張りが無く柔らかいものは水分が少ない可能性があるので避けた方がよく、保存の際もポリ袋に入れるなど、水分の蒸発を防ぐことが美味しく食べるコツといえよう。

疲労回復に有効とされるクエン酸や、整腸作用が期待できるペクチンが多いのも魅力。
時候の変わり目に、ぜひポンカンを食べてみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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実は同じ柑橘 「不知火」と「デコポン」

2021-03-07 13:34:11 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
県内で収穫される今が旬の「春柑橘」のひとつ「不知火(しらぬい)」を取り上げている。
熊本県宇城市(旧・不知火町)で栽培が始まった不知火と瓜二つである「デコポン」。
今週は、不知火とデコポンの違いを紹介したい。

不知火とデコポン。名前は異なるが実は同じ柑橘。
デコポンは不知火の中でも糖度が13度以上、酸度が1度以下という基準を満たし、かつ、日本園芸農業協同組合連合会に属する全国のJAを通じて出荷されたものだけが名乗ることができる。

栽培が始まった地である熊本県の同連合会が1991年からデコポンの名称で出荷を開始。1993年に商標登録を取得した。
定められた糖度と酸度を「全国統一糖酸品質基準」と名付け、国内で唯一、商標登録をもつ果物である。

清見とポンカンを交配させて生まれた不知火であるが、開発当初は、へたの周囲にデコ(凸)を持つ見た目の悪さと酸味の強さから量産に不向きとされたという。
しかし、日にちを置いて食べると酸味が消え甘味が増していることに気づき、栽培が本格化。デコを持つ特徴を逆手に取り、可愛らしささえ感じられるネーミングで人気を博していった。


【写真】果汁が多く甘さが際立つ「デコポン」

3月1日、報道やカレンダーなどで「デコポンの日」という言葉を見聞きされた方がいらっしゃるかもしれない。
デコポンが初めて出荷された3月1日を日本記念日協会が「デコポンの日」として登録。果物売り場を彩る春柑橘のシーズンの到来を人々に感じさせてくれている。

柑橘分野におけるプロモーション戦略の覇者ともいえるデコポン。
地場産品のブランド化、農業振興に資する好事例として評価したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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