さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

100年以上の歴史を持つ 親品種として親しまれる「白桃」

2022-08-28 13:33:55 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、果汁が豊富で上品な甘みが特徴の「清水白桃」を取り上げた。今週は、清水白桃の元となった品種「白桃(はくとう)」を紹介したい。


【写真】和歌山県産の「白桃」(無袋栽培なのか、やや赤みがある)

白桃は、明治34年(1901年)に岡山県で発見された偶発実生。中国の「上海水蜜桃(すいみつとう)」から生まれたものといわれるが、元となった品種は定かではない。
清水白桃をはじめ、白鳳、日川白鳳、川中島白桃、黄金桃などは、白桃を元に派生した品種であることから「本白桃」や「純白桃」という呼び名もある。

白桃と対比する存在として「黄桃(おうとう)」と呼ばれる品種があるが、白桃は果汁が豊富でジューシーな味わいが楽しめる白肉種で、黄桃は缶詰などに使用されるやや固く実が締まっている黄肉種。
私たちが市場で目にする桃は、白桃を由来とする白肉種が多い。

白桃はその名のとおり、果皮が乳白色をしているのが特徴。果実に袋掛けをする「有袋栽培」により成熟させ、直接日光を当てないことから赤くなることなく収穫を迎えることが多い。

果実の重さは250g~300g程度。食してみると、白い果肉に果汁が多く含まれ、口当たりはなめらか。甘味のなかに少し渋みが感じられるが、品のある味わいが楽しめる。
市場に出回る時期は8月上旬から中旬頃と、桃の中では遅めに旬を迎える。

農水省統計によると全国の栽培面積は30ha程度と広くなく、産地の第1位は京都府(12.2ha)、第2位は岡山県(5ha)、第3位長野県(3ha)となっており、和歌山県は上位10位以内には現れない。

様々な桃の親となる品種であるが、意外と生産量が少ない白桃。和歌山県では珍しい品種であるので、見つけたらぜひ食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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果汁豊富で上品な甘み 糖度で等級付けも「清水白桃」

2022-08-21 14:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、桃の代表格として知られ、様々な味わい方が楽しめる「白鳳」を取り上げた。
今週は白鳳と並んで名が知れた「清水白桃」を紹介したい。


【写真】乳白色でジューシーな味わいが楽しめる「清水白桃」

清水白桃は昭和7年に岡山県で発見された品種。「白桃」と「岡山3号」が植えられた農園で、成熟が早い偶発実生とされる。
名前の由来は、発見された農園があった「芳賀清水」という地名であるという。

果実の重さは250~300g程度。赤みが少なく乳白色をしている。
食してみると果汁が豊富で、なめらかな口当たり。酸味が少なく上品な甘みが特徴。

農水省統計によると、栽培地(栽培面積)の第1位は岡山県(66.6%)、第2位は和歌山県(22.8%)、第3位は大阪府(3.9%)。

栽培面積第1位の岡山県では、清水白桃のブランド化戦略が行われている。
出荷前に光センサーを用いて糖度をチェックし、糖度が高い順に、「ロイヤル」「キング」「エース」「加工用」と、4つの等級等級が付けられている。

ロイヤルは糖度12度以上の最高級品で、贈答用として1玉1000円以上の値で取引されている。
キング(糖度11.5度以上)も贈答品として使われることが多く、エース(糖度10.5度以上)は手ごろな価格で主に家庭用として親しまれている。

桃は見た目では味の判断が難しいが故に、その出来栄えを客観的な指数を用いて消費者にわかりやすく提示する取り組みは、安心につながると同時に、桃そのものの価値を上げるものとなっている。

清水白桃の旬は7月下旬から8月上旬頃。今年の旬は過ぎたが、岡山県産の等級付きのものが手に入れば、その味わいを和歌山県産のものと比較してみるのも面白そうだ。

(次田尚弘/和歌山市)
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桃の代表格として知られる 様々な味わい方が楽しめる「白鳳」

2022-08-14 17:50:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、低温期間が短くても育成が可能で、温暖化に適応した品種「さくひめ」を取り上げた。
今週は桃の代表格として知られる「白鳳」を紹介したい。


【写真】果汁が豊富で上品な甘みが特徴の「白鳳」

白鳳は大正14年(1925年)に神奈川県の試験場で「白桃」と「橘早生」を交雑させて育成した品種。昭和8年(1933年)に白鳳と命名された。
果実はやや大きめで重さは250~350g程度。果皮は白く、日光に当たる部分が赤く染まる。

食してみると果肉は柔らかく、酸味はあまり感じられず、上品でほどよい甘味と香りが楽しめる。
果汁が豊富で、フォークを刺すとそこから溢れ出るほど。とろけるような口当たりが特徴で、まさに桃の代表格といえる味わいである。

白鳳は、先に取り上げた「日川白鳳」や「桃山白鳳」などは白鳳の枝替わりとして発見された品種で、これらを総称して「白鳳系」と呼ばれ、いずれも果汁が豊富でジューシーであるのが特徴。

白鳳の旬は7月中旬から8月中旬にかけて。ハウス栽培されたものは5月中旬から出荷が始まる。
収穫の期間が長く、比較的日持ちが良いことから、市場で目にすることが多い品種である。
単純に皮を剥いて食する他に、タルトやケーキに添えられることや、ジュレ、シャーベットなどに加工されることもあり、様々なシーンで登場するのが白鳳の面白いところ。

農水省統計によると、栽培地(栽培面積)の第1位は山梨県(45.5%)、第2位は和歌山県(22.4%)、第3位は岡山県(9.3%)。
和歌山県は国内の総栽培面積の4分の1近くを占め、盛んに栽培されている品種である。

県内で手軽に食べることができる白鳳。ぜひ、その味わいを楽しんでみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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低温期間が短くても育成可能 温暖化の課題から生まれた「さくひめ」

2022-08-07 17:15:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、酸味が少なく、とろける食感が特徴で、県内の栽培が盛んな「日川白鳳」を取り上げた。日川白鳳と時を同じくして収穫される品種がある。
今週は「さくひめ」を紹介したい。


【写真】日川白鳳に似た食感の「さくひめ」

さくひめは、低温である期間が短くても育成可能で、ブラジルから導入された「Coral」という品種と、果実品質に優れた早生品種である「ちよひめ」などを交雑させて作られた品種。

一般的な日本の桃は、冬季に7.2℃以下となる低温期間が1000~1200時間程度必要とされるが、さくひめはその半分程度で済む。
開花時期は日川白鳳と比べ10日程度早く、収穫期は5日程度早い。
名前の由来は、他の品種よりも一段と早く花が咲くからであるという。2018年に登録された新しい品種である。

果実の重さは250g程度。果肉は白色で糖度は12~13度程度で酸味は少ない。果皮の赤い着色は日川白鳳よりやや少ない傾向にある。
味わいは日川白鳳と似ており、果汁がたっぷりでジューシーな味わい。とろける食感から何ともいえない旨さがある。

新しい品種であり、統計値では栽培が盛んな都道府県の公表は無いが、西日本地域での普及を見込んでいるという。
栽培適地が西日本とされているのは、早生品種の栽培割合の高さに加え、地球温暖化による影響を見越しているから。冬場の気温が上昇しても、安定した開花と結実が見込め、安定的な生産に貢献できることが期待されている。

地球温暖化という課題のなかから生まれたさくひめ。新たな品種が生まれることは嬉しいことだが、その背景には複雑なものがある。
和歌山県の特産品である桃の生産が持続可能なものであってほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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