さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

流通困難な高級ぶどう 旧ソ連原産の「リザマート」

2023-11-26 19:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、ぶどうの概念を変える希少品種で、パリッとした食感が特徴の「ベニバラード」を取り上げた。
今週はさらに希少な品種で、生産地でのみ味わうことができる「リザマート」を紹介したい。


【写真】細長い果実が特徴の「リザマート」

リザマートは旧ソビエト連邦のウズベキスタン共和国で生まれた品種。欧州系のぶどうで最高品種といわれる「カッタクルガン」と「パルケント」を交配したもの。
縦長の果実が特徴で、大きいものであれば、直径3㎝、長さ5㎝程度になるものもある。
皮はかなり薄く剥きづらいため、皮ごと食べるのがおすすめ。

果実の色は赤紫色で、香りはほとんどない。食してみると酸味が弱く、強い甘味を感じる。
しっかりとした食感があるが硬いというほどではなく、果汁も多めでジューシーな味わい。

生産量が僅かであるため、農水省の統計値に現れず、各都道府県の栽培面積はわからないが、山梨県や長野県など、ぶどうの栽培が盛んな地域で、ごく僅かだけ栽培されているよう。
筆者は県内の産直市場で偶然見つけることができた。収穫時期は8月上旬から下旬にかけて。流通が難しく、百貨店やスーパーなどで出回ることがない、幻のぶどうといって過言ではない。

その理由は果皮が極めて薄いこと。極めてデリケートな品種で、熟期を迎えた果実に雨が当たると、すぐに裂果し皮が溶け、腐ってしまう。
ビニールハウスなどで雨が直接当たらない環境下でも、湿気が多いだけで裂果するほどで、栽培が非常に難しいという。
そのため、産地から店舗への輸送も困難であり、生産地でしか味わえないものとなっている。

日本で収穫されるぶどうの中で、群を抜いて高級で希少とされるリザマート。目にする機会があればぜひ購入し、その味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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ぶどうの概念を変える希少品種 パリッとした食感「ベニバラード」

2023-11-19 18:48:48 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では「巨峰」や「ピオーネ」を意識し育成された、赤色で大粒の果実が特徴の「クイーンニーナ」を取り上げた。
今週も果実の色が赤い「ベニバラード」を紹介したい。


【写真】細長く赤色の「ベニバラード」

ベニバラードは平成9年(1997年)に山梨県甲府市で生まれた品種。欧州系の「バラディー」と米国系の「ゴールド」を交配させた「バラード」に「京秀」を交配し、その中から優れたものを育成したもの。果皮が赤く、パリッとした食感で皮ごと食べられる。

果実は大粒で上下方向に長い楕円形をしている。国内で一般的な巨峰などと比べ、ぶどう特有の香り(フォクシー香)が無い。

食してみると、果肉は硬めで歯ざわりがあるほど。シャキシャキとした食感で柔らかさはなく、果汁も多くないものの、酸味が少ないことから甘さを感じることができる。
糖度は20度を超えるものもあり、ぶどうとしては糖度が高い部類であるが、上品な甘さとなっている。

栽培時に種なしにするジベレリン処理を行うと形が崩れやすいことから、種ありの形で出回ることが多い。種なしが主流であるため、これが弱点となって栽培が広がらないという事実がある。

農水省統計によると全国の栽培面積は僅か1.7ha。統計上は栽培地が長野県のみ数値に現れているだけで、他の地域での栽培は少ないのが現状。
極早生の品種であるため、7月下旬から8月下旬にかけて収穫される。

筆者は8月中旬頃に県内の産直市場で購入。巨峰などと比べ、色も形も特異であり、その味わいに興味をもって購入した。「紅バラード」の表記で販売され、果実の赤色を意識しているものと思われる。

ごく僅かだけ栽培されている希少品種。一般的なぶどうとは異なる食感を味わいたい方は、ぜひ挑戦してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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巨峰やピオーネを意識し育成 赤色で大粒の「クイーンニーナ」

2023-11-12 19:10:10 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、7月下旬に成熟する新品種で、気候変動に対応した「ブラックビート」を取り上げた。
今週も「巨峰」や「ピオーネ」を意識し、それらとの違いを新しい価値として売り出している「クイーンニーナ」を紹介したい。


【写真】美しい赤色が目を引く「クイーンニーナ」

クイーンニーナは果皮の色が赤く食味に優れた大粒のぶどう。1992年(平成4年)に広島県の果樹研究所で「安芸津20号」と「安芸クイーン」を交配し育成したもので、2011年(平成23年)に品種登録された。
巨峰やピオーネと異なる見た目で、食味に優れ、種なし栽培が可能な大粒品種の育成を目指し育成された。

果実は1粒あたり17g程度と大粒。果肉がしっかりとしており歯切れがよい。糖度は20度を超える一方、酸味が低いことから、さっぱりとした味わいというより、甘さが口に残るという印象。果汁は多くみずみずしい。巨峰やピオーネに似た香り(フォクシー香)がある。

名前の由来は、親である安芸クイーンの旧系統名が「安芸津27号」という名称であったことから、数字の27を「ニーナ」と読み替え、さらに、スペイン語で女の子を意味する「ニーチャ」にちなんでいるという。

収穫時期は、巨峰やピオーネよりもやや遅めの8月下旬から9月上旬頃。東北南部から九州まで、巨峰と同じ地域で栽培ができる。
2020年の農水省統計によると、栽培面積の第1位は長野県(19ha)で全国シェアの3割以上を占める。第2位が山梨県(12ha)、第3位が愛知県(5ha)と続く。和歌山県は統計上の数値は無いが、僅かながら栽培されており、筆者は県内の産直市場で購入した。

巨峰やピオーネと時期を同じくして出回り、それらとは一線を画した見た目や味わいが特徴のクイーンニーナ。店頭で見る機会があれば、ぜひ食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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7月下旬に成熟する新品種 気候変動に対応「ブラックビート」

2023-11-05 13:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、巨峰に対抗した品種で、東北生まれの「あづましづく」を取り上げた。
今週は「藤稔(ふじみのり)」と「ピオーネ」を交配してできた「ブラックビート」を紹介したい。


【写真】漆黒が美しい「ブラックビート」

ブラックビートは、熊本県で育成、平成16年(2004年)に品種登録された早生種。収穫時期の早さの色付きの良さに秀でており、8月から9月にかけて熟期を迎える多くのぶどうよりも早い、7月下旬から収穫が可能。比較的収穫期が早い巨峰と比べても10日程早い。

熊本県の調査では気候変動の影響で、夏季において30℃を超える高温の日が増えたことで、ぶどうの着色不良が深刻化しているという。高温となる8月を迎える前にいち早く成熟を迎え収穫が可能なブラックビートは、この地域におけるぶどう栽培の維持拡大に期待されている。

ブラックビートの果実は短楕円形をしており、1粒は約16g前後と大きめ。果皮は黒に近い。見た目は巨峰のようで、巨峰からの交配によりできた、藤稔やピオーネを親に持つ理由として納得できる。

食してみると、巨峰系にある黒ぶどうならではの濃厚さが際立つ。酸味が弱いため甘味が強く感じられる。糖度は18度から21度。果肉は締りがあり、やや硬めでありながらみずみずしさがあり、皮は剥きやすく食べやすい。巨峰にあるような強い香りはあまり感じられない。

農水省統計(2020年)によると、全国の栽培面積は19.3ha。第1位は兵庫県(5.2ha)、第2位は山梨県(4.4ha)、第3位は福井県(2.6ha)。東京都、香川県、熊本県、埼玉県と続き、第8位に和歌山県(1ha)がランクインしている。

熊本県と同様に温暖な気候の和歌山県内でも、7月下旬から出回る品種。開発の背景には気候変動に対応するための知恵があった。

(次田尚弘/和歌山市)
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